夢喰いが夢に
「昼飯抜きにした甲斐あってもう腹ぺこぺこだわ」
「僕はあんまり減ってないな、さっきおやつ食べたのがいけなかったかな?」
笑顔で話しかけるアリオンに
「てめえ!約束が違うだろおが!!オレが独り占めできるっていう話は何処いったよ!!!」
キレるキターラ
ガァーだのキェーだの言葉にならない叫びとともにアリオンが渡した地図を頼りに、
ただキターラはひたすらに寒く暗い夜の街中を進んでいった。
その後ろ姿を見送ったアリオンは、キターラに渡したものとは別物。
正しい地図を広げて目的地へと向かった。
「おお、ここか。この中に最高のごちそうが・・・」
キターラは自分が手にした地図が示す場所に到着したところだった。
地図から顔を上げた次の瞬間彼の目に飛び込んできたのは
*ロンドンタイムス 本社*の看板だった。
「ここの社長令嬢がターゲットか・・」
扉を開けてキターラは社内に足を踏み入れた。
アリオンは正しい地図が示す地に着いた。
それを見た瞬間自分の目を疑った。
そこはまるでテーマパークのように華やかで美しい数々の色の光に包まれた、
クリスマスの装飾が施された、とある街の一軒のデパート。
「いやいや待て。そうだ社長令嬢だろ?だったら会社にいない可能性は十分にある。
家にいるほうが自然だ、けど・・・・」
地図は確かに合っているはず、正距方位図法、メルカトル図法その他様々な図法を極めた自分が
地図を描き間違えるなどあるはずがのない、そう思いながらどこで手違いが起きたのか記憶をたどっていく。
そして今朝の記憶にたどり着いた瞬間、頭からつま先までが一気に冷たくなった。
記憶が鮮明になればなるほど混乱し、言葉を発する余裕も無かった。
そうアリオンが渡した地図こそが自らの偽造による偽者、
騙すつもりでキターラに渡したものが正しい地図だということに気がついたのだ。
果たして社内に無事キターラは潜入し、
令嬢の夢にありつくことができるのか。