ありきたりな婚約破棄
珍しく有言実行したよ。新作です。当然の見切り発車です。よろしく。どんだけ更新するかも分かりません。息抜きなのでね。それを踏まえてこの拙い文章読んでいってください。
「シャローナ。少しいいか?話がある。」
「?はい。どうぞ、殿下。」
学園が休みで私が作業部屋で少し作業をしていたある日のこと…突然何の連絡も無しに私の婚約者であるディルック・エルマニスタン第一王子殿下がこの部屋を訪ねてきた。…ディルック・エルマニスタン第一王子殿下。彼はここ、エルマニスタン王国の次期国王として育てられてきた人物でありこの国の王太子。そして対する婚約者の私は一応ハールフェルト公爵家の長女。傍から見ると釣り合っているでしょう。しかし私と殿下は馬が合わないのか、お世辞にも仲が良いとは言えない。
そんな殿下が突然私の元を訪ねてくるなんて何かが起こったに違いない。それも良いものではなく、私にとっては悪いニュースが。そしてその予感は悲しいことに正しかった。
「殿下。なぜ、殿下が妹のリリアナと一緒にこの部屋に?」
そう。なぜかリリアナを引き連れてこの作業部屋に殿下が入ってきた。それも殿下の夕焼けの如き赤い目で私のことを憎々しげに睨みながら。…そう。それほどまでに私は殿下に嫌われていたのね。殿下の婚約者にふさわしくあろうとしてきたけれど…それも実を結ばなかった、ということだわ。
「シャローナ。お前との婚約を破棄する事を伝えるために今日は来た。私の婚約者にはお前のようなつまらない女ではなく、愛嬌があって誰からも愛されるリリアナの方がふさわしい。王太子は愛される存在であるべきだ。そうだろう?」
「殿下。それで理由は全部ですか?」
どうにも取り繕っている感じが拭えない。確かにリリアナは可愛い。それは認めよう。陽光のような煌めきを持った艶のあるふわっとした金髪に愛嬌がある顔だもの。対する私はあまり感情が表に出ないからか冷たい印象を与える。目つきもリリアナよりも悪い。だから今殿下が仰ったことも本当の理由でしょうけど、それだけでは無い気がするの。それに、それだけでは流石に私を睨んでいる理由にはならない。
「ハハ。無駄な所で勘が良いんだな、お前は。そうだ。確かにさっき言ったのが理由の全てではない。…シャローナ。お前は平民の血を引いている養女だそうじゃないか。リリアナから聞いたぞ?」
殿下は侮蔑の表情で私を見る。なるほど。リリアナが殿下に教えたのね。どのタイミングでこれを知ったのかは分からないけど、確かに私はこのハールフェルト家の血を引いてはいない養女だ。…かな〜り複雑な事情と大人の思惑が絡み合った結果今の状況になったようだけど。
私が抱える事情というのは極々限られた一部の者しか知らない。知っているのは義理の両親と一部の家臣。そしてこの国の宰相閣下、そして国王夫妻だけ。しかもそれは殿下にすら伝えられていないのだろう。だからこそ殿下もリリアナも私が養女という一点しか知らない。そこからリリアナは私が平民というか庶民の血を引いていると予想したのだろう。
…事実はそうとも限らないけれど。ただそれを今明かした所で気を惹きたいだけだと断言されてしまうはずだから明かしはしない。藪蛇だし。
そして殿下は典型的な貴族至上主義。つまり、殿下が睨んでいたのは殿下が嫌う平民の血を引いているにも関わらず婚約者の座に収まっているのが許せないといったところかしら。
「まさか今まで俺を騙していたとはな。10年もの間王族の俺を欺いていたとはとんだ悪女だよな。そうまでして王妃の座が欲しいのか?所詮は卑しい平民の女だな。これだから平民は嫌なんだ。だから俺はお前との婚約を破棄してリリアナと婚約する。どうだ?ちゃんと理由は教えてやっただろ?」
そうか…それに関しては正直私としては問題ない。むしろ嬉しいまである。けど…殿下はそんなに簡単に感情を表に出して大丈夫なのかしら。王族として。
「ごめんなさいね〜、お義姉様?でもしょうがないじゃない?だって、お義姉様は確かに私のお姉様に違いないけど、王族に連なるにはふさわしい血筋では無いんですもの。あ、これはもうお父様もお母様も了承済みなの。だから…お義姉様はもう用済みなんだよ。今までありがとね!あと、もうお義姉様は用済みでしょ?だから早いところこの家から出て行ってくれると嬉しいな!屋敷の皆もそう思ってるはずだよ。」
それまで口を開かなかったリリアナが意気揚々と話しだした。…リリアナが言ったことが本当かどうかは分からないけど…この感じだと恐らく殿下は本気で婚約を破棄してリリアナと婚約しようとしている。今更私が何か言った所で聞き入れてもらえやしないだろう。
「本当ならば今すぐにでも出ていけと言ってやりたいところだがな、リリアナが1日猶予をくれないかと頼んできたんだ。リリアナに感謝しろよ?そういうわけだから、荷物をまとめて明日には出ていけよ。俺はお前の顔も見たくない。」
「…分かりました。殿下のお慈悲に感謝いたします。」
「本当にお前は人形のようだな…!こんな時でも感情を表に出さないのか。もしも情けなく縋ってくるようならば妾くらいにはしてやってもいいかと考えていたんだがな。そんな気も失せた。今日のところはこれで失礼する。リリアナ、また来るよ。」
「ええ、殿下。またお会い致しましょうね♪」
殿下は好き勝手に言って去っていった。本当に大丈夫かしらこの国…陛下も王妃様も頭を悩ませていそうね…あと、今から婚約者を乗り換えることの意味が2人共分かっているのかしら…それにリリアナは王妃教育を今から受けて耐えられる?相当に詰め込まれるでしょうに。…まぁ、選んだのは2人ですものね。自己責任自己責任。
最後にリリアナも悪意に満ちた笑顔で私にこう告げた。
「それじゃ、お義姉様もまた会いましょう?会う機会なんてもうないと思うけど!アハハ!!」
そしてそのことが有ったから私はリリアナが私の部屋にどうこうする前に荷物の整理をしないといけない。そう思って自室の戻ったのだけど、リリアナはここまで読んでいたみたいね。部屋に足を踏み入れた瞬間足元に魔法陣が光ったの。そして私は…意識を失った。
目を覚ましたのは夜中のことだった。
めっちゃ久しぶりに一回メモ書いてから肉付けしていくやり方やったなぁ。どうせこれもそのうちノリとライブ感で書くようになる。