↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/95

第32話 焦点

 六月。期末試験が近づく中、悠真は提出物の遅れを担任に指摘される。「最近どうした」と聞かれ、悠真は「大丈夫です」とだけ答えた。その言葉が、紗奈がよく使っていたものと同じだということに、口にした瞬間、自分でも気づいた。




 放課後、恒一に呼び出されてファミレスへ行く。


「お前、自分のことちゃんと話せよ」


恒一は珍しく真剣な顔で言った。悠真はメニューを見ながら、しばらく黙っていたが、ようやく口を開く。


「紗奈の調子がいい日は安心する。悪い日は、自分まで沈む。それの繰り返しで、最近、自分が何を考えてるのかよく分からなくなる時がある」


「それ、紗奈に言ったか」


「言えない。紗奈に心配かけたくない」


恒一はため息をついた。


「それ、紗奈が言ってたセリフと同じだぞ」


悠真は黒目を逸らした。指摘されて初めて、自分が紗奈と同じやり方で本音を隠していたことに気づいた。




 部室では、玲奈が新しいフィルムを悠真に渡しながら言う。


「今日は何でもいいから、自分が撮りたいものを撮ってきて。紗奈さん抜きで」


「それ、どういう意味」


「悠真の写真、最近全部紗奈さんが写ってる。それ以外、何にも撮ってないでしょ」


指摘されて、悠真はスマホの写真フォルダを開いた。確かに、この一ヶ月、紗奈以外を撮った写真がほとんどなかった。


放課後、悠真は一人で河川敷を歩き、夕日や橋、自転車の影など、何の意味もないものを撮った。シャッターを切るたび、少しだけ肩の力が抜ける感覚があった。



 夜、紗奈から「今日は普通だった」というメッセージが届く。悠真はいつものように「よかった」と返したあと、少し考えて、続けて送った。


「今日、紗奈なしで写真撮ってきた。河川敷の夕日、悪くなかった」


すぐに返信が来た。


「見たい」


「今度見せる」


短いやりとりだったが、悠真はその夜、初めて自分のための時間を持てたことに、小さな安堵を感じていた。紗奈を支えることと、自分を消すことは、同じではない。そのことに、まだうまく言葉をつけられないまま、悠真は少しずつ気づき始めていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。