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私は、ひとりぼっちになりました。


警察がゆっくりと教えてくれた話では、父は書斎に、母は台所に、弟はリビングに、妹はお風呂にいて。とても奇妙な死に方をしていたそうです。

家族の流した血と内臓で溢れ返り、場数を踏んでいる警察ですら躊躇するその場所に死んでいた家族の身体に一切の傷跡は無く。その表情は穏やかで。

台所には、晩御飯が作りかけで置いてあって。メインの皿には母と妹が自慢していた膝裏まで伸ばしていた美しい長い髪が盛り付けてあったのです。


霊安室に安置されている家族の亡骸。


帰宅が早ければ、私もこの中にいたのでしょうか。


私はこれからどうなるのか、どうするべきなのか、自分で考えなければいけない、と言う事は随分久しぶりの経験でした。確か、親族は父の妹、つまりおばがいるはずですが、私は連絡する方法を知りません。

うちには、電話はありません。両親と弟妹は「お前には必要無いから」とスマートフォンを私に持たせる事はありませんでした。私が持っているのは、両親の番号だけ入っているキッズ携帯だけです。

家族のスマートフォンは、現場で重たいものに踏み付けられたのか粉々でした。


頼れる人、頼れる大人は、―――たぶんいません。


私の世界は、両親と弟妹に管理されていたので突然ひとりぼっちになってしまっては出来る事は何も無いのです。


「大丈夫かい、寿々歌?」


そう言って、私の顔を覗き込んだのは、綺麗な白い髪をした男の人でした。私はこの人を知りません。ですが、この人は私を知っている。私が愚鈍なだけで、何処かで会っているのかもしれないと考えていると彼はニッコリと笑いました。


「恐がらなくてもいい、僕はキミの為なら何でもする。まずは、美味しくて栄養のある食事と暖かい寝床を用意しよう」


そう言えば朝に食べてから何も食べていない事を思い出しました。学校の給食には毒が混ざっているからと、私の食事は朝におにぎりがひとつだけ。夕飯には、所謂精進料理を食べて生活しています。

本当は、私に出さなくても問題無いのだけれど、余りに痩せぎすだと近所がうるさいから仕方なくだ、と言われていました。


「キミは軽いね。今までちゃんと食事はしていたのかい?


―――していないのかもしれないね。


あの食卓に、キミの席は存在しなかったからね」


これだから人間は困る、と彼は言いました。

例え、―――、であっても食事や日常生活は平等に与えると言う決まりではないか、と言いました。


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