魔物狩り
ハウドの活躍に注目して下さい
ふう、と息を吐き、身分証明書を胸ポケットにしまうと他の仕事のために別の夢喰い人を
駆り出しに向かおうとしたハウドは、ふと足元を見て立ち止まった。
あまりに急いで出て行ったため、アリオンとキターラが忘れていった仕事場所が示した紙がそこに
落ちていた。
「あの方達にそんな記憶力は無かったと思いますけどね・・」
先程より大きな息を吐いて、紙をポケットに仕舞い全力で二人を追いはじめた。
「アリオン、今回の仕事を成功させて昇格を目指そうぜ」
「こんなもの達成したところで昇格なんて到底望めないよ」
キターラの方を振り向きもせずアリオンが言った。
「バカ野郎!上に上がったら今までよりずっといい夢(食い物)にありつけるんだぞ!」
興奮気味に怒鳴るキターラを、結局そんなもんか、底の知れるヤツとでも言いたげなアリオンの
視線を誤魔化そうとキターラは話題を変える。
「んで何処だっけか?目的地は」
「それなら此処に・・」
紙をつかもうとポケットに手を入れるアリオン。
そして動きがピタッと止まる。
何事かと覗き込むキターラから逃げる様に身を翻し
「何か・・失くしちゃったみたい。飛んでいったのかな」
できるだけ笑顔でいうアリオン。
一瞬の気まずい沈黙が流れ、棍棒を手にしたキターラがアリオンの頭に振り下ろし
間一髪かわすアリオン。
「何でテメーは一番大事なところな抜けてんだよ!いっつもいっつも・・・!!」
道行く人々の怪しい視線を感じながら2人は街中での争いを繰り広げた。
「全く、何処にいったのですか。彼らは」
目的地に沿って歩いているが道を知らない2人を発見することが出来ずイライラが極度のハウドが
彼らとは真反対の方向を進んでいた。
一度引き返そうかと思った矢先、一人の30代半ばあたりの女性が悲鳴をあげながら
家から飛び出してきた。
「どうかなされたのですか」
情のこもらない声でハウドが女性に尋ねる。
「娘が・・娘が・・・!」
この女が落ち着くまで少々時間を有するようなので
その娘を見に行くことにした。
「分かりました。娘さんの所へ案内してください」
女の震える指が差した先の家にハウドはお邪魔した。
律儀にインターホンを押して。
家に入るとすぐにその娘らしき人物を発見した。
悪夢にうなされている様子で体から赤黒い煙が出ている。
「なるほど、夢浪魔の仕業ですか」
そういえば自分は2人の仕事の場所を目指してきたのだ。
ここがその場所だというのに気がついた。
「なぜ私が奴等の代行などしなければならないのですか」
一人で文句を言いながら娘の額に手を当てる。
そして次の瞬間にはその場には娘の姿しかなく、
ハウドは夢の中へと姿を消した。
「随分と夢浪魔の侵食が進んでいるようですね」
娘の夢の中は夢浪魔によって荒らされた後が見受けられた。
注意深く先に進んでいると、ダンと地面を蹴る音がしてハウドが振り向くとほぼ同時に巨大なヤリが
目の前に迫ってきた。
ハウドの武器、サーベルソードでそれを払いのけもう一度ヤリがきた方向を見る。
「ええ~マジかよ。ここなら誰にも見つからないっと思ったのに」
その夢浪魔、茶色のスーツに赤のネクタイに灰色のズボンというなんとも地味な若い男だった。
「本来貴方の駆除は私の担当ではないのですが・・」
「ハァ?駆除?何言ってんの?そんあこと企んでんならアンタの腹にこのヤリで
でかい穴開くのがオチだっつーの」
先ほどの巨大なヤリを低く構える。
「では早めに終わらせましょう、午後のティータイムに間に合いませんので」
サーベルソードを顔の前に突き出す。
夢浪魔がヤリをハウドめがけて突く。
それを横にかわし相手の首にスライドさせるように切り込む。
夢浪魔は持ち手付近でガードし、ハウドの脳天に突き刺す。
次の瞬間血がパッと吹き出した。
腹には大きな切れ込みが入っている。
サーベルソードによるものだ。
「そんな重いものを持っていてはかわせる攻撃もかわせないでしょうね」
メガネをくぃっとあげ不敵に微笑む。
そして相手の腹にソードを突き立て
「貴方の死をもって夢の主は救われます、
ではこれからどうするべきか分かりますね?」
ハウドの口から微笑がふっと消え、
突き立てたソードは夢浪魔の体を貫いた。