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聖女に魔力を奪われました






 フィーリンが初めて自分の魔力に気付いたのは、孤児院でシスターにぶたれそうになった時だった。


 咄嗟にギュッと身体に力を込めると、炎が防壁のように2人の間を裂いたのだ。



 その日から、魔女と呼ばれるようになった。




 石を投げられ、暴言を吐かれる。


 それをただ、俯いて受け止める事しか出来なかった。










 ある日、新たな聖女を乗せた馬車が、大通りをパレードのように走っていくのを見た。



 どちらも等しく稀有な存在であるはずの魔女と聖女の差を、フィーリンはそこで初めて目にした。




 貴族が力を発現させれば聖力として人を癒し、その力が強ければ強いほど、聖女や聖人として王宮へ召し上げられる。



 孤児や庶民に突然発現するのは、炎や水、風などを自在に操る怪しげな魔力。


 魔女や魔法使いとして、忌み嫌われていた。



 力の源は違うものの、使いようによってはどちらも同じ様なことができ、人を傷つけることもできる。




(バカみたい)



 ボサボサの金髪を掻きむしるフィーリンの紫の瞳は、ひどく澱んでいた。



 その日から、やられたらやり返すようになった。


 王宮へ、国民からの苦情が多く寄せられるようになるほど。











「商人のお尻を火で炙った」


「そいつが私の髪を蝋燭で燃やしたのよ」


「農夫を用水路へ落とした」


「先に突き落とされたのは私よ」


「氷柱で宝石商を磔にした」


「盗んでない物を盗んだと、濡れ衣を押し付けてきたのはあっち」


「あげればキリがないわね、魔女さん」



 楽しげに言う聖女アタシアは、フィーリンの言葉に聞く耳を持たない。




 両隣から剣を突きつけてくるのは、この国の警備隊だ。


 床には魔力を抑え込む陣が描かれていた。




(油断した)



 街を歩いていたら、急に転移させられ、床に膝をつかされたのだ。





「国民の声を聞き、癒すのが聖女の仕事なの。悪く思わないでね」



 そんなこと思ってもないような顔で、アタシアはフィーリンに手をかざす。


 キラキラとした輝きが魔力を吸い出し、包み込んでいった。






三日月形になる黒い瞳は、聖女のそれとは思えないほど、歪んでいた。



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