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はじめてのギルド

冒険者の階級を後書きにて追記。

 草原の匂いのする小さな都市に俺は居た。俺がそう感じただけで、この世界の街の大きさはどんなものなのか知らないのだが。


 異世界にやって来た俺は、「ガウツ」という名の流浪の冒険者になっていた。冒険者というのは何でも屋、便利屋のようなもので、働けるなら子供でもなれる職業だ。冒険者には階級があって、俺は中堅よりやや上の鋼級、手練と呼ばれる階級になる。会社なら中間管理職って所だな。

 年齢は元の世界のままだ。いくらなんでも幼い子供と同じ、見習いや駆け出し扱いは恥ずかしいので助かる。この世界に旅立つ前に女神様と打ち合わせた、俺の設定というやつだな。


 大きな国や都市では領主が管理する役所があるものだが、俺が今いる小さな都市国家群では冒険者ギルドへの所属がそのまま身分証明となるわけだ。


 また、ギルドは冒険者ギルドの他にも職業組合のような組織はいくつかの種類がある。商業ギルドや漁業ギルドや生産ギルドといった専門職ギルドが中心の街もあって、その土地の需要や必要性にもよるようだ。

 

 リーダーの所属や、中心メンバーの割合がどこに偏るかという程度の認識に過ぎない事もあるとか。総合職的な位置付の、冒険者ギルドとしておく方が何かと都合がよいというわけだ。


 この地方の都市国家群は、各都市に独立したギルドが存在する。大国のギルドと違い、各ギルド同士の仲はそれほどよろしくない。それなりに実力のある集団が、大国に属するのを嫌ってこの地にやって来るのだから当然か。


 俺のイメージでは戦国群雄割拠という感じなのだが、女神様はチンピラやヤクザの縄張り争いよ、とハッキリと言い切っていた。

 そんな所へ放り込むつもりなのかと思ったが、出自の怪しい単独の放浪者には都合がいいでしょ、と笑われた。


 元の世界で俺は警備員をしていた。なりたくてやっていたわけじゃない。

 生き甲斐や誇りを持ってやっている人には申し訳ないが、俺はそれしか仕事にありつけなかった。


 剣と魔法の世界へ放り込まれても、俺には武術の心得など皆無だ。

 まして武力抗争も頻繁にある、そうのたまう地で俺は生きていけるのだろうか?


 女神様はその辺も考慮して、立場や装備を用意してくれたようだ。

 元の世界と同じで、うだつの上がらない中年男をからかう輩はいる。この歳でも見習いや下位の銅級の冒険者がいないわけではないのに、揶揄しやすい対象として選ばれるのだ。


 ハードな異世界物なら身一つで放り込まれるのだから、能力は凡人のままでも装備や立場があるだけで女神様は優しい方だと思う。


 この世界へ旅立った後で知った事だったが、剣も握った事のない俺に女神様は丸太一つ抱えるのが簡単な腕力を授けてくれていた。


「冒険者は筋力よ、筋力」


 なんか脳内に女神さまの悲痛な叫びが聞こえた気がした。

 生かして送ってくれただけでもありがたい話しだというのに、装備にお金と生きる為の術と立場まで与えてくれたのだ。きっと否定すると思うけれど、俺の事を心配してくれたのだろう。


 見慣れない男が整った装備を身につけたまま、小さな都市の冒険者ギルドへとやって来た。旅装でも、普段着でもないので目立つ。

 他所者とか新参者には厳しいというのは世界が変わっても変わることのない規則なのかもしれない。いわゆるテンプレを俺は体験する事になる。

 絡まれ難くなるのは立場や実力が、知れてからという事になりそうだった。


 場末の居酒屋といった感じの木造で出来た建物。小さなそのギルドハウスの建物内で、悲鳴が上がる。

 都市の古参の冒険者に、俺は絡まれた。胸ぐらを掴まれたため、思わずそいつの腕を引き剥がそうとしただけなのだ。すまないが、力の加減がまだわからなかった為の悲劇ということにした。


 古びたカウンターに立つ年配の受付嬢や、古参の冒険者の仲間達がざわめく。俺は絡んで来た男を無視して、女神様に教わった通りに階級証を見せ登録をお願いする。


 鋼級のプレートリングを見て、青ざめる一同は勝手に納得する。力と立場を納得させればやっていける場所というのは本当だった。


 ただウザ絡みしてくる学生達と違い、腰に人を殺せる武器を持つ相手というのは怖い。理屈が通じない頭のオカシイ輩にも武器を持たせるようなものだからだ。


 たまたま腕を掴んだら力があって怯んでくれたが、腕力以外は元の俺の体力のままのようで軽目という鎧もなんだか重い。


 絡んで来た男はわざわざ俺の胸当ての上にはみ出たシャツを掴んでいた。

 生地が伸びてみっともないので早く鎧を外して着替えたかった。


 街中を歩いて観察した限り、街の人も冒険者らしき人もみんな普段は軽装だ。ここにいる人達も剣やナイフは身につけているが、衣服はいかにも普段着といった感じだ。


 怖いのと恥ずかしいのと疲れたのが入り交じった俺は、動揺を隠しながら登録を済ませる。

 受付嬢に宿の話しを聞くと、冒険者達の視線に晒されながら足早にギルドを出た。


 宿屋は冒険者ギルドの並びにいくつかあり、ギルドに所属する者達は収入に合わせた宿に停泊していた。


 鋼級の冒険者なら、と薦められた宿屋は三階建ての石造りの宿だ。

この街の建物の中では上等な部類に入るそうで俺としては予算が心配だった。


「当宿は一日二食付きで銀貨二枚いただきます」


 店番をしていた宿屋の少年に話しかけると宿屋の宿泊料金を教えてくれた。この宿屋は冒険者ギルドの直営で、他の宿屋に比べるとだいぶ割高だが、その分安全性は高いらしい。


 俺の身につけている装備品は、この辺りでは見かけない立派なものだ。安い宿屋に置いておくと、盗まれる可能性が高いという。


 宿代には街を仕切る冒険者ギルドの面子がかかっていて、保証料も含まれているようなのだ。

 女神様がチンピラかヤクザと言った意味を、他所者への挨拶を含めてよくわかった気がした。


 俺は少年に宿屋の責任者を呼んでもらい宿泊の手続きを行う。ひとまず十日分、金貨一枚を先払いし部屋を確保する。


 部屋への案内は、またさきほどの少年に替わる。職員の子供のようで、物知りだ。案内された部屋は簡素だが清潔だと思う。テーブルに椅子、大きめのベッドに棚が二つ、鍵付きのロッカーまであった。


「これが部屋の鍵と、こっちがロッカーの鍵だよ。鍵をなくすと弁償しないといけないから注意してね」


 快活な少年はニッと笑い、鍵を俺の手に渡す。灯りの交換やシーツの交換代は料金に含まれているので、頼めば規定の時間にやるとの事。


 トイレや風呂がどうなっているのか心配だったが、トイレは一階に共用のものがあり、風呂は水場なら宿泊客は無料で使えた。湯場というのもあり火の魔法や魔晶石を使うため、そこは別料金だそうだ。


 少年は案内を終えると下の階へ戻っていった。俺は部屋に入り鍵を掛ける。一見すると簡易的な鍵だが、掛ける時も外す時も鍵が必要だ。

 俺には分からないが、魔法が関係しているように思う。弁償代が宿代より高いのでホント注意せねば痛い目をみそうだ。


 鎧を外し鍵付きのロッカーへ仕舞うと俺は普段着るための服を買いに出る。部屋着と下着、それに軽装の外着が欲しい。


 俺に何が出来るか分からないが、仕事は明日から始めないと生活していけない。女神様もお金に関してはしっかりと稼ぐ事を薦められた。

 状況は結局元の世界と変わらないのだけど、冒険者というものに期待で胸が高まっていた。

石級ストーンクラス 見習い


 仮登録の冒険者で、半人前とも呼ばれる。登録料の払えない子供や、訓練学校の学生など未成年者が多い。

 ギルドメンバーとして認められているため仕事を請け報酬を得られる。

 仮登録ではあるが、ギルドの規則に従う責任が生じる。規則に違反したり、依頼に失敗すれば罰則や罰金が派生する。


 フローライト級


 石級の特別階級。才能ある貴族や将来を有望された子供に与えられる。

 魔法的な素養がある、特に治癒に適性があると期待された者を示す事も。


 アパタイト級


 石級の特別階級。高い能力は認められるものの、精神性や言動や素行などが不安視されるものへ隠語的な意味に使われる。



銅級カッパークラス 駆け出し


 一から十五等級


 登録料を支払い正式に冒険者として認められた者へと贈られる最初の階級。冒険者人口の多い都市では、石級から銅級に成り立ての二桁等級を初心者、鉄に上がれない万年銅級を含めて一桁等級を初級と分ける。

 訓練学校や貴族や騎士などの出身者は五等級以上が約束されている。


 マラカイト級


 銅級の特別階級。銀級並の才能と認められるものの実績、年齢、経歴、貢献度などが考慮された者や、フローライト級からスライド昇格した者に与えられる。


 ゾイサイト級


 銅級の特別階級。救護活動や特別奉仕などで社会的な貢献度が高いものや活動の実績を認められたものに与えられる。


鉄級アイアンクラス 一端


 一から十二等級


 冒険者として一人前扱いされる階級。子供を除けば鉄級に在籍する冒険者の割合が一番多いと言われる。

 依頼の種類や数が増えてゆくのもこの鉄級以上からとなる。

 各国の領兵、警備兵などの基準は冒険者における鉄級以上を基準にしているといわれている。


 コバルト級


 鉄級の特別階級。所属するギルドや都市や地域に功績、貢献のあるものへと与えられる名誉ある称号。


 カイヤナイト級


 鉄級の特別階級。突発的な依頼や討伐などで優れた活躍をした者に与えられる。英雄級に至る者の目印にもなりうる。


鋼級スチールクラス 手練


 一から十等級


 実力、実績の安定している冒険者の階級。鉄級〜鋼級は中級といわれるが、鋼の三級以上は特に熟練者ベテランと呼ばれる。

 単独行動の冒険者の壁となる階級でもあり、クラン設立の目安となる階級でもある。

 兵士における隊長クラスの実力は破壊級以上を条件として望まれる。


 アイオライト級


 鋼級の特別階級。都市や地域へと根付き、所属ギルドの依頼や実務をよくこなした者に与えられる功労賞的な称号。


 アメジスト級


 鋼級の特別階級。所属ギルドへの功績が高く、ギルドメンバーとの友好が良い者が選ばれやすい。指導や育成を行うものに立場を望まれやすい。


銀級シルバークラス 傑物


 一から八等級


 一流の冒険者として扱われる最初の階級。

 銀級以上を上級冒険者と呼ぶ。依頼の難易度が上がり、貴族、王族、大商人など信頼の求められる高額報酬の依頼や指名依頼が増える階級。

 依頼の傾向や能力や戦闘スタイルなどにより二つ名が付けられる。

 近衛騎士や護衛騎士には銀級冒険者以上の実力を求められると言われる。

 クランやギルドやパーティーなどのBランク認定に必要となる階級。


 ルナシルバー級


 銀級の特別階級。マナメタル級、ミスリル級と呼称されることもある。国や領主や所属ギルドの依頼の受領率と達成率の高い者へと贈られる栄誉ある称号。


 クロムナイト級


 銀級の特別階級。シルバーマスター、クロムマスターとも呼ばれる英雄級扱いの階級。個人で突出した戦果、単一パーティーでの活躍を称えるために設置された称号。


金級ゴールドクラス 名匠


 一から五等級


 特別称号階級を除いた冒険者の最上位階級。クランやギルドやパーティーのAランク認定に必要となる階級。

 冒険者としての優遇措置に加えて、最低でも男爵位相当の爵位と認められる立場を得られる。

 所属する国家によって、特別称号を付与されることもある。

 金級一等級はプラチナ級として別格の扱いになる所もある。


 オリハルコン級


 金級の特別階級。特技、特装などの目立つ特徴を持ち国やギルドの依頼達成率の高いものに与えられる栄誉ある称号。ゴールドスターとも呼ばれる。


 アダマンタイト級


 金級の特別階級。所属する国、所属するギルドを定めて活動して大きな貢献を果たした者へ与えられる称号。




 

 


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