はじめて奢ってみた
トールドの砦町の商業ギルド及び冒険者ギルドは、てんやわんやの大騒ぎになっていた。
大型の魔物による巡回兵宿舎崩壊に始まり、盗賊団の横行、商業ギルドのギルドマスターの娘の誘拐と立て続けに起こる災難に街の人々はトールドが滅ぶのではないかと思った程だ。
トールドの砦町は都市国家に成りかけている準備段階に入った街だ。
人口の締める割合が若い者が多く、大半が商人だ。
商業ギルド、職人ギルドがそれぞれ独立して存在している。街を興した冒険者ギルドも、ギルドマスターが各ギルドをまとめる評議会の会長についた所だ。
砦町では新たなギルドマスターが後任について、冒険者ギルドを率いていた。
近隣の街への巡回を担い、街道を少しずつ整備して物流の基盤を作るのも、いずれ各街を傘下におさめて国家に組み込むための布石になる。
帝国の貴族の支援もあって急速に発展したせいか、街の発展に人の育成が追いついておらず、あちらこちらで歪みが発生しているようだった。
「それでも酒のうまさと飯のうまさは変わらないがな」
食事がてら入った居酒屋で、トールドの冒険者から情報を聞き出していた。酒が入った陽気そうな男がいたので、一杯奢ると楽しそうに知っている事を話してくれた。
「帝国の中央貴族共には気をつけろよ。ウチの大将は聞く耳なくしちまったから、今更痛い目にあってやがるんだぜ」
冒険者の男は、言葉を濁して現状を憂いた。一部の人間にとって都合の良い事件が連続で起きている。
誰が犯人かなんて、問う必要ないくらい丸分かりな内容だ。確かに注意しないとキールスのギルドごと巻き込まれかねない。
俺は忠告に感謝し、冒険者の男と別れた。




