第15話 月のひかりのその下で
「な、なんだっ、増援か? くそ……」
「これは……いったい」
聖女親衛隊と名乗るレイラたちの来援で混乱したのは当然私だけではなかった。一瞬の膠着を見せた父たち、そして庶民たちもその場に立ち止まり、戸惑いの色を隠さない。隣で私の腰を支えたままのベルさんも例外ではない。
ただ近隣の騎士団が駆け付けたということであれば、それぞれの様相はもう少し違っただろう。私たちは僅かに安堵の一息を吐き、逆に彼らは焦燥に歯噛みしたはずだ。しかし駆け付けたのは明らかに通常の騎士団ではない。馬に乗ったまま、あるいは馬を降りて私たちを護るように割り込んだ彼女らは統制こそ取れているもののそのバラバラな行動からわかるとおり訓練された騎士といった様子ではない。いや、それどころかその全員が、護身用の剣程度にしか武装していない。堂々と貴族の装いに身を包み、どうみても手作りだろう花と天秤の紋章を胸元に縫い付けている。更に不可解なのは少女、ないし青年と呼ばれるような年頃の、つまり貴族の子息であろう人物しかいないことだ。
……正体を知っている私ですら、この有り様なのだ。父たちや対峙する彼らの困惑具合は推し量れないだろう。そして正体を知れば、余計に混乱するかもしれない。そうだろう、つい最近長期休暇という名の閉鎖となったばかりの王都学園の生徒たちが結集しこの場に駆け付けるなど、誰が予想できようか。
「貴女は……」
「申し遅れました、ハッティリア・フォン・フェアミール殿。私はエスプリー家が長女、レイラ・フォン・エスプリーと申します」
「あ、ああ……エスプリー家の」
私のそばから一歩父たちの方へ馬を進め、名乗ったレイラに父はそうじゃないという表情を隠しもしなかった。むろん、レイラも父がそんなことを聞いたわけではないのくらいはわかっているだろう。しかしレイラはそれだけ告げて切り上げると、農具を片手に呆然としたままの庶民たちへ向いた。
……そうだ、助けに来てくれたとはいっても、まさかその護身用の剣を片手に戦うつもりではあるまい。そのつもりならば各家の親衛騎士なり、近場の騎士団なりを一緒に連れてきたはずだ。そして戦うつもりでないのなら、前に出て対峙したまま止まっているのはただただ危険なだけだ。馬を伴っているので多少の威圧効果はあるかもしれないが、どうもまともに剣を交わす用意はないらしいということには向こうもすぐに気付くはず。それで様子見に止まってくれればいいが、知ったことかと再び攻撃を仕掛けられれば今度こそ死人が出る。それも貴族と庶民が直接ぶつかってという、最悪の形で。レイラは、いったい何を――――
「――――今更どの面をさげて、と思われることでしょう。ですが、私たちに言葉を紡ぐ時間をください。……聞き終わった後で、この身を蹂躙して晒し首にしようと構いません。けれど、少しだけ。……少しだけ、時間を頂けませんか?」
「な、なにを……」
「待て」
先ほどミラさんにすっ転ばされた男が顎を擦りながら怒鳴りかけたところで、それを制する声があった。男の後ろの木の陰から姿を晒した彼は獣皮で作られたらしき服を纏い、その弓に番えた矢を一度下ろしながら鼻を鳴らした。なるほど、彼が先ほどから矢を射かけてきていた弓手で、暫定的に彼らの指揮を執っている狩人なのだろう。そうと決まったわけではないが、否定するには如何にもすぎた。
「話してみろ、貴族」
「……ありがとうございます。みんな、馬を降りなさい」
ふー、と僅かに肩を上下させたレイラはそう指示を出して、ふわりとスカートを揺らしながら父やミラさんと比べるとぎこちない動作で片足を上げると自らも馬から降りた。乗馬術自体は習っていても、普段から乗り慣れているわけではないのだろう。
「まずは、このような形でしか」
「御託はいい。何が言いたい」
「……はい。私は、私たちは――――」
なっ……、と。敵意をモロに乗せて睨んでいた彼でさえ、目を見開いて固まった。
ズザリと一斉に響いた音。それは、落ち葉が、土が。レイラの……彼女ら駆け付けた貴族の子たち全員の額によって、深く押し付けられた音だ。服が汚れるのも気に留めず両足を付き、両手をその膝の前に置き。綺麗な髪を泥に塗れさせながら頭を下げた音だ。
――――十数人もの令息、令嬢が庶民の人々に土下座をする異様な光景が、そこにあった。
「貴方たちに、謝罪をしたいのです。日々王国のために従事し、そうして必死で得た糧を我々貴族などと呼ばれている愚者に貢がされ、だというのに今の今まで不満を抑えて働いていてくださった……庶民の、方々に」
「なに、を……」
「許してください、などと傲慢なことを宣うつもりは御座いません。ただ、ただ謝罪をさせてください……富と権力の上に胡坐をかき、真の在り方を忘れてしまった“貴族”を代表して、ここに謝罪をさせてくださいッ……!」
それは、その、姿は。
「いま、さら……いまさら、何を言いやがるッ! だから何になる、お前らが今ここで俺たちに謝って、それで何になる! 大体、お前らは関係ねえだろ! 俺たちが謝らせてえのは、ふざけた椅子から引きずり下ろしてえのはお前らの親だ! ガキはこんなとこに出てくんじゃねえ、すっこんでろッ!」
「――――ッ、……関係なく、なんか……関係なくなんか、ありませんッ!」
彼の激昂に怯んだレイラは、それでも頭を下げたまま。逆に激昂し返して見せた。感情と感情が、ぶつかり合う。しかし不思議と、そこに明確な対立は見えなかった。
不意に始まった父たちとの戦闘しかり、彼らはどうしようもなかったのだ。行き場のない怒りや悲しみ、そしてそんな状態を強いる貴族や王家に不満を抱え続け、それでもここまで生きてきた。ついに爆発したそれに突き動かされて剣を取るのを、憎き貴族やそれに組する者たちの痛みと後悔を求めるのを、誰が責められようか。
ああ、私は。わたし、は。
「聖女様の噂を知っていますか。王女殿下のことを知っていますか。私たちよりも遥かに幼いその身二つで、声を荒げて迫る庶民の方々に歩み寄り、泣きながら頭を下げてすべての責を代わられようとした――――たった八歳と六歳のお二方のことを知っていますかっ……!」
何をしている?
背負うと決めたのではないのか。
進むと決めたのではないのか。
不意打ちだった? どうしていいかわからなかった? ……そうだろう。確かに、今までとは状況が違った。突然起こったことだというのこそ同じかもしれない。
けれど、ただ情動に体を任せて自らを盾にすれば誰か一人は救えるような、そんな今までに瀕したのと同じ状況ではなかった。
選択肢を与えられたのだ。
理想のために愛を捨てて逃げ延びるか。
愛のために理想を捨てて最期まで共にいるのか。
……そんなことを、咄嗟に選べるだろうか。
自分の選択によって、この国に住むすべての人々の運命が変わる。それは生死にすら深く関わる形で、ましてや、まさにいま目の前で大切な人が血を流して倒れるかもしれない。
そんな状況で、この二択を即座に選べるような人が、はたしているだろうか。
「ならば、どうして無関係でいられましょうっ……! そんな背中を目の前にして、真の貴族というものを知って、どうしてこのまま黙っていられましょう!?」
「馬鹿な……そんな、信じられるかッ! たとえそれが本当だとしても、もう遅い! もう俺たちは剣を振ってしまったッ! はっきり傷付ける意思を持って、あんたらを攻撃した! それはもう、取り消せることじゃない……! 今更貴族や王女のそんな話を聞いたところで何が変わる! 現実は御伽噺みたいに甘くねえんだぞッ!」
「確かに、もう起こったことは変わりません……! でも――――それでもまだ、結末は変えられますッ!」
――――それでも“聖女”の名を背負うと決めたのではなかったのか。
それでも“御伽噺”を進むと決めたのではなかったのか。
「わたし、は……」
私は、何がしたかった。
革命だなんて大層な目標を掲げて、私は最初、何をしたかった。
――――私は、わたしは、だれ?
アリス? 有栖? それとも聖女? ……わからない。
「――――くそ、くそッ……。……わかった、一度だけだ。一度だけお前たちを……お前たちの信じる王女と聖女様とやらを信じて退いてやるっ……。だが、二度目はない! それで何も変わらなければ今度こそ……! もう二度とお前たちの言葉には耳を貸さんぞッ!」
……でも。それでも今は。
前に。ひたすら、前に。
進むしか、ないのだ。
「ルーンハイム様」
「……ステラ」
ベッドに腰掛け、胸中でこれからの対応を確認していたところ、同じく対応のために王宮内の根回しを行っていたステラが戻って来た。二日前、各地で蜂起が始まったとの第一報が届いて以降王宮は完全に閉鎖されていた。どこから火が起こるかわからないということで、王国軍部中枢の者ですらろくに内部に入れないような状態だ。
元々それが役目ではあるが、王宮の警備は完全に王家近衛騎士と私や両親直属の親衛騎士、そして王宮内に滞在していた各中枢貴族の親衛騎士のみによって賄われていた。一応、王宮外周には軍所属の騎士も待機しているようだが、もしも内部で何か起こった場合、彼らが駆け付けるのには少し時間がいる。流石に半刻もかかるようなことはないが、しかしそれだけあれば、近衛や親衛騎士さえどうにか出来るのならば内部を掌握するに十分な時間でもあった。……そう、騎士たちをどうにか出来るのなら。
「手ごたえは?」
「はい。予定よりかなり早いとはいえ、王宮内に関しては問題ありません。さすがに“彼ら”も動揺しているようでしたが、やはりその肩書だけのことはあります」
「……そう」
ならば問題ない。ここにきて両親の放任主義が役に立つとは、皮肉なことだ。
私の記憶の限り、基本的に両親と行動をともにするようなことはほとんどなかったと言っていい。それゆえ、私は唯一の王女だというのに……いや唯一だからこそだろうか。王宮内で半ば独立した立ち位置にあった。別の視点で見れば隔離、ともいうけれど。しかしそれはあくまで両親や中枢貴族から見た場合の話であり、従者を含めた王宮全体という視点から見れば孤立とは程遠い。それどころか、ある意味両親たちの方こそ孤立していると言えた。
近くに極端な悪例がいることも手伝ってか、私は王宮に仕えるものたち大多数からの支持、両親たちと比べての相対的な信頼を勝ち得ていたのだ。むろん、彼らはそれを面に出すようなことはしなかったが。
「気取られたりは?」
「ありません。むしろ蜂起に呼応するような動きをまったく見せなかったことで、今まで以上に信頼を深めているようです」
「……ふん。ぬるま湯に浸かりすぎたようね」
怪我の功名というやつだろうか。完全な不意打ちだったことで両親たちと同じように動揺したのが、かえって疑念を打ち消す結果となったらしい。錆びたとはいえ、仮にも社交界をここまで勝ち上がってきた連中である。その経験に裏付けられた直感というものを侮ってはいけない。場合によっては、計画が水泡に帰す。
しかし、となると問題は……。
「外、ね」
「内部の騎士が追い出されてそう間もない内に外周へ警備隊が展開されたのを見ると、今のところ順調なように思えますが……」
「ええ、彼ならそれくらいはやれるでしょ。各地の対応が追い付いているのかって話よ」
ああ、ラブリッド将軍ならこんな状況でも、王都内の対応くらいは完璧に出来るだろう。伊達に英雄などとは呼ばれていない。けれどそんな彼にも出来ないことはある。王都以外の地域での対応だ。比較的近い位置にある都市や街は問題ないだろう。管轄の騎士団や貴族の実力にもよるが、その他の既に手を回した地域もだ。でも、それ以外……まだ根回しの住んでいない地域の対応までは、さすがの彼と言えど後手に回るはず。
各騎士団に関しては将軍という立場ゆえ、指示伝達に時間がかかること以外は問題ないだろうけれど、貴族は別だ。何分、準備期間が短かすぎた。計画への協力を確約してくれた貴族は、それほど多くない。
「失礼致しました。それに関しましては、彼女たちを信じるしかありません」
「まあ、そうよね。――――はあ、アリス……」
もちろん実際に聞いておかねばならないことではあるけれど、各地の、というのは半ば建前だ。具体的には、マリアーナのことが聞きたかった。ステラもそれはすぐに察してくれたらしく、目を伏せつつもはっきりと言ってくれた。
そう、計画も大事だけど、何より気になるのはアリスのこと。こうなる前に聞いていた情報からするとマリアーナで蜂起が起こる確率はかなり低いけれど、それでも心配なものは心配だ。
無事だろうか。慌てて送り出した援軍は間に合っただろうか。初めてずっとそばにいたいと思わせてくれた子なのだ。何があっても、失いたくない。
「嫉妬してしまいます」
「あんたは思わなくてもずっといるでしょ」
「“ルーンハイム様の”従者ですからね」
まったく、わかってるなら態々言わせないで欲しい。ここまで長く一緒にいると、逆にそういうことを伝えるのが気恥ずかしいのだ。確かめるまでもなく、一緒にいるのが当然とまで思っているのだから。
まあでも、あえて今そんなことを言った意図はわかる。こんな状況だ、張り詰めた気を少しでも和ませてくれようとしているのだろう。焦っても、いいことにはならない。学園祭で演劇の練習をしていた時にも、歌と踊りと演技を混ぜるというのに中々苦戦していた私にアリスが何度も言ってくれた言葉だ。
……そうだ、落ち着こう。大丈夫。有望な貴族全員には間に合わなかったとはいえ、主要な者たちには話を持ち掛けられた。特に魔導師協会の後援であるエスプリー家と手を結べたのは大きい。それはそのまま、魔導師たちの協力も期待できるということだからだ。
「けれど、あの時は驚いたわね。まさかあの子が、エスプリー家の長女だったなんて……」
「てっきり私は気づいておられるものだと。本当、フェアミール様には敵いませんね」
「ええまったくよ。……結局、ああいう純粋な子の繋いだ打算のない縁が一番強いのよね」
「あら、ルーンハイム様も純粋無垢ですよ」
「……やかましい」
それに紐づけされる嫌な記憶が舌に蘇るのであまり思い出したくはないけど、ステラの言う通り、何故だか私はアントワーヌから受け取った手紙を確認するまで気づかなかったのだ。娘から君たちの話を聞いたという文を目にして、ようやくアリスに嫌がらせをしていたあの令嬢の家名がエスプリーだったことに思い至った。既視感を感じて当然である。
……一応、あくまで一応、アリスが言うから二人目の友だちだとして認めている彼女は、確かに私たちの助けになりたい的なことを言っていた覚えはある。学園が閉鎖となってすぐにも社交会と称して学友たちを集め、何やら動いていたらしいことも小耳に挟んではいた。けれど事が事だけに、親にまであの日のことを話すとは思っていなかったし、ましてや噂こそ流していたとはいえ、彼女は革命計画のことなんてまったく知らなかったはずである。それがここにきて繋がるとは。
革命にしても私個人としても、アリスの生存が何よりも優先すべき事柄なのである。けれど表立って助けに行くことなど出来ないというジレンマの中、自由に動ける彼女たちの存在は正直かなり有難かった。
「聖女親衛隊、だったかしら」
「なかなか良いセンスです。……そのことについて、少しだけ疑問なのですが」
「なに? 」
「ああするしかなかったのは承知していますが、危険では?」
ステラの疑問は尤もだ。一番あてになる軍は蜂起の対応で精一杯だし、諜報部はまだ派閥闘争に決着が付いていない。唯一地位にものを言わせてある程度強行的に動けるアリスの祖父がマリアーナへ急行したくらいだ。完全に自由に動けるのは彼女たちくらいしかいなかった。
けど、けれど、だ。この状況で貴族の子どもたちだけが単独で行動するなんて、燃え盛る炎の中に油を被って突入するようなものである。
庶民たちには元より、聖女が国を憂いて動こうとしているという噂を流布済みだ。もしも彼女……レイラたちが口を滑らせて革命のことが漏れようが、この隔離された王宮まで情報が届かなければ今更大した問題ではない。
しかしそれと貴族であるレイラたちの身の安全とは、なんら結びつくことではない。そもそもが中・上流階級に対しての蜂起である。いくらまだ子どもと区分できるような若い身だとはいえ、それなら仕方ないと見逃されるはずもないのだから。
各騎士団、貴族、庶民たちへの根回しが済んでいる地域を抜けていく、ある程度安全な経路を教えはしたが、それが確保されているのも途中までである。ちょうど中間点に位置している街からマリアーナまでに関しては若干不安が残る。マリアーナ近辺は元々帝国との国境地帯である都合上騎士団駐屯地など軍関連の施設が多く、それほど大きな街もないので滅多なことでは蜂起集団と遭遇しないと思うけれど、何事にも絶対はないのだ。
だから、ステラは尋ねている。どうして彼女らに、と。
その瞳に浮かぶのは言葉とは裏腹に疑問ではなく不安だ。それも、万が一にも王女の従者ともあろう者が抱くべきではないもの。……ええ、そうでしょう。だってあなたは、王女ではなく私の、従者だものね。
「……大丈夫。相変わらず貴族は好かないけど、レイラたちを道具として使ったわけじゃない」
「い、いえ、そんなつもりでは」
「バレバレよ。ステラが私のことをわかるように、私もステラのことはわかるんだからね?」
「……大変失礼致しました」
「そこまで落ちぶれてないわよ。アリスと……あなたのおかげでね」
ついつい顔を反らせてしまいながら。けれどはっきりとそう伝えると、ちらりと伺った視線の先でステラははにかみながら微笑んでいた。珍しい。
そういえば、ステラのこんな心底喜色の滲んだような微笑みはいつ以来だろう。両親や中枢連中との付き合いで苦労しているのは、何も私だけではない。
「嬉しいです」
「いつもそうやって笑ってればいいのに」
「笑顔はそれなりにお見せしているつもりなのですが」
「私にはね」
「他にお見せする価値のあるお方が、フェアミール様方くらいしかいらっしゃらないもので」
「ぷふ、ははっ、随分と高いのね? 」
「純潔の乙女ですからね」
こほんと咳払いして、一応説明を続ける。
まあ、もう必要ないのだろうけど。
「ここに乗り込んできたレイラたちの瞳が、眩く澄んでいたからよ」
「瞳、ですか?」
「ええ。まるでどっかの、幼い少女みたいにね」
「……なるほど。それでは言うことを聞きそうにもありませんね」
「まったく。いつもはふわふわおどおどしているくせに、こういう時だけ誰よりも頼りになるんだから」
そうよね、アリス。
誰もが諦めてしまうような、そんな時。貴女はいつも、前を向いていた。
その両の金色で暗闇を照らし、優しく煌めく白銀で導いてくれた。
今はただ、前に進む。
貴女を信じて。貴女の信じてくれた、私を信じて。
……濁り、腐り、沈み、堕ちかけた私の心を、温かく包んで掬い上げてくれた。
――――貴女の光を、喪わせはしない。
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