プロローグ
列車が入ってきたタイミングでクリスを突き飛ばすと、驚いた顔でこちらを見てきた。刹那、列車が衝突した。
「あなたが悪いのよ。私のシャーロットを殺したんだもの」
2年後、リリィは特技の料理を活かし、各地を旅していた。
警察はクリスが殺されたとき、私が一緒だったと知っているでしょうね。ちょっとした変装はしていたけれど、クリスが私以外の女の人と居たことなんてなかったから。
リリィは丘の上に座り、ゆっくりと流れていく雲を眺めた。
シャーロットが亡くなって2年。瞼を閉じるとあの美しい顔を思い出す。決して仲が良いわけではなかったが、少なくともリリィはシャーロットのことが大好きだった。
暖かい風が後ろから吹き、リリィの白金の髪を巻き上げた。
はあ、シャーロットに会いたいわ。
リリィは閉じていた目を開け、にこりと笑った。
「そうだ。時間を巻き戻そう」
**********
ひそひそと話す数人の声が聞こえる。
『ああ。ブラックウェルの財産を丸ごともらえたら、世界中で一番の金持ちになれるぞ。そうしたら、リリィになんでもしてやれる』
ああ、この声はクリスだわ。確か、シャーロットとクリスの婚約2周年記念パーティの翌日だったっけ。
だんだんと意識が鮮明になり、リリィの口元が弧を描いた。
そう。成功したんだ。代償は大きいけど、成功したのであれば文句はないわ。