ペガサス飛行部隊
ロドスの港の防衛戦に勝利し、母さん達も海賊を殲滅して戻って来た。
サーロンド侯爵は帝国の情勢を知り待機させていた主力軍を撤退させる。
ローディス川の各港町に送った領兵隊の損害や主力軍の滞在維持費など大きな損失を出した以上、もう大人しくしていてほしいと思った。
海賊船の出港地は海幻島と呼ばれる、あらくれものの聖地ともいわれる島だった。
海での仕事を生業とする海洋冒険者でもあり、依頼すれば海賊行為も略奪も行う独立した船乗りギルドの支配地として有名だった。
沿海州地方からの援軍を抑える仕事もあって戦力が分散した所に母さん達が来たため、こちらも失った損害を取り戻すまでに時間がかかると思われた。
不安定な情勢が続く中で、僕らは久しぶりに全体会議を開いた。
「移動力向上のため、ペガサス部隊を作ろうと思う」
ヒルテとカルジアに泣きつかれ、僕は以前から考えていた飛行部隊を作る事にした。
索敵や偵察任務の度に母さんと組まされ飛んで行くのが相当キツイらしい。
飛行部隊が出来れば、戦力も上がるし、彼女達の負担は減るのかもしれない。
多分、母さんが意図して選んでいるうちは無理だと思うけれど。
そのためにはまず『騎士の集い』でペガサスを集める必要がある。
候補は希望するもの全員で、ミラさんに頼んでクランの拠点の近くの広い土地に牧場と施設を用意していた。
ロズベクト公爵も興味を示していたので、ペガサス部隊の管理は共同となる。
うまく部隊が出来たら、ラグーンのトロールの駐屯地にも機動部隊が欲しいなと思った。
「希望者は十三名か」
はじめはもっと少なかった。
まあ空を飛んでの戦闘は怖いし、騎乗するペガサスがやられたら真っ逆さまに落ちるだけだからね。
アリルさんが乗ろうと決めたら、リモニカ、スーリヤ、シャリアーナ、ガリア、マーシャ、オルティナが速攻で挙手した。
「えっ、リモニカもアリル信者だっけ?」
「えっ違うよ?弓は両手使うからどうしようか迷ってたの」
「わかる。馬と違って空だし」
リモニカと、同じ弓使いのカルナが参加を希望しつつもまだ迷っていた。
「ちょっとレガト、アリル信者って何よ」
「そうよ。私達はアリル様のファンなだけで信徒なんて邪魔なだけだからいらないよ」
「レガト、あなた私の事なんだと思っているの」
うん、姦しい。母さんがスッと指に炎の輪を浮かべてくれたのでピタッと止んだ。
「動機はともかく、空中戦は不安定なのは確かだ。ペガサスを無事に手に入れたなら、母さんとカルジアで飛行部隊の練度を高めてもらう」
「飛行部隊に入らないものはどうするの?」
「良い騎獣が見つかるまで騎士のように馬術の訓練をしようと思う」
ラグーンとロドスには既に拠点がある。
一々馬車などで移動していると時間がかかるので出来る限り騎乗技術を高めようと思っている。
苦手なものは馬車になるにしても、馬車ももう少し速度を活かした設計や戦いに向いたものを考えていた。
『騎士の集い』ではさっそく、ペガサスの群れを探す。
母さんとアリルさんはスーリヤ、シャリアーナと三人娘を連れて別の地点へ行く。
「カルジア、頼むよ」
「うん、わかってる」
テイムは召喚士のカルジア、に任せた。
僕のように、召喚に必要な素材を集め召喚を行うものは錬成や錬生といわれ、魔物を直接従わせる契約、召喚というものでは本来違う魔法である。
ただ理屈的には同じだ。現実に顕現しているならテイム、異界にいるなら触媒を使って顕現させるという手間の問題に過ぎないからだ。
媒体を元に魔力を込めれば新たな進化を遂げた生命が誕生するようだけど、僕も理屈ではよくわからない。
僕は魔力があり過ぎて、検証の参考にならないからね。
ペガサスはウッドエルフという、野生のエルフが騎乗してやってくるだけあって、森に多数生息していた。
母さん達と合わせて三十頭集め、られたので、僕達と公爵で半数ずつわける事にした。
2023 6/21 レガトの考察に錬生について追記、




