表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

第6話 クリスとのお出かけ

「リリィ。お誕生日おめでとう」


ブラックウェル侯爵家のお茶会翌日、クリスがアップル伯爵家を訪ねてきた。今日は月曜だが学校は休みだ。


「本当は昨日渡したかったんだけど、疲れていたみたいだから」


昨日は帰ったあとすぐに眠ってしまった。近くで爆音を聞いたことで疲れてしまったのだ。


殺されるかと思ったけど、シャーロットに悪気はなかったみたい。むしろ誕生日パーティを開いてくれるなんて、好意があるってことじゃない?


「ありがとう!開けても良い?」


クリスがくれた箱は掌に乗る大きさで軽かった。


何が入ってるかな?


昨日程はドキドキせずリリィは箱を開けた。


「かわいい!」


入っていたのは1通の手紙と、紫水晶を使った金細工の髪飾りだった。バレッタとバックカチューシャの2種類だ。


さりげなく自分の色を入れちゃうところはどうかと思うけど、センスはいいわね。


「バレッタは学園でも使えると思うよ。せっかくだから付けてほしいな」


そう言ってクリスがバックカチューシャを手に取った。


付けてくれるのかな?


「お願いするわ」


リリィが後ろを向くと、クリスは迷う様子もなく付けてくれた。


「できたよ。とってもよく似合ってる!」


鏡で確認すると、リリィの白金の髪に金のチェーンが彩りを与え、中央の紫色の宝石が引き立っている。


「ありがとう。特別な時に付けるね」


クリスを振り向きリリィはいつもより声を高めて言った。嬉しさが声ににじみ出るようだった。


「ねぇ、今から街に行こうよ。服も持ってきたんだ」


髪型はそのままでと言い、クリスは服を置いて客室から出て行った。


何で服を持っているのとか、何で私のサイズを知っているのとか聞いても無駄だよね。クリスだもん。なぜか私の全てを知っている気がする。もしかしたら、私の秘密も…。


リリィはそこまで考えて頭を振った。


せっかく可愛い髪飾りを貰ったんだし、今日は楽しいことを考えよう。クリスとも最近遊んでいなかったしね。


リリィは笑顔を浮かべ、クリスがくれたシンプルな白いワンピースに着替えた。



「お待たせ、クリス!」


リリィがクリスへと駆け寄ると、クリスは嬉しそうに微笑んだ。


「行こうか」


クリスの差し出した手を取り、リリィはフォード侯爵家の馬車へと乗った。


馬車に揺れながら、リリィは向かいに座っているクリスを見た。クリスは左肘を窓枠に置き、窓の外を見ている。太陽光がクリスの金髪を輝かせ、同じく金色のまつげに影を落としていた。黒い半袖のシャツに白いパンツとシンプルな格好だが、所作と雰囲気から育ちの良さが漂っている。


この人が将来、シャーロットを殺すようになるなんて信じられない。それに、私がクリスを殺すことになるなんて。


暗い気持ちがリリィを支配した。


ダメだ、今日は楽しいことを考えようと思ったのに。


それでもリリィは葛藤に勝てず、口を開いた。


「…ねぇ、クリス」


リリィの声にクリスがこちらを見た。


「どうしたの?リリィ」


クリスの金色の瞳は優しげに細まった。


何を聞く?シャーロットのことが好きか?それとも私のことをどう思っているか?ううん、これじゃあまるで私がクリスのことを好きみたい。ところで、私ってクリスのことをどう思っているんだろう。


生じた疑問にリリィは蓋をした。


クリスはエイミーの言う通り、幼なじみの私から見てもイケメンだわ!


「私やっぱり、夏休みに領地へ行くことにしたわ」


リリィは質問の代わりに違うことを口にした。


本当はシャーロットのお兄さんを探すために王都へ残ろうと思ったんだけど、やっぱりおじいちゃんたちには挨拶しておかないとね。


「そっか。俺は夏休みのほとんどを領地で過ごすから、来るときは連絡を入れてね」


「もちろん」


クリスは嬉しそうに笑った。夏休み中はリリィと会えないと思っていたからだ。


その日のお出かけは久々にクリスと二人だけで過ごす、特別な一日となった。


クリスは美容やファッションに気を遣っているみたい。幼なじみだけど、知らなかった一面を知ることができたな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ