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10話 竜の子たち






――――――――――――――――――――――――






「まだ私の領地に居たのね。それは好都合だわ」


塵塚怪王の報告を聞き、曹操はニヤリと笑う。


「華琳様、またいつものですか?」


それを見て、夏侯淵がため息を吐く。


「あら、まだ決めたわけではないのよ?ただ見定める価値はあると思っているわ」


「華琳よ、少し良いか?」


「珍しいわね、怪王が軍議に参加するなんて………」


通常、塵塚怪王は自分の報告以外は何も話さない。問いかけには返すが、自ら発することはなかった。


「うむ。今回の行軍に連れていって欲しいのだ」


これには曹操だけでなく、皆が驚く。


どんな場合においても塵塚怪王自ら軍事行動を起こすことはなかった。


それが自ら戦場に連れていって欲しいと言うのだ。


「本当に珍しいわね。明日は雨かしら?」


冗談めかして言う曹操。


「ふん。そういう日もあると言うことだ」


「そう。いいわ、怪王には季衣と同じく私の親衛隊を勤めてもらうわ」


「うむ………」


と頷き塵塚怪王は黙る。


(華琳には悪いが利用させてもらうのである)


そして、一人そんなことを考えていた。










「所詮は賊ね。数が多いだけね」


黄巾党の本隊を見つけて、戦闘をして見るといやに呆気なかった。


「どうやら数は多いですが、まともに戦える人数だと我が軍と同じくらいみたいです」


荀イクが曹操の隣でそう報告する。


諸侯が黄巾党討伐に乗り出したため、傷ついた黄巾党が本隊に合流していたのだ。


「どうやら貴方が来ても何もすることはなさそうよ」


曹操は隣に立っている塵塚怪王を見る。


「…………」


塵塚怪王は無言で戦場を見る。その表情は険しいものだった。いや、顔は段ボールであるために変わりはしないのだが、雰囲気が、と言うことである。


「どうかしたのかしら?」


それを見て、曹操も訊ねてしまう。


「………否、心配は要らぬよ。おそらくは汝らの戦いは圧勝であろう。汝の欲するものも手に入る」


それに、と曹操の顔を見る塵塚怪王。


「―――汝は我輩が守る」


「ッ!?あ、当たり前よ。何のための親衛隊なのよ」


「うぬ?どうかしたのか、華琳?顔が赤―――」


「何か言ったかしら?」


曹操は己の鎌を塵塚怪王に向ける。


「………否。気のせいであろう」


曹操と塵塚怪王がそんなことをしている間に戦況は傾き、黄巾党陣内に火の手が上がる。


「どうやら、もう終わりのようね……」


と曹操が一息つこうとしたその時………。






『全く、折角いい食事処だったのに何してくれるのさ?そんな悪い子は貪っちゃうゾ?』







「ッ!?華琳、下がれ!」


塵塚怪王が曹操の肩を引き、強引に後ろへ下がらせる。


その勢いで尻餅をついてしまう曹操。


「ちょっと!怪王、いきなり何を………」


と塵塚怪王に文句を言おうとして、塵塚怪王が立つ方を、自分が今まで立っていた方を見るとそこには……………。







―――――巨大な口が在った。







人一人を呑み込む程の巨大な口がバクンッと閉じる。塵塚怪王の右腕と一緒に………。


「くっ………」


それに構うことなく、塵塚怪王は曹操を庇うように立つ。


「あ、貴方、腕が………」


「構わぬ。それより下がれ、華琳」


いつもの口調で塵塚怪王が言う。


「ぐもぐも………うぇ、不味ぅ。ペッペッぺ」


巨大な口が閉じるとそこには少年が立っていた。


塵粕ちりかすばっかりだよぉ」


「ふん。貴様にこの者を喰われるわけにはいかぬからな。塵粕ならばいくらでも馳走しよう」


「むむむ。そんな美味しくないのなんか要らないもんね」


少年があかんべぇと舌を出す。そしてペロリと口に舌が這う。


「怪王、あれは何なの?」


「我輩と同じ妖者だ。桂花、早く華琳を下がらせろ」


「分かってるわよ。華琳様、早く」


「えぇ。でも………」


と塵塚怪王を見やる曹操。


「これは我輩の戦いだ。汝は汝の戦いを済ませるが良い」


そう言うと塵塚怪王と少年を包み込むように霧が発生する。









「ここまで近づくまで気づかぬとはな………」


「アハハハッ。君だけが気配や姿を消せるわけじゃないんだよ?」


塵塚怪王と少年が対峙する。


「ねぇ、一つ聞いていいかな?」


少年は首を傾げる。それは見た目通りの仕草であるが、妖者たる彼がその見た目通りの歳とは限らない。


「何で人間ひとに手を貸すの?アレはボクらの奴隷じゃないか」


「否、だ。人間は我らの隣人である」


「隣人?あははっ、面白いことを言うね、“異国の妖者ひと”」


ペロリと舌を動かす少年。


「うんうん。これなら渾沌も気にするわけだね」


「ほぅ。貴様がこうしているのは渾沌の指示か?」


「え?違う違うよ。ボクはただ食事してただけだよ。鼕餮とうてつだからね、ボクは」


それが存在意義だからね、と少年―――鼕餮は口を開けて、中を見せる。


「ただお腹が減ったから食べにきた、それだけ。そうでしょ?」


と塵塚怪王を見る鼕餮。


「ならば他のものでもよいのではないか。何故、人の世を乱す?」


「乱してるつもりはないよ。ボクは三人に力を与えていただけさ。その代わりに貪らせてもらってるけどね」


「無闇と人間に力を与えてはならぬ。要らぬ世話となる」


「そうかい?キミだって人に力を与えてるじゃないか。うん?貸してるんだっけ?それも同じことだよね?」


「そうである。貸すも与えるも同じである。だが、我輩と貴様は違うぞ。我輩はその者の人と成りを見た。貴様は無造作に選んだ。その違いは大きいぞ」


「違うようには見えないけど?」


「違うな。華琳は我輩の力を使って大陸に覇を唱えようとはしない。貴様に言ったところで栓なきこと。火車、蛟」


塵塚怪王の呼び掛けに二人が現れる。


「ッ!?………へぇ。キミらがそっち側にいるなんてね。思いもしなかったよ」


二人を見て、驚いた表情を見せる鼕餮。


「何?その異国の妖者に使役されたの?サンげい睚眦がいし。名を取られたの?情けないゾ。それでも竜の子なの?」


「私たちは別に使役されてるわけではない」


と火車―――サン猊が言う。


「私たちはこの方と共に在るだけ」


と蛟―――睚眦が言う。


二人は人の姿から獅子と大蛇の姿に変わる。


「………へぇ、以外だなぁ。サン猊は兎も角、睚眦が誰かと共に歩むなんてね。成長したね、エラいゾ」


二人の姿を見ても、臆さず鼕餮は言う。ペロリと舌が口を舐める。


「それじゃあ、お兄ちゃんにその成長を存分にご馳走して欲しいゾ!」


臆するどころか自ら二人に突っ込む鼕餮。







「アハハハハハハハハハッ!!!!ハハハハハハハッ!!!」










「何?卑怯じゃない?」


煙にぐるぐる巻きにされた鼕餮。


「ふむ。別に貴様に二人で当たらせなければならないとは決まってはおるまい」


「まぁ、そうだけどね。でもまさか椒図しょうずまでキミの所に居るなんてね。睚眦とは違い、椒図は他者を嫌うのに………。よく引き込めたね、異国の妖者。素直に驚くゾ」


鼕餮は自分を縛っている煙の先の蛤を見る。


「ふん。引き込んだわけではない対話して協力を仰いだまでだ」


「ふぅ~ん。それでボクは封印されるのかな?それとも消滅かい?まぁどっちいいよ、うん。どっちにしろ――――」


満腹だよ、と鼕餮は笑った。


「残念だが、どちらでもない」


と塵塚怪王は手を鼕餮の前に出す。


「………?」


「我輩に力を貸してほしい」

「……………」


その手を不思議そうに見る鼕餮。そして塵塚怪王の顔を見る。


「へぇ。キミの下に九人中“四人”も付くのか。贔屓ひきは大陸の地盤を支えてるから実質半分がキミの下に付くことになるね」


「それでは良いのだな?」


「うん、いいよ」


「では改めてよろしく頼むぞ、鬼一口おにひとくち


鼕餮―――鬼一口から煙が離れる。


「あ、そうだ。一つ条件があるよ」


「何である?」


「帰ったら美味しいものをご馳走してほしいゾ」


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