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一頻りの白昼夢(ひとしきりのはくちゅうむ)

 円をちょうど真っ二つにした形をした、吉良家の本拠地のある本島から南に向かった場所に位置する島。文化的な建物が少なく、未開の土地が多い場所。険しい山々が連なり、小さな村の点在する島。覇王の島、その島はそう呼ばれていました。

 私はそんな島の沿岸に位置する、覇王の眠ると言われる村へと訪れていました。

「大殿。護衛はついてきていますか?」

 私のその言葉に、重持様が頷きます。彼は旅に出やすい身軽な服装に、顔まですっぽり隠れる傘を被っていました。

「ついて来ている。全く、普段の様子からお前さんはもっとおっとりしていると思ったのだがな」

 そう言う重持様も、息切れせずに飄々としておられます。

「こう見えて山を歩き回って薬草を探した事もありますから」

 そう言うと、重持様はふと笑います。

「そう言えば妻もそうだった。彼奴も綺麗な見た目にそぐわず、あちこち歩き回っていたものだ」

 そんな事を言っていると、護衛の人達がようやっとと言う感じでついてきます。彼等の腰には太刀が下げられ、脇差が腰に差されています。乱戦を想定してか、槍は持たないで歩きやすさを重視したと言った所でしょうか。念のため、私と重持様も脇差を持っています。

「一応、護衛の者達も太刀で人を真っ二つにした事のある程の剛の者なのだが」

 重持様は小さな声で何やら物騒な事を言っています。聞かなかった事にしましょう。そう考えながら歩いていくと、やがて大きな建物が見えてきました。

「あ、あの大きな屋根の建物。あれが目的の場所ではありませんか?」

 そう言うと、重持様はその建物を見てふと笑いました。

「ああ、あれこそが目的の場所じゃ」


 山の奥地にある、急な角度のついた屋根瓦の建物。近くにある民家が小さい事もあり、より大きく見えます。門も吉良家の屋敷に比べれば質素なものですが、この地にそぐわない立派な門が建てられていました。ここは覇王の島にある新しい寺なのだそうです。その門の前で出迎えてくれたそこの住職が私達の顔を見て柔和な笑みを見せます。

「今日墓参りに来たのは、貴方達が二組目です」

 その言葉に私は思わず首を傾げます。二組目とはいかな事でしょう。

「大と……奥方様。この場所は秘密にされているのでは?」

 大殿と言うと変に思われると考え、奥方様と言い直してそう言います。すると重持様は小さく頷きます。

「知っているのは儂と息子位じゃ」

 そんな事を話していると、住職は手を建物の側にある墓を向けました。

「あそこに彼女は眠っています」


 青々とした葉のついた木が、道に影を作っています。護衛を寺で休ませてから、私と重持様は墓へと足を運んでいました。

「どうしてこんな場所に?」

 私がそう訊ねると、重持様は一つの墓石の前で腰を曲げます。

「多くの人に畏怖をされる反面、彼女に恨みを持つ者も多い。それが故にじゃ」

 重持様の前にある墓。周りの墓石に比べて、やや大きめの墓となっています。

「春行はどうした?」

「トルグートの毒矢が刺さった後から、毒が回っていました。すぐに処置をしたので、昨日には体調が良くなっていました」

「それは何より。サルガクも心配そうにしておったからな」

 そう言っていた彼がふと何かに気がついたように笑みを浮かべます。

「どうしたのですか?」

 そこには墓に備え付けられるように小さな花が添えられていました。

「病人が抜けだしたかもな」

 そんな重持様の言葉に反応するように、遠くから馬の遠吠えが聞こえてきました。

「さて、私達も……」

 そう言った彼は視線を私の後ろを見つめて、そのまま口を開けて呆然としていました。私もそれにつられるようにそちらを向くと、そこには一人の女性と大きな馬がこちらを見ていました。今の春行様と瓜二つの女性に、サルガクとよく似た馬。彼女達は瞬きをした瞬間に消えてしまいました。

 それを見た重持様はふと笑うと私に微笑みかけます。

「帰るか」

 憑きものが取れたような晴れやかな笑みを浮かべた彼に、私は頷きを返しました。

「そうですね」

ここで一旦区切りにさせて頂きます。

続きの投稿予定は未定です。

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