1
様々な人間が
闊歩する
煌びやかな中華街
メインストリートは
鮮やかな電飾に
彩られ
各店内からは
食欲をそそる匂いが
立ち込めている
その欲求を
満たす様に
誰もが至福の時を
味わっている
そんな空気を
振り払う様に
1人の少女が
息を切らせながら
雑踏の中を
走り抜ける
すぐ後ろから
怒号が聞こえる
その方向からは
黒尽くめの男達が
少女を追っている
こんな街には
とても似合わない
光景だ
少女は
メインストリートを外れ
細い路地裏に
入り込んだ
後ろから男達は
追ってこないようだ
少女は振り返り
少しだけ安堵した
しかし
それは一瞬だった
少女が睨みつけた先
路地の真正面に
男達が
待ち構えている
少女は急いで
踵を返した
しかし
それも無駄だった
さっきの男達が
追ってきたのだ
少女は咄嗟に
開いてるかどうか
解らないほど
真っ暗な店の扉に
手をかけた
(お願い!開いて!)
少女の願いが
通じたのか
力いっぱいに
扉を開け放たれた
(よかった…)
少女は
急いで
店内に逃げ込んだ
「こ…これは…?」
少女が逃げ込んだ
店内は
真っ暗だが
外からの光に
反応する様に
光輝く龍の造型が
まるで
少女を
睨みつけている
それに店内には
中華料理の
香しい匂いが
充満していた
(誰かいるの…?)
「いるよ〜
誰だい?」
唐突に男の声がした
少女はビクッと
身体を震わせた
善く善くその声を
追うと
金色の龍の下にある
円卓のテーブルに
2人が
食事をしていた
「あ!…え?」
少女は驚愕した
驚いたのは
2人の存在に
驚いたのもそうだが
眼にした
恐ろしいほどに
食べ尽くした
皿の数だ
四人ぐらいが
食べる量を盛る皿が
1人一皿
しかも
もう何十枚と
重なっている
「すごい量…」
思わず声に
出てしまった
「なんか用?」
今度は女の声だ
少女は小走りで
助けを求めた
「すいません
追われてるんです!
助けてくださいっ」
少女は2人を見た
薄暗闇の中
2人は食事を止めず
少女を見る事も
無かった
男の方は
食事の量に
反比例するように
華奢でまるで
綺麗な
女の人みたいだった
しかし女は
比例し過ぎてる
くらいに太っていた
着ている服が
はち切れそうだ
顔には
大粒の汗をかき
熱々のスープを
飲み干して言った
「失礼な人ね」
女はフンッと
顔を背け
次の皿に
手を伸ばした
まだ
食べる気だ…
「あ…あの?」
「うるさいわね」
少女は女に一喝され
口をパクパクさせた
「食事中は
邪魔しないものよ」
少女はアタフタしながら
仕方ないと
裏口を探そうとした
「まぁまぁ…」
そう言って
男の方が席を立った
「どうしたんだい?」
綺麗な笑顔で
少女に近付いた
その後ろで
さっきの皿を食べ終わろうかとする女が
「兄様は
御優しいことね」
と皮肉った
「あの…」
男は口を拭きながら
店の入口を見た
「あの人達?」
と指さした
指さされた方向には
先程の黒尽くめの
数十人の男達が
軒先に溢れていた




