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その6


「大丈夫? この前のことで何かあったんじゃない?」

 次の日の午前中、客がたまたま居なくなった時間帯に菜月が湊人に小声で言った。

 仕事に出て来た湊人は額の二箇所に絆創膏を貼り、手首には包帯を巻いていた。店長と同僚らには昨日の出来事をただの事故だと話しておいたのだ。

「何かあったと聞かれれば、まあ…」

 湊人は肩をすくめ、昨日実際に何をしたのか菜月に話した。菜月は驚いて声を上げた。

「えっ、とうとうストーカー行為をしたのお? 勝手に他人を怪しいと決めつけて追いかけて?」

 湊人は慌てて口元に人差し指を置く仕草をし、菜月に近づいた。

「やめてくれ、それじゃ俺が危ない奴じゃないか。怪しいのはあっちだよ。むさ苦しい、似たような二人の男が同じ家に住んでいるんだ。やっぱり俺の勘は何か当たってるんだ、ここまではね」

「見かけが似てるってことは、やっぱり兄弟よ。髪型とか服のセンスとか、兄弟だったら似てくるし、自然と真似したりするもんじゃないの」

 菜月は一人娘だと湊人は聞いている。

「いやいや、吉野さん。それはひどい偏見だ、兄弟姉妹を舐めないで欲しい。俺は兄と一緒の格好なんてまっぴらゴメンだから、いつも反対のセンスを狙ってるよ」

「へえ、そうなの、面倒くさいね」

「兄弟姉妹ってのはうわべの見かけより、目とか声とか、何かそんな遺伝的な隠しきれないものがあるから、すぐわかる。断言する。あいつらは兄弟じゃない! わざと兄弟に見せかけるために似た格好をしているんだ」

「でも、同じ家に住んでいるじゃないの」

「他人でも一緒に住むことはある」

「シェアハウスね。今時普通だし、問題ないじゃん? 他人だとしても何も問題ないでしょ」

「…」

 客が近づいて来た。湊人の由雄叔父だった。

「よおーっ、おや? お取り込み中かな…。湊人! 何だ、その顔は!」

 湊人は額の絆創膏を手で隠した。

「これは、ちょっと」

「何をやらかした!」


「…と言うわけで、奇妙な住人が二人、どちらもコンビニで商品を受け取りするような奴らで、よく似た服装や髪型をしている」湊人は由雄にいきさつを話した。

「私はただの兄弟じゃないの、って思うんだけど」と菜月。

「同じ家に住んでいる若い男二人がよく似た風貌で、どちらもコンビニ商品受け取り。何を受け取っているのか気になるってものじゃない? ねえ、おじさん」

 湊人の叔父は真面目な顔つきになった。

「…湊人君の思い込みでもなさそうか。全然関係がないと思っていた男二人が、実は同じ家に住んでいたと、ふん。 少し、いや何かあるかな」

「だから言ったろ。俺の勘は働くときは働くんだ。彼らはきっと、怪しいものをやり取りしているから自宅で受け取れないんだって」

 菜月は引き下がらない。

「それは否定されてるでしょ。コンビニ受け取りができる商品は真っ当なものだけよ。変なクスリとか、絶対ダメだから」

その時、客が入ってきた。由雄はカウンターの前から離れながら言った。

「ちょっと考えてみる。君のシフトはどうなってる? 明日とか明後日は」

「明日も明後日も夜の10時までだよ」

「じゃあ、また連絡する。ところで、俺はその家が気になるなあ」

「家?」

「何かメモ用紙に、地図でも書いてよ」

 


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