反省中の面々
リモニカとホープの二人と一緒に領主邸まで行く事にした。門番には連絡がついていて、あっさり通してくれた。
街の中に比べて領主邸の中はなんとなく殺伐としているというのか、物々しい雰囲気が漂っている。
領主様とは謁見の間ではなくて、執務室に案内された。
謁見の間と違って実用一辺倒の部屋に、ラクベクト辺境伯と秘書官らしき青年が黙々と仕事をしていた。
「来たか、そこで座って待ってくれ」
来客用に簡素なソファが置いてある。急にどこからか持って来たようなソファとテーブルだ。
ウチのホームにあるソファとテーブルセットがわりと高級なのって、ここのを運んで来たんじゃないと信じたい。
(レガト、あの高そうな布を贈ったらどう?)
リモニカが何かを察して提案する。
彼女も違和感に気づいたようで、それはいい考えだよと僕も同意した。
これから受ける相談事とは別として、どこぞの受付嬢兼メイドがやらかしてる分のお詫びをしておこうと決めた。
お茶が運ばれて来ると、辺境伯もひと息入れがてら席を外して僕達の対面に座る。
秘書官らしき青年がみんなに資料を渡す。青年が領主様の長男だと僕はようやく思い出した。
「呼び出してすまなかったな」
厳格に見せているけれど、根は気さくな人なんだろう。公的な場でもないので、余計な気遣いはいらないと言ってくれた。
「北の森の開発の件だが、支援は続ける。ただ領兵達を派遣するのが難しくなった」
「どういう事ですか?」
「『土竜の宝物庫』の冒険者達が暴動を起こそうとしているらしいのだ。正確には起こさせる、だな」
大規模クランに騙され取り込まれた冒険者を中心に、不満が高まっていた。
責任の所在を巡り、クラン側が嘘をついて煽ったようだ。
「騎士団及び領兵隊はラグーンの街を守る必要がある。新ダンジョンへの開発は進めたいが、領民の生命が優先だからな」
それは領主として当たり前の判断だと思う。
「そこで相談なんだが、君たちに絡んだ連中を労働力に回そうと思うんだ。どうかな」
辺境伯はそういうと資料を見せてくれた。トロールの駐屯地の設営責任者は辺境伯のままだが、代理として僕達『星竜の翼』の名前があった。
労働者の名前には領主様の四男と騎士二名の名があり、犯罪労働者としてズリッチ達の名前があった。
本来なら鉱山送りになり、労働で罰を受ける。しかし大規模クランに占拠され、冒険者達のようによからぬ企みに使われては罪の上塗りになってしまう。
「領主邸の下働きでは罰にならないからな。牢屋に繋ぐままというわけにもいかず困っていたのだ」
「僕達は構いませんが反抗したり逃げ出したりしたらとうします?」
領主の四男坊が素直に言う事を聞くとは思えない。ズリッチ達もそれは同じだ。
「ラクトスは後がない。命令に従わないようなら勘当も考える。農村の子供達も同じだ。罪を理解していないようなら、次は重犯罪者として裁かれる事になる」
そう言われても、あいつら使うくらいなら冒険者を雇った方がましなんだけど、ダンジョンを目の前に子供の言う事なんて聞きやしないのがわかる。
ある意味、好きに使っていい人材を辺境伯がくれたようなものだ。僕はリモニカ達を見る。当事者は彼女達なので複雑な気分だろう。
ただあの時とはもう別人だ。孤児院組の五人は一対一でもズリッチ達に負けないと思う。二人が賛同したので、僕は辺境伯の提案を了承した。
監督官にはゴブリンスターク達もいるからね。




