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挫の生い立ち
挫も生まれつきの怪物ではない。ただ、幼少期には大人から酷く叱られることが多かった。
出自に恵まれなかったのでも、虐待を受けていたわけではない。奇行が多かっただけである。
挫の両親は父母ともに事務吏員、即ち事務職の地方公務員である。客観的には財産、収入、教育など平均以上である。
しかし。公務員、しかも共働きの収入で購入した家は、やや分を超えていた。
同じ住宅街の専業主婦の家庭と比べて。当時少数派だった挫の家の生活や文化水準が高いと言えないのは事実であった。
だから挫は、自分の家は貧しいと思っていた。それだけが原因とも言えないが、挫は近隣の子供とは馴染めなかった。
挫の幼馴染と言えるのは、大通りを隔てた集合住宅に住む貝分定。
犬が好きな少年だった。