『霊樹の楽園都市』
「それで襲って来たのは領空侵犯だからですか?」
露骨に怪しい船が飛んで来たのだから、守り手側が警戒してすぐに対応するのは間違えではない。こちらも国境を許可なく越えているのは確かだからね。
早々に戦意を喪失してくれて助かった。血の気がやたら多い一部の従者達が、大暴れしかねないからね。母さんが威圧していたのって、ティフェネトとリエラに対してだったし。
エルフ達の代表は、霊木群を守るペガサス隊の騎士団の隊長エメルダという女騎士だ。
「我々が他の国の者たちから、他者を拒む事で知られているのは知っております。しかし冒険者ギルドなどを通して、正規の通行許可を申請して下されば無闇矢鱈と攻撃はしません」
「はい。悪いのは完全にこちらです」
ペガサス隊の実力を見たくて、戦ってみたかったのもあった。というか実行した。素直に謝ったためか、エルフ達の緊張が少し和らぐ。
「力で押し通されれば勝てなかった我々が文句を言う資格はありませんが、エルデン王国への入国手続きを行なって下さい」
戦死者はなく、落とされた岩の被害は彼らの責任なので追及されなかった。霊木群には結界が張られていて、多少の火や岩なら弾くそうだ。
「ダンジョンではないのですか?」
正式には『霊樹の楽園都市』と呼ばれているエルフの街だった。
「違います。そこの龍神様と同じく自由神に頼まれて森の一部ごとこの世界に場を移したのです」
ダンジョンと違いこの世界の成り立ちに関わる聖地、それが『霊樹の楽園都市』だった。
浮遊戦艦をしまい僕達はエルフの街へ案内される。エルデン王国の中でも特にこの聖地に等しい街には、滅多に他所者を招き入れる事はないようだ。
港町などは商人も行くみたいだけどね。
それでも通してくれたのは、拒絶するより興味が勝った証しだろう。
『霊樹の楽園都市』には冒険者ギルドはないけれど、街の集会場に手続きを行うエルフがいた。
そこで入国の手続きと、滞在許可をもらう。
バラバラになると、気が変わり狙われるかもしれないのでみんなで霊樹の森の散歩をした。




