16話 乱世を告げる鐘
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「一体、何をしているのであるか、これは」
塵塚怪王が外を散歩しているととある一角で森林破壊が行われていた。
「あぁ、あれは季衣様とそのご友人の典韋様で、今喧嘩中なんです」
と楽進が説明してくれた。
「というか二人とも凄い力なの~。まるで土や岩が豆腐みたいなの~」
「せやな。………あれ?もしかしてこれ片付けるのウチらなんやないの?」
『………あッ』
誰も使わない山奥と言えどもこのままにしておくわけにはいかない。
「怪王さん、手伝って~なの!」
「はぁ~。まぁ、良かろう」
と丁度あちらも終わったようで、塵塚怪王の方へ歩いて来ていた。
「あ、怪王の兄ちゃんだ!」
タッタッタと駆け寄ってくる許緒。
「季衣、その人は?」
許緒の後から少女もついてくる。
「ふむ。初めましてであるな、少女よ。我輩は塵塚怪王と言う」
「あ、初めまして。私は典韋って言います」
少女―――典韋は頭を下げて挨拶をする。
「季衣も真名を預けてるみたいですから、私のことは流琉と呼んでください」
「うむ。我輩に真名ないのでな、好きに呼んでもらって構わぬよ、流琉」
「はい!」
とそれぞれと自己紹介を済ました所で城から曹操の使いが塵塚怪王たちを呼びに来たのだった。
「さっき麗羽から使いが来たのよ」
麗羽とは袁紹のことであり、曹操とは同窓である。
「洛陽を董卓が悪政を敷き、牛耳っているから周辺諸侯へ討伐に参加するように呼び掛けているみたいね」
主要陣が集まる玉座の間にて曹操が使者が持ってきた書状を読み上げる。
「それは本当のことなのですか?」
夏侯淵が発言する。
「さぁ、それは分からないわ。真実か、それとも麗羽の董卓への嫌がらせか、真偽のほどはしれないわ。ただ…………」
とそこで言葉を区切り、一同を見渡す曹操。
「これは利用できるわ」
「どういう意味である、華琳?」
「この反董卓連合を利用して、我が名を大陸に広めるいい機会ってことよ」
と覇王の笑みを浮かべる曹操。
「さぁ、皆の者準備をなさい。ここから我が覇道を歩むわよ」
『御意』
「それで今回も付いて来るのかしら、怪王?」
「…………」
一人玉座の間に残る塵塚怪王に曹操が問いかける。
「………うむ。少し洛陽に我輩も用があるのでな、共に行くとしよう」
「そう。ならまた私の護衛を頼むわよ」
「うむ。承知した………」
と塵塚怪王は玉座の間から退室する。
(くっ。まだ調査も終わっておらぬというのに。これも奴の仕業か………)
塵塚怪王は急ぎ出発の準備をする。
暗い玉座に一人の少女が座っていた。
豪勢な衣装に、綺麗な白髪。実質洛陽を取り仕切る董卓である。
しかし、董卓の目には光がなく、まるで傀儡のように生気が感じられない。
「クククク」
そこに嫌な笑い声が響く。
董卓の声ではない。
「………月」
董卓の目の前には董卓の軍師にして、親友の賈駆が居た。しかし声の主は賈駆でもない。
「本当にこれが終わったら月を解放してくれるんでしょうね?」
賈駆は董卓を睨む。いや、董卓の後ろの闇を睨む。
「ククク、案ずるな。我は約束を違えはしない。それに賈駆よ、主は我が約束を守ろうと違えようともやらなくてはならぬ状況であろう?」
「くっ、分かってるわよ。………アンタ、いつかぶっ飛ばしてやるわよ」
悪態を吐き、玉座の間を後にする賈駆。
「クククっ。我をぶっ飛ばす、か………。是非ともしてもらいたいものであるな」
声はなおも嫌らしく笑う。
「さぁ、大陸に住む愚かな人間どもよ。この鴻均道人の手のひらで踊るがよい。我が最高の舞台を用意しているぞ。まぁ、タダでとは言わぬがな………」
―――――ククククッ。
声は尚も深く笑う。
「ほぅ。これは中々壮観であるな」
曹操たちが反董卓連合に加わる。どうやら曹操たちで最後のようだ。
そして集まった諸侯の旗が靡く姿はまさに壮観であった。
「それじゃ天幕の設営は任せたわよ」
と曹操は荀イクを連れて軍議の場へ向かう。
「怪王、付いてくるかしら?」
「いや、我輩が行っても意味がなかろう。我輩はここで待つとしよう」
「そう……」
「ふむ。これぐらいで良かろう」
塵塚怪王は三羽烏と共に天幕の設営を済ませる。
「やっぱ怪王が居ると早いな」
李典が肩を揉みながら言う。
「ふん。真桜よ、汝もあの者らのように張りきらぬか」
と許緒と典韋を見る塵塚怪王。
二人は大の大人でも苦労するであろう建材を軽々と運んでいた。
「いや、あの二人とは比べんといてや……」
「ふむ。確かにな。我輩も人に力で負けるとは思わなんだよ」
塵塚怪王ですら、負けを認める。
「………我輩は少し席を外すとする。後は頼むぞ、真桜」
「え!?ちょ、まだ終わってへんし……」
「もう終わるであろう。我輩が居なくても支障はあるまいよ」
後は指揮をすればいいだけなのだ。
「…………どうであった?」
塵塚怪王は曹操の陣営の裏で一人呟く。
「ソレガ……」
と影から声がする。
「どうかしたのであるか?」
「洛陽ヘハ入レナイ……」
ひょこりと影から虎の仮面が出てくる。鵺である。
「入れない、とは………?」
「多分、何かの結界だね、あれは」
と鵺とは違う声がする。
「結界か………。誰が張ったものか分かるか、影女」
すると塵塚怪王の影が形を変える。
それはすらりとした女性の姿になる。
「それはちょっとね。魔除けの類いか、それとも私たちを入れないための故意的なものか………」
「そうであるか………。確かに都である洛陽に魔除けが施されている可能性もあるのだな。………判断材料が足りぬな。まだ決断するには早計か」
腕を組み、考える塵塚怪王。
「うむ、分かった。主らは休むが良い」
「了解……」
「分かりました」
影から虎の仮面が消え、塵塚怪王の影も元に戻る。
「やはり我輩が自ら行くしかないか………」
そう呟き塵塚怪王はその場を後にする。




