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その5


 これは何かあるだろ。湊人は体の中のどこかで血が騒ぐ気がした。

 湊人は店の看板の裏から道に出た。男2は結局その縦長の家に入っていった。湊人は腕時計を見た。コンビニを飛び出してからもう二十分過ぎている。戻らないとまずい。どうする? 湊人はぶるぶるっと頭を振ったが、結局もう一度その家に向かった。

 ペンシルハウスの門の前に来た。

 ドン!

 いきなり自転車の前輪が家の門から目の前に突き出て湊人にぶつかった。突然のことで湊人は体のバランスを崩し、道に転がった。

「いてっ!」

 地面倒れる時に左腕と両足、それに転がった時に額もこすり、湊人は悲鳴を上げた。

「おっとっと、済みません」

 甲高い男の声がした。男は自転車を素早く引っ込めて止め、湊人に近づくと手を差し出した。

「大丈夫ですよね…? それとも、うちに何かご用でしたか」

 湊人は差し出された手を掴んで体を起こした。

「い、いえ、とんでもない。ただボヤッと歩いていただけなんで。大丈夫です」

「そうでしたか」

 それは最初に見た方の男1だった。無表情な目つきで湊人を見ながら、男1は家の三階のひさしを指差した。

「ちなみに最近はどこも物騒ですよね。だからうちも防犯カメラをつけたんです。北区ではまだ集団強盗なんて発生してないですけどね」

 そうか、防犯カメラをつけているのか。防カメは、たとえフェイクだとしても設置してあるだけで怪しい奴への警告になる。しかし、それだけか? 逆も然りじゃないか。痛くない腹、あるいは痛い腹を探られないよう警告することもできるはずだ。理由なく家の周りをウロウロするなら訴えますよ、と。

「は、はあ。それは用心がいいですね」湊人は腕や肩の土埃を払いながら立ち上がった。「私は大丈夫ですから、どうも。お邪魔しました、失礼します」

 男1はさっさと自転車を引っ張ってガレージに入り、扉を閉めた。湊人は腕をさすった。手や足を道に打ち付けたせいであちこちに痛みを感じたが、ひどくはなさそうだった。


 戻って来た湊人を見て同僚は驚いた。顔や腕に擦り傷があり、血が滲んでいたからだ。何でもないと言いながら湊人は顔や手を洗って応急手当てをした後、通常通りの仕事に戻った。


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