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ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


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第40話 それぞれの輪郭

 九月。新学期が始まり、三年生のクラスには受験モードの空気が漂い始めていた。悠真は夏休み中に考えていた進路について、ようやく担任に相談した。


「写真関係の大学、考えてます」


担任は少し驚いた顔をしたが、「悠真らしいかもしれないな」と言った。具体的な学校名はまだ決まっていなかったが、方向性が見えたことで、悠真は初めて進路面談を前向きに受けられた。




 紗奈はT大の過去問に取り組み始め、休日も図書館で長時間勉強するようになった。悠真も自分の課題を持って一緒に通うようになり、二人で別々のことをしながら同じ空間にいる時間が増えた。


「一緒にいるのに、別々のことしてるって、なんか新鮮だね」と紗奈が言う。


「前は、ずっとお互いのことばっか考えてたもんな」


「うん。今は、それぞれ自分のことやってて、それでも隣にいられる」


紗奈の言葉に、悠真は二人の関係が確かに変化したことを実感した。互いに依存し合うのではなく、それぞれの輪郭を保ちながら隣にいる形。それが、今の二人にとって一番自然な距離だった。




 恒一はようやく志望校を絞り始めた。「迷ってる時間が長すぎた」と苦笑いしながらも、地元の国公立を中心に検討し始めたという。


「お前と紗奈見てたら、迷ってるのも悪くないって思えたよ。ゆっくり決めればいいんだなって」


悠真はその言葉に、自分たちの一年が、知らず知らず周りにも影響を与えていたことを感じた。




 部室では、玲奈が文化祭の展示企画を提案していた。「三年生最後の文化祭、写真部の集大成にしよう」という案だった。


「悠真の写真、テーマ決めて出してみたら?一年通して撮った中から」


「テーマ、何にすればいいかな」


「悠真が一番撮りたかったものでいいんじゃない」


玲奈の言葉に、悠真はこの一年で撮り続けてきた写真を思い返した。紗奈、河川敷、夕日、二人の影。テーマは、すでに自分の中にあるような気がしていた。




 夜、紗奈に文化祭の展示の話をすると、紗奈は少し照れたように言った。


「また私の写真、使うの?」


「テーマ次第だけど、たぶん」


「いいよ。今はもう、恥ずかしくないから」


短い言葉だったが、一年前の紗奈なら言えなかった言葉だった。悠真はその変化を、ことさら指摘せず、ただ静かに受け止めた。




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