中層突破
中層へと入ると話しに聞いていた通り、ダンジョンの雰囲気がガラッと変わった。
浅層より広く歩きやすいかわりに、魔物も群れやすく強くなる。
中層からは隊列を組んで移動することになっていた。
ラクト率いる『海竜の爪』パーティーは先頭、ラングの率いる『海竜の牙』とポーター二人が中間、ウロド率いる『海竜の鱗』が殿だ。
パーティーの実力や編成を考えると、火力の高いものを先頭に置きたい所だが、全体のバランスを取るためメインパーティーの『海竜の牙』が中央になった。
ウロド達は殿に置く事ははじめから決まっていた。
背後からせまる魔物も稀にいるので油断出来ないが、負担は少なく済む。
警戒しながら俺とラクトとサンドラで戦闘を進む。
浅層は明かりもなく松明やランタン、魔法の光が必要たったが、この中層は床や天井がうっすらと明るい箇所があるので目が慣れると光源は必要なかった。
不思議に思って輝く部分を削ってみようとしたが、削ると輝きは消えただの石になる。
輝光石と呼ばれ魔力に反応する石があるが、それとも種類は違うようだ。
魔物の群れの数が多すぎると、中央からエルヴァやキャロンの魔法の援護が入る。
連携になれたパーティーが中央にいるので俺達は気兼ねなく戦闘出来る。
中層の攻略は休息を交え二日がかりで深層にたどり着いた。
「いよいよ深層に入る。深層に到達した事のあるパーティーは少ない。
つまりここまでと違って情報があまりない場所となる」
ラング達も深層は未知の領域でいつもより緊張しているのがわかった。
ギルドの資料にも深層に関しての情報は殆どない。
これは到達したパーティーが少ないだけじゃなく、戻れなかったパーティーが数多くいるためだった。
それに高ランクパーティーの中では貴重な情報を秘匿する事もある。
競合者が多くなると苦労の割に稼ぎが減るので当然だろう。
ギルドなどは犠牲を減らす為に情報提供を呼びかけているが、危険だとわかっているなら近づくなと一蹴されて終わりだ。
高ランク冒険者に至るための壁の一つが銀級になる事だと言われている。
それにはこうした深層の貴重素材を持ち帰ることや、出没する魔物の情報提供などがあるのだろう。
クランを立ち上げギルドを興すまでに至るならば、越えなければならない壁を越える必要があるという事だな。
深層へ入る前に一同はしっかりと身体を休める事になった。
時間の感覚はすでになくなり、疲労の感覚は個別に異なってくる。
俺は余裕のある方だが、魔法を使うエルヴァ達や、ダンジョンに慣れていないベネト達ポーターやウロド達は負担の割に疲労度が高い。
足を引っ張らないように無理すると、全体に響く事になるので、ラングがその点は気をつけていた。




