クラン結成
皇子様の一件以外、僕達の学校生活は概ね順調だった。見所ありそうな冒険者志望の子もチラホラいた。
僕らのパーティーに参加を希望して来た子の中には『海竜の鱗』のリーダーだったウロドさんの次男ラウス、妹のライナがいた。
ラウスは大剣を主に使うリグ並の体格の少年だ。ライナは母親のラニアさんに似ていて、治癒魔法も使える。
長男のラウドは残念ながら卒業して父親と仕事についていた後だったようだ。
ロモロス馬車組合の専属護衛をしていたソロンの子ソーマは剣と槍を得意とする冒険者になっていた。
僕らのように子供同士で組んでいたけれど、仲間達が家業を継ぐからと解散し、学校へ来ることにしたという。
カルナという魔法の弓使いの子も加入した。ロドスの狩猟ギルドの職員の娘で斥候の勉強に来ていた。リモニカと弓の扱いについて談義する仲間が増えて良かった。
「そろそろクランを設立しないと、パーティーの登録人数越えるよ」
そのリモニカが、心配して教えてくれた。
ラクトスが加わった時に、一応ラグーンのギルドに申請書を送っておいたから抜かりはないはずだ。
僕らは銅の特別階級マラカイトから、全員鉄級の特別階級コバルトに昇格している。
クランの条件はリーダーの階級、パーティーランク、パーティー数、メンバー数、職業数などいくつかクリアするための条件がある。
厳格ではないけれど、登録するギルド側は育てると同時にライバルにもなる可能性があるから条件を色々と設定する。
僕らは審査せずとも必須条件を満たしている。
そのためなのか、ラグーンからミラさんがわざわざクラン設立の受理証を持って来てくれた。
「このまま私もクランメンバーに入れさせてもらいますね」
えっと、それは流石に聞いていない。
父親で副ギルドマスターのクォラさんに直訴して来たらしい。
「ヒルテさんだけだと手が足りないでしょうし、『星竜の翼』は私が請けた初めてのパーティーだからね」
「ま、まぁよくわからないですが、ラグーンのギルドはいいんですか?」
「はい、問題ないですよ。それと敬語はなしでいいかな?」
僕らはミラさんの押しに負けた。ギルドでお世話になっていたのでクランを作るならミラさんはいてほしい人材だ。
幸いというか、ミラさんはまだラグーンギルドの新人で担当も新人相手で抜けても影響は少ない。
ラグーンの、というより辺境伯の思惑含みで派遣されたんだろうね。
ヒルテも仕事は出来るけれど、メイドの仕事が忙しいからね。
忙しいんだよね?
クラン名はそのまま『星竜の翼』になった。同じクランでも傭兵団や騎士団にありがちな方式で、同名を使い、部隊分けでパーティーをわけるやり方だ。メインの僕らが第一、もう一つのパーティーは第二と言うふうに。
お互いの実力を見るためにも、学校の休みの日に一度メンバー全員でダンジョンへ行くのが良さそうだ。
それにクラン結成のお祝いもしたい。
ミラさんが来た事でヒルテが一番喜んでいた。ミラさんがジロッとヒルテを見ると、ヒルテは目を逸らす。
ミラさんは、母さんとは別なやり方でヒルテの扱い心得ていそうで頼りになるよ。




