#3
街に帰り、魔族がドロップした指輪を鑑定屋に持っていった。
どうやらかなり質のいいもので、装備した者の魔力を増やす効果があるらしい。
つまりRPG風にいうと、最大MPアップ(大)、といったところか。
近接戦闘と魔法を同時にこなすセリカにとって、剣を振るうのに邪魔にならない装備部位で、MPを増やせるというのは大変ありがたい。
セリカのような魔剣士は、接近戦もこなせる分、魔力は相対的に低い、いわゆる器用貧乏である。
その弱点を補える、都合のいい一品だったというわけだ。これを装備すれば、パーティとしての強さはかなり安定するだろう。
「ショウ、この指輪、出来れば私が装備したいんだけど…。ダメかな?」
セリカはショウの顔色を伺うように、おずおずと切り出した。
いまでこそ軽い口を利ける仲ではあるが、あくまで二人は金銭的な主従関係にある。
PTで手に入れたものは、全てショウに所有権があるのだ。
ショウはキラキラと翡翠色に輝く指輪とセリカを見比べた後、うんうん、と頷きながら、
「確かに、これは君が装備したほうがよさそうだねえ…」
と、彼の細く決め細やかな指につけたり外したりして弄びながら言った。
「君の最大魔力が増えたら、色々安心だしね。僕は魔法使えないし。よし、そうとなれば早速これは君に譲ろう」
ショウはにこやかに歯を出しながら、セリカに指輪を渡そうとした。
セリカがそれを受け取ろうとした瞬間、ショウはハッとしたように、手を引っ込めて指輪を自分のポケットの中にしまいこんだ。
何事か、と目を見張るセリカに対して、ショウは、
「すっかり失念していたよ。この指輪には呪いがかかっているかも知れない。一度つけたら外れなくなる性質の悪いアレかもしれないから、とりあえずこのコレを教会で先にアレしてくるとするよ君は自宅で首を長くしてまっていたまえふふふふふ」
と言い残し、鑑定屋のドアをバンと勢いよく跳ね開け、ダバダバと去っていった。
いきなりの事態に、思考が追いつかないセリカであったが、数瞬後、ハッとなって気づいた。
呪いなんて罹ってるはずがない!さっきあのアホが何回も着け外ししていたではないか!
「やばい!!質屋に先回りしないと!!」
セリカが質屋についた時にはすでに、質屋の看板には『目玉商品入荷!!』とドでかく書かれた絵の下に、先ほどの指輪が仰々しく陳列されていたのだった。