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第4話 シャーロットのお礼

「レディ・アップル、少しお時間よろしいかしら?」


数日後、今度は逆にシャーロットがリリィの教室に顔を出した。


「…うん!もちろん」


リリィは一瞬驚いた顔を浮かべたが、嬉しそうに頷いた。


「おい、どうしてレディ・ブラックウェルがリリィを呼ぶんだ」


「あら、あなたは呼んでいなくてよ?フォード卿」


クリスはシャーロットがリリィを呼んだことに驚き、声を低めた。そんな婚約者を見てシャーロットは一蹴した。


「クリス!シャーロットは私を呼んだのよ!」


邪魔されてなるものかとリリィは頬を膨らませて抗議した。


「まあ、ふふ。レディ・アップル、顔がすごいことになっているわよ」


シャーロットが手袋を付けた手でリリィの膨らんだ頬をつついた。


「リリィでいいのに。それで、シャーロット。一体どうしたの?」


シャーロットはクリスを一瞥したが存在を無視することにした。


「そう?じゃあ、今度からは私もリリィと呼ぶわ。それと、用事はこれ」


シャーロットはそう言って持っていた紙袋を差し出した。


「この前のお菓子のお礼よ。手作りではないのだけれど、有名なお店のマカロンなの。味は補償するわ」


リリィの言葉を引用してシャーロットが言った。


…なんだか、随分と親切じゃない?もしかして、シャーロットには前回の記憶があるのかな。


紙袋を見つめたままリリィは固まってしまった。


「しまった!俺もリリィにお礼をしようと思っていたのに」


クリスの言葉にリリィはハッとした。


「お礼なんて良かったのに。でも、とっても嬉しいわ。ありがとう!」


リリィはそう言って紙袋を受け取った。



**********


リリィは生地に牛乳を混ぜながら考えていた。表情は真剣そのものである。


貰ったマカロン、どうしようかな。


ちなみに今日の晩御飯はカニクリームコロッケだ。リリィは今、その下準備をしている。


正直、今の私に食事は必要ない。しかも、代償によって味がわからないから感想を聞かれても困ってしまうわ。


最後の牛乳を入れ、適当に味を整えた。火を消し生地をバットに移した後、冷蔵庫に入れる。


うん?そういえば、このロゴ見たことある!確か、卒業パーティの後に行われた王家主催のパーティでお土産にもらったやつだ。


リリィはシャーロットから貰ったマカロンの箱を開け、中身を確認した。緑、赤、茶色のマカロンが並んでいる。


茶色はチョコレート味ね。緑は抹茶かピスタチオ?赤はなんだろう。フランボワーズ、苺、カシスのどれかかな。


リリィは一生懸命思い出そうと、こめかみを押さえた。


確かこのお店に抹茶はなかったはず、ということはピスタチオね。あとは赤だけど、苺はもっと薄い赤でカシスはもっと濃い赤だった気がする。残ったフランボワーズが正解ね!


リリィは思い出せた達成感から晴れ晴れとした顔になった。


そうだ、どうせだからこのマカロンを再現して配ろう。一度食べたことがあるから再現できるわ。


味はわからないけど、シャーロットが初めてくれたものだもの。他の人にあげるのはもったいないよね。


そう考え、リリィはマカロンを自分で食べてしまった。



**********


「はい、これ」


貰ってすぐに同じようなものを作って渡すのは失礼と考え、10日程空けてからリリィはマカロンを作った。


「お礼のお礼!といっても、この前シャーロットに貰ったマカロンを再現しただけなんだけどね」


はにかみながらシャーロットに渡すと、シャーロットは大きな目をぱちりと瞬いた。


「…ありがとう」


ちなみにクリスとエイミーにもあげた。


「どういたしまして」


リリィはくるりと踵を返し、教室へと戻った。



「美味しいわね」


教室でマカロンを食べたシャーロットは小さく呟いた。


口に広がるピスタチオのクリームは、シャーロットがお店で食べたものと同じ味がした。


でも、赤いマカロンはフランボワーズの味がするわ。私があげたのは薔薇味だったのだけれど。


シャーロットは疑問を感じつつ、次のマカロンを食べた。


まさか食べていないとか?いえ、これだけも味を再現したのだもの。きっと薔薇は手に入らなかったのね。


シャーロットは一人で納得し、幸せそうに味わった。

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