盤上
〔碧〕
陽花が死ぬ前に蒼威に母親を殺すことを託していたのは気づいていた。というか、想像ができた。
文面だと渾名で呼ばなくていいから楽だな。
まぁこれを読むって事は俺はなんかで死んでると思う。なんでだろうな。塩を舐めて「これは青酸カリの味だ‼︎」とか言ってプラシーボ効果で死んだとか?
とりあえずそんなこと置いといて、だから俺も葵に託すことにした。勝手に託すなよってなるかもしれんが、これも何かの試練だと思って頑張ってくれ。あんま面白くなかったか?
蒼威を、止めてくれ。
なぜか涙が出ていた。金庫を前にして、葵が静かに紙を握る。
〔葵〕
“蒼威の机には太い紐と大きめの袋、謎の地図があった。地図にはばつ印があり、その場所に行くとこれまた大きめの石があった。たぶんどっかに紐を仕掛けて頭を石にばーんみたいな作戦かもしれない。”
碧生の遺書通り、仕掛けを探していると罠があった。紐を切る。
罠の処理が終わり、私たちの部屋の前を通る。部屋の窓は開いていた。青藺が、こちらに気付き、顔を上げる。
〔青〕
「僕はあいつを待ち伏せするから、イグサ姉さんは葵を止めてくれる?」
疑問系ではあったものの、その言葉は実質命令形だった。
指摘しようとしたが、面倒だ。
「分かった」
とだけ言って蒼威のもとを離れた。
蒼威が夜に溶け込み、走り出す。