魔法の力
わたしと『鋼鉄の誓い』のニルト、ベッタ、ナーク、アリルはガウツの作った山小屋の中でテーブルを囲んでいた。
来客が来るようになって急遽ガウツが作った飾り気のないテーブルに、丸太の余りを使って作ったイスは頑丈で制作したものの特徴を表していた。
わたしは飲み物を入れたカップを人数分用意してテーブルに置く。
主を失った山小屋は、どこか寂しさを感じた。
「話しをしてもらえるか?」
ガウツの事に触れる事を気にしながら、ニルトは話しを切り出した。
優しいけれど、結構割り切りが早い人だと今更ながら思った。
わたしの事について、どこまで話すかは決まっている。
お父さんとも相談して、魔法を使える事は話すつもりでいた。
すでに回復魔法は使ってみせた。
魔法使いというより治癒士だと思っているはずだ。
「お父さんとわたしの事はどこまで聞いているの?」
事情を詳しく知るのはレミールだけだ。
そのレミールもわたしが魔法を使える事は知らない。
「君がサラスナの町でガウツさんと出会った話しは聞いた。素性とかは正直興味はなかった」
冒険者をしていると生命を落とす者というのはついて回る。
ガウツが亡くなった時もガウツだけじゃなく、冒険者パーティーが一つ全滅している。
冒険者に子供がいれば、孤児になる。レミールがそういう子供は一杯いると言っていた。
ニルト達もなんとなくそう察して触れなかったと思う。
「わたしは捨てられた子供だったの。
三歳の時だったけれど、あの頃の事は覚えてる」
サラスナの定期便の船が寄港する国は限られている。
西のローディス帝国、その北のドラーヴ洞窟王国、それにサーラズ王国の北にあるノルデン王国と、エルデン王国そのいずれかだ。
出航してから長い間、船に乗ったままだったので航続距離を考えるとドラーヴかエルデンになるんじゃないかと思う。
「ガウツがお父さんになった時点で、生まれの事なんて忘れていたの。
多分地図で見覚えのある港はエルデン王国だと思う」
エルデン王国はエルフと呼ばれる人族の多く住む国だ。
わたしが魔法の力が強いのも、エルフの血が入っているのだろう。
「魔法も治癒だけじゃないわ」
わたしの言葉にニルト達が何を言っているのかわからない顔をした。
わたしは四本の指先に小さな炎と小さな氷塊、小さな石塔と小さな竜巻をおこす。
「はぁっ?」
四人が見事にあっけにとられ声をあげた。
そもそも魔法を使うには詠唱とか、呪文書とか魔法陣や魔法具などが必要だ。
治癒を行うにも、水や風や光などの属性魔法なら詠唱等が、神官なら祈りが必要だと言われている。
無言詠唱も、結局は魔法の型が決まっていて、決まった力を発現させる事だ。
わたしの魔法は、わたしが思うままに形を変える。
魔力があるなら所在は問わない。
「お父さんには魔法はあまり人に見せるなって言われていたの。
お父さんはわたしがやりたいと思う事が決まって、魔法が必要なら使いなさいって」
「ガウツさんは君の力の凄さを知っていたのか」
「ただ凄く心配性で、狩りはさせてくれたけれど、魔法は危険もあるからって」
魔力暴走や魔力枯渇などで、味方を巻き込んだり気を失って、危機に陥ることがあるという。
やりたい事が見つかったならと言いながら、制御に自信がつくまで使うなって、お父さんは我儘だと思ったものだ。
あの時もわたしが行けば、お父さんは死なずに済んだ。
でも万が一何かあったらと、心配して自分が行ってしまった。
「ガウツさんの気持ち、少しわかるよ。私も冒険者になる時、物凄く反対されたからね」
わたしとの会話をニルトに任せていたナークが、思い出すように言った。
「男として、父親として娘を死地に送る気はなかったんだろう。
俺達が招いてしまったせいなのに」
ベッタも申し訳なさそうに言う。
「もう謝らないで。お父さんはわたしやみんなをただ守りたかっただけだから」
「わかった。ガウツさんの事を忘れる気はないけど、俺達が何があろうと君を守る」
『鋼鉄の誓い』の四人はそれが言いたかったのだろう。
お父さんに助けられた生命を、お父さんのかわりにわたしのために使おうと。
断っても彼らは引かないつもりなのがわかる。彼らを支援するベルク商会からも、強く言われているようだった。




