不気味な狼
ラズク村の入口から少し離れた辺りから、血の匂いがした。
襲われているのはベルク商会の荷馬車で、赤黒い狼の群れと冒険者のパーティー、それに領兵隊の兵士達がが戦っていた。
見た事がない狼だ。乾いた血のような体毛の色に、目が真っ赤に充血している。
何らかの呪いで無理矢理強化されてる感じがする。
わたしは冒険者の中にナークを見つけ、急いで魔法で狼を炎の刃で焼き斬る。
「レーナ、ニルト達がまだ‥」
村近くまで逃げて来た馬車にはベルクさんがいて、ナークをつけて先に逃したのだという。
見張りの領兵達が気づき怪我はしたが、ベルクさんは無事だ。
事情はあとで聞くとして、今は救出を優先する。
わたしは囮になったニルト達の所へ向かう。
「気をつけて、レーナ。あの狼達、おかしい」
魔法は効いたように見えた。傷を負っていない所を見ると、普通の武器が効かないのかも。
しばらく走った先で、倒れるベッタにそれを守るニルトとアリルがいた。
完全に五匹の狼に囲まれニルトもアリルも疲労して押し返す力が残っていない。
「!」
わたしは魔法を乱発して狼を炎の鎖で動きを制しつつ焼き殺す。
怒りが炎に力を与え、狼達は一瞬で灰になった。
わたしは急ぎ三人を回復させる。
深い傷を負ったニルトが安心したのか、わたしを見て倒れる。
「嘘でしょ、ニルト? 起きてよ!」
見た瞬間からニルトが何故生きて戦えていたのかわからないくらい、お腹を抉られた傷は致命的な一撃だった。
「私のせいなの! 私を庇おうとして兄さんが‥」
泣きじゃくり、わたしにすがりつくアリルをわたしは抱きしめる。
ニルトはきっと、お父さんのように守るものを守っただけ。
だから魔物が消えるまで、アリルとベッタを守り抜こうとしていたのだ。
領兵隊の方達が助けに来てくれたので重傷を負ったベッタと、ニルトの身体を村まで運んでくれた。
宿屋の方からレガトの泣く声が聞こえる。
異変を知らせる鐘に驚いたのか、父親の死に気づいたのか。普段は泣かない子だったのに。




