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月光の誓約 陽光の宿怨  作者: あるちー
第一章 終わりと始まり
8/21

8 想いと力と天武  ~山坂 玲・視点~

ガラッと教室の前扉が開いて担任の林田先生が入ってくる。

あ。

その後ろをすました表情の蒼太君が入ってきた。

途端に教室内は騒がしくなる。男子は胡散臭そうに、女子はきゃいきゃい黄色い声で姦しく。

そうだよねー蒼太君ありえないくらいイケメンだもんねぇ。

あーでもでも嬉しいなぁ。すずちゃんとたっくんは2組で私だけ1組で寂しかったんだよね。

これから蒼太君が同じ組だし、学校行事も楽しみだなー。


「望月蒼太です」


先生は蒼太君に自己紹介を指示すると、そうやって自分の名前だけを言ってそれっきり黙り込んだ。

ん?あれ? よろしくーとか、家の事情でーとか何々が好きでーとかあるよね?

そう思ってたのは私だけでないようで、奇妙な静けさと緊張感で教室の空気はまるで真剣立ち合いの様な、ピリッとした雰囲気に飲まれた。


「も、望月?自己紹介はそれだけか?」



流石先生だ。この空気を一蹴して声をかけた。普通の人じゃ恐ろしくて出来ないでしょう。


「はい」


そして間髪入れずに返事をする蒼太君。周りは呆気に取られている。

でもまあ、あの蒼太君が受けを狙ったり、自分の事を語ったりはしないよねぇ。

あれだね、独立独行、我が道を行く。


「そ、そうか・・じゃ、じゃあ窓際の一番後ろの席に着きなさい」


返事もしないで頷いて歩き出す蒼太君。

私はにっこりと小さく手を振った。その行為を周りの女子は目ざとく見つめてくる。

へへ、実は知ってたんだよねー。だって昨日の帰りまでは何もなかったのに、朝教室に入ったら私の隣に机が置いてあるんだもん。勘の良い玲さんにはすぐにピーンときましたとも!

その時、堂島君が態度悪そうに蒼太君の進路に態と足を踏み出した。

ありゃー堂島君そこに座ってたのかー。

小学校の頃からたっくんの腰巾着で、いわゆる虎の威を借りる狐ってやつだね。中学に進級してからは髪を染めて悪ぶってるみたいで、女子や他校から進学してきた男子から蛇蝎の様に嫌われてるんだよね。

本人は気づいてないようだけど。

蒼太君はその足を見、本人の顔を見て溜息を吐くと避ける様に進路をずらそうとした。

けど堂島君はその動きを察知して通路をふさぐように椅子をずらして更に足を横に出す。

流石に私でもカチンと来て堂島君を注意しようと立ち上がりかけた。

その瞬間、蒼太君の身体がぼんやりと光に包まれたように見えて、右足に光が流れていったように見えた。そして軽く足を踏みつけた。

その瞬間


「ぎゃあああああああああ」


と、突然悲鳴を上げて堂島君が床を転げまわりだした。


「ああ、すまない、君の足が通路ふさいでいたんで避けようとしたんだがさらに足を出してくるんで踏んでしまった」


そう呟きながら、本気の様に痛がる堂島君を放ってこちらに歩いてくる。


「痛い、痛い」

「おい、堂島いくらなんでも騒ぎすぎだぞ、足を踏まれたくらいで、そもそもお前が足を出していたのが悪いだろう、さっさと席に着きなさい」

「彰だっせーぞ、いつまで床ペロしてんだよ。主演男優賞かって」


堂島君とつるんでる数人が馬鹿にしたようにはやし立てる。

だけど堂島君は反応もせず、痛い痛いと涙まで流して震えていた。


「せ、先生痛い痛い、ほね、骨折れてる」


流石に呆れているだけに行かなくなった先生が堂島君に駆け寄る。


「え、お前本当に大丈夫か?ってもの凄い腫れているじゃないか!ほ、保健委員」

「え?あ、はい」

「先生の反対側の肩を支えてくれ。保健室連れていく。HRは終わりだ。皆は一限目の準備をしておくように」


泣き叫ぶ堂島君を保健委員と先生で抱えながら去って行った。

そして蒼太君はというと、まるで何もなかったかのように席について、カバンから教科書を机に突っ込んでいた。


「あーあー いっけないんだー」


ちょっと呆気にとられながらも、なんだか可笑しくなった私は一目も向けない蒼太君に対して非難を投げかけてみた。

すると一瞬ビクンと停止して、まるで油切れのロボットみたいにギギギギっとこちらをやっと振り向いた。


「れ、玲? お前何でそこに・・・」

「えー私手を振ってたよ?」


あーやっぱり気づいてなかったよ。まったくもう、失礼しちゃうよね。でもまあ許してあげましょう。

これからは同じ1組、クラスメートだもんね。


「やったね、蒼太君。私と一緒のクラスだよっ一年間よろしくね」

「ア、ハイヨロシク」

「??」


ありゃ?今度は言葉までロボットみたいになっちゃった。もしかしたら蒼太君のマイブームなのかもしれないね。後で私もやってみようかな。

って思ってたら、あれよあれよとクラスの女子が集まってくる。

さっすがイケメンもう皆を虜にしちゃったかー。


「ちょっと山坂さん、その、望月君とはどういう関係なの?」

「え?私?」


あれれ? 蒼太君じゃなくて私に集まってきたのか。びっくり。


「ももももしかししてか、彼氏?」

「へ?」


あーなるほど、私がいきなり現れたイケメン転校生と親しくしてたから話しやすい私にまずターゲットしてきたのかぁ。


「違う違う、蒼太君とはね、道場仲間だよ」

「え? 道場って本家の?」

「あれ?居たっけ、一族にこんなイケメン?」

「蒼太君はね、本家のお師匠のお知り合いのお孫さんで、内弟子として来てるんだよ」

「ええとつまり山坂さんは同じ道場だから知り合いだったってだけ?」

「そーいうことっね、蒼太君」


了承を求める私に迷惑そうな表情を浮かべて蒼太君はむっつり頷いた。

その途端、蒼太君は女子に囲まれてどこから来たの?どこに引っ越してきたの?本当に玲とは何も関係ないの?彼女はいますか?とか矢継ぎ早に質問が飛んできていた。

明らかに引きつりながら、蒼太君の目には段々怒りに染まりつつあった。

ここで私がしゃしゃりでると私が面倒なことになるのは分かっているんだけど、流石にまずいので止めようと立ち上がった時、


「めーずらしく1組はうるさいじゃないかー 2組じゃあるまいし静かにしろー はよ席につけー」

ナイスタイミングりっちゃん先生!


私は目を輝かせて社会科担当教師の登場に震える。

パーっと、まさに蜘蛛の子を散らすように女子達は去り、蒼太君は頬を引きつらせながら座りなおした。


「蒼太君、お昼行こう!」

「あ? いや 俺は・・・」


む、断る気だね蒼太君?そうはさせないよ?


「・・・分かった」

「だーめ、絶対一緒に・・? え?あれ?」

「さあ行こうとっとと行こう」


んん?どしたんだろ?珍しく積極的だ。いつもの塩対応は?

はっ、え? もしかして蒼太君はツンデレさんだった?もしかしてこれが噂のキター デレ期ってやつなのでは??

そんな事を考えている私の背中を、ぐいぐい押してくる蒼太君。なんだよぅ、ちょっと浸らせてくれてもいいじゃんー。って振り返りながら蒼太君を睨んだが、デレ期というものとはおよそ縁遠い表情をしている。顔色は悪いし、目も私ではなく前を見ているだけ。その瞳は光を失い虚ろ。更には若干冷汗をかいてる?

ふと周りを見ると、お昼ご飯を持った女子がじりじりと牽制しつつ、まるで肉食獣が獲物を狙うかのような視線で蒼太君を見ていた。

ああっまずーい。その視線、いやもう殺気になっているものは、私をも目標としている様だ。

ふぇーん。きっと後の祭りって状態なんだぁ・・・。

仕方ない・・・蒼太君隠し撮り画像で機嫌を直してもらお。












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