新たな犠牲者?!
中域に入るとサラマンダーが幼生から若い成体で現れた。厄介な事に火力が上がり、大きさも三〜五M程になっていた。
「カルナ、ソーマに氷属を。スーリヤは自分で出来る?」
ハープと、大盾に切り替えたホープがサラマンダーの炎のブレスを前に出て防ぐ。二人が時間を稼ぐ間に、カルナがソーマに、スーリヤが自分の剣に氷属性を付与した。
「突撃が来たら後ろに任せるよ!」
「了解!」
ハープの指示に、アミュラが短く応えた。
僕がしつこく一番前で戦わせて来たので、ハープは魔物を受け持ちながら仲間に指示出来るようになっていた。
双子のホープは、どちらかというと仲間に合わせて動く方が得意だ。
今もハープに合わせながら、攻撃に移るスーリヤ達の為に、サラマンダーから死角を作っていた。
二人の魔剣がサラマンダーの前足をそれぞれ斬る。怒るサラマンダーが突進すると、ハープ達は左右にわかれる。
待ち構えていたアミュラ、メニーニ、ラウスが突進の勢いをそのまま利用して脳天に強力な一撃を叩きこんだ。
「どうレガト。綺麗に倒せたよ」
上層で僕がサラマンダーの皮が防具に使えると言ったのを覚えていたらしい。
戦いに参加しなかった僕らは素材の回収を行う。サラマンダーのような精霊に近い魔物は、魔晶石もその属性の力自慢が強く出る。
とくに成体くらいになると、影響がより大きくなる。
「お宝だ!」
そう、魔晶石の価値が大きくあがるのだ。
「倒し方も大事なんだよ」
ハープのおかげでサラマンダーはあまり炎を吐いたり消耗したりせずに倒したので、魔晶石の輝きが違った。
「ちょっと貸して」
素材の回収をする間、小休止するスーリヤの剣を母さんがヒョイっと取る。あまりの自然な動きに、スーリヤが反応出来なかった。
「レガト、それもらうわよ」
魔晶石を取り出しウットリする僕の手から、紅色の魔炎石が消えた。
何を、と聞く間もなくスーリヤの剣に炎の力が強く宿る。
「魔焔剣とでも言うのかな。あなた氷の魔法向いてないわ」
戦闘を見てずっと気になっていたらしい。
「その魔法剣はそうして力ある魔晶石を取り込ませて完成するのよ」
ずっと愛用していて、スーリヤの拙い魔法も強化してくれる代物だったが使い方が違ったようだ。
「その剣ならサラマンダーの炎くらい簡単に切り裂けるわ。炎から魔力を吸収するから、ダメージも通るわ」
アリルさんが額に手をやってる。
「えっと、いいのコレ使って」
「スーリヤが使うために出来てる。そうでしょ、母さん」
「もちろんよ。アリルを目指すならショボい氷の魔法なんかに頼らないの」
「ショボい···」
スーリヤが魔法を使うために三年間頑張って覚え、磨いて来たのはみんな知ってる。
言葉は酷いけど、母さんの言う事も正しい。
スーリヤの魔法は、得意な炎も日常生活で使う分には便利なレベル。
つまり戦闘には向いてない、むしろよく使えるレベルまで精進したと言えた。
「見切りをつけるのも大事よ」
「母さんが言いたいのは、スーリヤが一番得意な技を伸ばすべきだって事だよ。別に魔法を使うなってわけでもないんだからさ」
仲間達は何と言っていいかわからず見守っている。カルジアだけが仲間が増えたような顔でウンウンうなずいていた。いや君の場合とスーリヤは違うと思うよ?
「ほら、さっきのより小さいけどちょうどいいのが来たわ。双子君、陣形」
進む先の方から成体だけど、小さめのサラマンダーが二体やって来た。
慌ててハープ達が臨戦体制を取る。素材は回収したので僕らも下がって構える。
「双子君達は左のサラマンダーを、貴女は右のサラマンダーを一人でやってみなさい」
無茶苦茶だけど、スーリヤならもう出来るようになった。
母さんがああなると怖いのを知っているので、ハープ達は片方に集中する。
「アリルは一人でやって来たのよ? 仲間を守ろうっていうのなら破ってみなさい」
母さんの煽りでスーリヤが切れる。
小型とはいえ三Mのサラマンダーが吐き出した炎ごとスーリヤの剣に斬られた。
「出来たじゃない」
スーリヤの剣がサラマンダーの頭がを両断していた。魔法を使わず、剣の威力とそれを活かす自らの技量で。
もう一体はハープ達が先程と同じように綺麗に倒した。
みんなが歓声を上げ喜ぶのを、アリルさんが止め素材回収を先に行う。
「今のスーちゃんの力を見極めた上でハープ君も作戦を立てるのよ?」
ハープが素直に頷く。こういう人なんだとハープも理解したようだ。
僕が慎重にやってるのを見て、もどかしかったのかもしれない。
ただ騙されないでほしい。母さんはあくまで僕のために戦力強化を助けてるんだって事を。
アリルさんの時もそうだったけど、僕一人無理して一度殺されかけた事を、この人まだ怒ってた。
でも僕には怒れないから実は八つ当たりに近い。 結果としてスーリヤの武器を強化出来て本人も喜んでいるからいいんだけどね。




