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第11話 シャーロット・ブラックウェル復活

「あなたが悪いの」の番外編と被っているところがあります。

「カーチャ、行くわよ」


「オリャ、待って」


思っていたよりも時間が経っていたようだ。教室には誰も残っていなかった。親友のオリガが急かしてくる。


エカテリーナは急いで教科書をまとめ、次の教室へ走った。


次の授業はスベトラーナ・ニカラエブナだったわね。遅れたら宿題を倍にされるわ。


エカテリーナは走りながら廊下の窓に映った自分の顔を見た。


前世と同じ顔。違うのは目の色が青くなったくらい。


前世を思い出し、エカテリーナはため息を吐いた。


ほんと、クソみたいな人生だったわ。婚約者は浮気するし、好きな人には裏切られるし、挙句には殺されるだなんて。


シャーロット・フォードとしての人生を終えた瞬間のことは覚えているが、犯人の顔は見ていなかった。


犯人は男だったわ。2階にいる男なんて、クリスしかありえない。あのクズめ。


貴族としての人生が終わり、平民となったからかエカテリーナの口は悪くなっていた。


治癒力は即死には効かないってことが死んでわかったわ。死んで異世界へ行く作戦が成功して良かったと言うべきかしら?でも、こっちに来てわかったけど、私が前世と思っていた記憶は間違っていたみたい。高層ビルと貧しい暮らしはこっち、お祭りは前の世界だったのね。


エカテリーナは魔女アリアが言っていた言葉を思い出した。


『魔女には予知と呪い、神官には身体と心の治癒ができる』


きっと、私が見たのは予知だったのだわ。テオドールの名前を付けた時も見えたし、間違いない。はぁ、結局私は余計なことに囚われて現実が見えていなかったのね。好きなら好き、嫌いなら嫌いと言っていれば、もう少しマシな人生を送れたかしら。


「カーチャ!早く!早く」


エカテリーナは教室に滑り込み、思った。


でも、この人生も悪くないわ。



「虐待、ストレス、アルコールや煙草、大気汚染などは脳の成長を阻害します。脳が未熟ですと、危険に対するリスクが甘くなり、危険によって期待できる報酬を過大に評価する傾向が高くなります。特に25歳までは脳の機能を構成するニューロンが未完成であり、青少年期の心理状態を不安定にさせます。わかりやすい例ですと、万引きによって得られるものと、万引きによって捕まるリスクを秤にかけた場合、脳が未発達な人はリスクをリスクと考えないと言えます。捕まってもどうにかなる、と思ってしまうのですね」


「先生、ではどうすれば脳を発達させることが出来ますか?」


「いい質問ですね。睡眠の機会、学習の機会、運動の機会が積極的に脳を成長させると言われています。皆さんはまだ若いので、ぜひ行ってくださいね」


スベトラーナ・二カラエブナは一度講義を区切り、今度は大人の犯罪要因について話し始めた。


「大人が犯罪を行う根底には、8つの社会的資源が不足しているからだと言われています。経済的資源、権力的資源、文化的資源、社会関係的資源、威信的資源、市民的資源、人的資源、肉体的資源です。これらの資源のほとんどは人間関係に基づき----」


エカテリーナは肘をついて窓の外を見ていた。


クリスも8つの資源の内のどれかが不足していたのかしら?


「--!カーチャ、危ない!」


オリガが何か言ってるなと頭の片隅で思っていると、窓ガラスが割れた音がした。



**********


夢じゃなかった。


シャーロットは侍女に身支度をしてもらいながら最後の瞬間を思い出した。


そう、あの時突然隕石が落ちてきたのだわ。あの地域では時々隕石が落ちてくるけど、まさか自分に当たるだなんて。


自分の運のなさを嘆き、シャーロットはため息を吐いた。


「はい、お嬢さま。完成です。本日もお美しいですね」


侍女アンの言葉にシャーロットはハッとした。


『シャーロット様、今日もお美しいですね』


そう言って花をくれる茶髪の男の子。


今は14歳だもの。あの子はいないのね。


シャーロットは一抹の寂しさを感じながらも思考を切替え、執事を部屋に呼び寄せた。


前世と前々世を思い出したのは最近だが、今世の記憶もちゃんとある。


14歳になったけど、最初とは色々と違うわね。まず、リリィとエイミーという友達ができたわ。それから魔女には異世界に行く方法ではなく、婚約者に関する相談をしているみたい。どうしてリリィと友達になっているの?あと、エイミーって誰かしら?


エイミーは密かにシャーロットを殺そうとしたため、シャーロットの記憶にはなかった。


まあ良いわ。それよりも、明後日に私の家でリリィの誕生日パーティを行うのよね。リリィが何の目的で私に近づくのか知らないけど、やるからにはきちんとするわ。


「お嬢さま、お呼びでしょうか?」


執事がやって来た。この人はブラックウェル侯爵家を取り仕切っているベテランの執事で、シャーロットのことを孫のように可愛がってくれている。


「明後日、お父さまはお屋敷にいないのよね?」


「はい、旦那様は朝からお出かけになり、翌日の明け方に帰ってくる予定となっております」


「そう、わかったわ。あのね、準備してもらいたいものがあるんだけど…」


ブラックウェル侯爵家の威信を見せつけるような、派手なものが良いわよね。


シャーロットはワクワクした気持ちで花火の打ち上げを提案したのだった。

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