Get worried by nobody
全員で無視する意志の固いいじめでも発生しているんじゃないかと疑いたくなる。しかし、皆の態度が、そうじゃないことを物語っている。そして、昨日見た枯野三水の絵がまだ頭にこびりついている。
「今の状態は“認知されない”と言えそうだ」
断定しない辺りがお前らしいな。
目の前の立ち入り禁止と書かれた紙と、警戒色のロープをくぐり、少し登った先の踊り場に座る。
「なんかお化けみたいだな」透明人間じゃなくてか?
「ああ。invisibleよりghostの方がかっこいいだろう」そういうもんか?
「とりあえず、お前が例の話を聞いたのはいつだ?」
確かクラスメイトだが、なんでそんなこと聞くんだ?
「俺みたいに免疫のあるやつから聞いた話かもしれないだろ」
なるほど、賢いな。
「そのクラスメイトってのは?」
あいつは…伊藤 学目とか言ったはず。
「ああ、あいつか」
伊藤も姉から聞いたみたいな話だったな。「じゃあ、早速伊藤に掛け合ってみるか」
「魔術師は許さん、だめだね」
そんなどこかのキャラみたいな。と茶々を入れたが、やはり聞こえていないようだった。「そんなこと言わずに」
「というか僕たちってそこまで仲良くないよね。10年は早いんじゃあないかな」
声色の変化が激しいな。
「じゃあ、だが断るってか?」
「YES、I am!」現と俺は仲良く肩をすくめた。
「駄目みたいだな」ああ。なんか変なやつだったな。
「なんかキャラを演じているというか」そうそう。
現は唐突に閃いた表情をした。
「ほら、今こそゴーストの使い所じゃないか?」
ん?「誰にも気づかれないんだったら、侵入してもバレない」
でも、伊藤の姉も俺と話せないだろ?
「ゴースト現象のこと知ってるってことはお前のことは見えるんじゃないか?見えなかったら俺が後で誰から聞いたか頑張って聞き出せばいいし。でもそうか。姉が家にいない可能性がある。まぁその時は玲がなんとかしな」無責任だな。「俺は侵入しないし。」
俺は苦笑し、現と階段を降りる。