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捨て子は実母に会いたくなりました




 薬草を売りにヴィンセントが街へ出ると、若い女の子たちは彼の腕に絡みついて離れなくなる。


 うんざりしながらそのまま歩いていると、朽ちた看板が頭上に降ってきて、咄嗟に聖壁を張ってしまった。




 目を丸くして震える少女へ視線を向けると、破片が当たったのか血を流していた。


 今更隠しても仕方ないと、傷を消してやる。



「そりゃ、聖女様と同じ力じゃねぇか!ヴィンセント、聖力が使えるのか!?」


 野次馬をかき分けて出てきたのは、王都を行き来しながら商売をしているジルだった。




「これは、魔力じゃないんですか」



「跡形もなく傷を治せるのは聖力だ。お前の母親は昔、聖女様に魔力を奪われた魔女だって王都で聞いたが...息子が聖人ってことは、どっかの貴族の娘だったのか?」


 彼は顎髭を撫でながら、驚いているようだ。





「私と母様に血の繋がりはありません」


「そうだったのか。それじゃあ、その見た目とその力...まさか、聖女様の隠し子とかじゃねぇよな」



 そう笑い飛ばすジルに肩を叩かれるが、ヴィンセントは呆然と立ち竦むことしかできなかった。





 その後街中を連れ回され、言われるまま病人や怪我人を癒し、感謝された。
















「ヴィンセントが無事で良かったわ。魔力と聖力の違いを知っていたジルに感謝しないと」




「母様は魔女だから、聖女に力を奪われたんですか」



 フィーリンはひとつ瞬いて、俯いているヴィンセントを見る。



(隠していたつもりはないんだけど...)


「私が魔女だって知って、軽蔑した?」


「私の力だって、魔力だと思ってたんです。軽蔑なんてしない。ただ、魔力を持ってるだけで、侮蔑されるのはおかしい。...聖力は、こんなにも歓迎されるのに」





 ヴィンセントの握る手が白くなっている。




「まあ、人を癒せるような力は無いからね。庶民にしか発現しないし、仕方ないわ」



 この話は終わりだというように、湯気の立つシチューを前に置いてやる。


 しかし、ヴィンセントはそれを良しとしなかった。





「私が、聖女から取り返してきます」



「は?」





 ヴィンセントはシチューをかきこみ、王都へと向かう支度を始めたのだった。






「いやいや、何してんの。アタシアがすんなり返すわけないし、どんな目に合うかわからないのよ!?」



 慌てて引き止めるが、ヴィンセントはさらに爆弾発言を繰り出す。





「私の髪と瞳の色は珍しいものなのに、聖女と同じだそうです。母様は薄々気づいてて何も言わなかったんじゃないですか?私が聖女の子だって。母様の魔力を奪っておいて、子供まで押し付けるなんて。どんな人か、知りたいんです」



 そう言いながら笑うヴィンセントの瞳は、剣呑としていた。



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