『星竜の翼』の将来
『龍帝の旗』は母さんに促され早々に退散して、鉱山へ向かった。体力は万全と言い難いだろうけれど、戦える体力を回復され逃げればわかるわね、とニッコリ微笑まれていたっけ。
攻撃の素振りだけで彼らは孤児院の子供には手を出さなかったので、仕事以外の人間性は信用出来るのかも。
「金級冒険者『不死者殺し』アリル様が身内ってどういう事? それにあの金級冒険者達を簡単に倒した方が貴方のお母様? 説明してくれるわよね」
Aランクパーティーに襲われた事などすっかり忘れてシャリアーナが目を見開いて迫って来た。アリル信者は怖いのだよ。
ロドスにも妙なファンがいたけど、シャリアーナも彼女に軽く手解きを受けていたんだね。
スーリヤも厳しい表情になった。後から加わったシャリアーナよりも自分が先だと、その目が言ってる。
「亡くなった父さんの妹がアリルさんなんだよ。母さんは元々父さんと一緒の冒険者だったんだ」
アリルさんは僕にとって叔母にあたる事になる。そして母さんはアリルさんより歳下の義姉になるからわかりにくい。
「ボクには凄く若く見えたけど。レガトのお姉さんでも納得したよ」
それは息子の僕でも思うよ。実際若いよね、まだ。
「十五の時に僕が生まれたからね。『双炎の魔女』って呼ばれていた元銀級冒険者なんだ」
「アリルさんも凄い強いけど、レガトのお母さんって強過ぎない?」
初見で金級冒険者を瞬殺だ。そして金級三人銀級二人を簡単に制圧していた。
母さんの強さの基準がどれくらいのものか僕もよくわからなかったのは事実だ。アリルさんとの模擬戦はいつも本気じゃなかったし。
「僕は母さんを見て育ったから、あれが銀級の強さだと思ってたよ」
僕の言葉に全員から深いため息が出た。
「おかしいと思ってたんだよ。ぼくらの年齢で、普通あんな大きな象とか蛇と戦わないって。いやゴブリンの集落もだね」
ハープ達は口にしないまでもずっと疑問に思っていたようだ。言ってくれても良かったのに。
「強さの基準が、そもそもズレてたのね」
「剣帝って呼ばれる剣士を瞬殺する魔法使いってありえないし。いえ魔女って認識されてるのよね」
「レガト、あなた一回死んだよね? 蘇るアイテム作るとか非常識にも程があるわ」
「ヒルテさんと銀級の召喚士涙目だったよ」
口々に仲間達から母さんが何者なのか聞かれる。母さんは母さん、それしかわからない。
「でもさ、何だかんだみんな僕について来てくれたよね」
そうなんだ。かなり厳しい戦いばかりだったけれど、辞めるって言う仲間は誰もいなかった。
「それは僕ら仲間だもん」
「はじめはさ、稼ぐことが出来て楽しかったんだ」
ハープ、ホープ、リモニカはいつの間にか両親達の仇のリザードンすら倒せるようになっていた。
「私は強くなりたかったからね。中央貴族にも一矢報いる事が出来そうだし」
「レガトのおかげで金貨いっぱい」
スーリヤは強くなってく実感が感じられ仲間と友達になれて楽しかったようだ。
アミュラはブレずに、お金が稼ぐ事が出来るのでついて来たのか?
「私はレガトといると、新しい装備が作れるからね」
メニーニは両親を越える職人になるのに、この仲間達以外考えられないと言った。
「私達の目的はとうに達成出来たけれど、冒険者としてちゃんと接してくれて嬉しかったわ」
シャリアーナ、イルミア、リグの三人も、引き上げ難くなっていたそうだ。
今回の件でラグーンも安定する。ロズベクト公爵から帰還指示が出たのなら、ロドスへ戻らねばならない。
このメンバーでパーティーを組んで戦うのは今回で最後かもしれない。
母さん達がロズベクト公爵の依頼でラグーンへ来たのは、シャリアーナの為だと言っていたから。
「ねぇ、それなら一つ提案があるんだけどいいかな」
シャリアーナはロドスへ帰る日の事をずっと考えていた。
「パーティーはこのままで、みんなでロドスへ行くの」




