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第34話 ドラゴンを狩るモノたち


「さあ、もっと甚振(いたぶ)ってやるのです!!竜殺槍(ドラゴンキラー)隊、行きなさい!!」


「はっ…!!」


 ダフラの号令で物々しい大型の槍を水平に構えた三人の竜滅隊員が横並びになり突進、俺の左脇腹に深々と槍を突き刺した…強烈な痛みを感じるが、身体に力が入らないせいで身じろぎすらできない。


『グッ………!!』


「おやおや?痛いのなら我慢しなくてもいいのですよ?もっとみっともなく悲鳴をお上げなさいな」


『なんのこれしき…大したことは無い…』


 嘘だ、とてつもなく痛い…それはもう絶叫を上げて転げ回りたいほどに。

 しかし竜諌草(りゅうかんそう)の香で身体の自由を奪われた上に、竜縛抗ドラゴンバインドパイルで前足と翼を地面に縫い付けられている俺にはそれすらも許されない。

 そうでなかったとしてもこの竜滅隊隊長である卑劣なこの男…ダフラを少しでも愉しませる行動は取りたくなかったのだ。


「そのやせ我慢がどこまで続くでしょうね…ではそろそろドラゴンの解体ショーといきますか…」


「はい、ダフラ様」


 ダフラの命を受けた隊員たちが、何やら準備を始めた…その中には巨大な鉈や前世で言う所のバールのような物も見て取れる…まさかそれを使って…?


 俺の予想通りバールが俺の鱗と表皮の間に付き込まれ、《《てこ》》の原理で捲り上げられていく…次々と剥がれ落ちる俺の鱗。


『やっ…止めろ!!』


 今度は硬い外殻と柔らかい皮膚の間にバールが刺し込まれ、先程同様にねじり上げられた…激痛と大量の出血と共に外殻がはぎ取られ地面に転がる。


『グワアアアアアッ…!!』


「そうそう!!その悲鳴が聞きたかったんですよ!!さあどんどん行きますから景気よく叫んでくださいね~~~~!!」


 狂気を帯びた笑みを浮かべダフラが空を仰ぐ。

 こいつまともじゃない…まだ生きている獲物から外皮を剥ぐなんて常軌を逸してる…相手が人間じゃないからとかそういう問題ではない。


『ダフラと言ったか…貴様は何故ドラゴンにここまでする?恨みでもあるのか?』


 俺のこの質問を受け、今まで上機嫌だったダフラが急に押し黙る。


「恨みがあるか…ですって?あるに決まってるでしょうーーー!!」


 再び口を開くと先程までの狂人めいた態度とは一変、憤怒の表情を現わし激昂した。


「本来あなたがた怪物に聞かせる義理は無いんですけどね…私の娘はあなた方ドラゴンを信仰する者に誘拐されたんですよ!!」


『何…だと…?』


 雲行きが怪しくなって来たな…どういう事だ?。


「もともと私は生業としてドラゴン退治をしてましたが、特にドラゴンに恨みを持っていた訳ではありませんでした…基本的に人間に重大な被害をもたらしたドラゴンしか狩っていませんでしたからね…

昔からドラゴン信仰は人間の中にもありましたし、それをどうこう言った事もありません…ですが信仰対象であるドラゴンを狩られた一部のドラゴン信者にあろう事か娘をさら(さら)われたのですよ!!

数年かかって娘の消息を追いましたが全く情報を掴めず、途方に暮れていた所に奴隷商からある村にそれらしい少女が売り飛ばされたらしいとの情報を掴んだのですよ」


『まさか…その村は…』


「そうです…あなたが滅ぼしたゲトー村ですよ!!私が調査をしに行こうとした前日の話です!!

 私はすぐにもその原因のドラゴンを討ち取りたかったのですが国からはそのドラゴンには手を出してはならないとのお触れが出てしまい断念せざるを得なかった…

しかしやはり神は存在する…こうして私に復讐の機会を与えて下さったのですから!!」


『そんな…』


 もしやリアンヌやマーニャがいたあの生贄育成施設にダフラの娘がいたのかもしれないのか?

 

 少し前だがリアンヌが話してくれた事があった…二年程前、マーニャが施設を抜け出して街を彷徨っていた理由をリアンヌが単身探りに行ってくれた時の話だ。


 生贄育成施設は身寄りのない少女や口減らしに預けられた少女をドラゴンに捧げるための生贄として育てる以外に人身売買にも手を出していたのだそうだ。

 丁度出荷のタイミングで外に出された時、マーニャは隙を見て脱走して街で食べ物を盗み、命を繋いでいたらしいのだ。

 その情報を掴んだ後、リアンヌは捕まってしまった訳なのだが…。


 しかしまたか…またなのか…どんなに贖罪の心を持ち続けても過去の過ちはどこまでも俺を追ってくるんだな…確かにゲトー村には狂信者以外にも罪の無い人間がいたはずだ…

 信仰も何も知らずに暮らしている子供たちや、生贄育成施設に囚われていた少女たち…俺はそれらの人々も構わず水底に沈めてしまった…こんな事が許される筈がない…俺は身勝手に彼らの命を奪ってしまったのだから…。


 やはりそんな奴には天罰が下るのだ…これでは前世で俺を死に追いやったいじめグループとやっている事はなんら変わらないじゃないか…。


「おしゃべりはもうお終いです、続きと参りましょう…」


 ダフラの調子が元に戻った、先程感情的になっていたのが嘘の様に。

 今度は大鉈を持った隊員が俺の前足の所にやって来た…そして俺の爪に大鉈を振り落とす。


『グウッ…!!』


 切り落とされた爪が飛散する…先程ではないが痛みと出血があった。


「ドラゴンの爪や鱗、外殻は武器や防具の素材として高く売れるのですよ…先程あなたを穿った槍もドラゴンの角からできていましてね?角はそれはそれは高く売れるのです…今日は大収穫ですよ…フフフッ」


 俺の頭の上に数人の隊員が昇っていた、手には二人で引くタイプの大型ののこぎりを持って…そして俺の角の根元に当てると、勢いよくのこぎりを引き出したのだ…まるで丸太を切り出しでもするかのように。

 程なく二本の角は切り落とされ俺の目の前に転がった。


『あっ…ああああああっ………!!!』


 恐怖と絶望のあまり口からいつの間にか声が漏れていた。


「ハハハッ…!!こうなってしまってはドラゴンも形無しですね!!

肉や内臓は珍味として、骨も武具や薬の材料になりますから根こそぎ奪って差し上げましょう!!目玉さえもコレクターには高値で売れるのです、死しても尚人間の役に立つのですからあなたも安らかに逝ってくださいね!!」


 腹に刃物を突き入れられている感触がする…恐らく肉を切り出しているのだろう…サクサクと小気味良い音がする…自分が切られているのに何故か他人事のように感じられる。

 こんな状況になっているのにどうしてか俺の心は穏やかだった…もしかして生を諦めた事によって悟りの境地にでも達してしまったのだろうか。

 それは無いにしてもこうなってしまったらもうどうにもならない、後は人間に搾取され殺されるだけだ。


 まさか自分がこんなに悲惨な最期を迎えるとは思ってもみなかったな…

 TVゲームにモンスターを討伐してその死体から素材をはぎ取ってキャラクターの武器や防具を作くるものがあったが、あれはとんでもなく残虐な発想だな、悪魔の発想だ…人間とはなんと業が深いのか…。

 やられる立場になって初めて分かったが、これは堪ったものでは無い。


 そして顔の前に立った男が俺の目に向かってバールを向けてきた…目玉をえぐり取るつもりなのだ。

 きっと痛いだろうな…


 バールの先端が不気味に光る…そんな時、横から飛んで来た衝撃波に目の前の男が弾き飛ばされたではないか。


「やめてーーーーーーっ!!!」


 甲高い声を張り上げて何者かが俺の眼前に両手を広げ立ちはだかった…この翼の生えた背中、お前は………!!


『ミコト!!どうしてここに!?』


「パパが心配になって戻って来たの!!ああっ…こんなにボロボロになって…」


 俺の顔に抱き着き涙をポロポロと落とすミコト。


「ほう…あなたが報告にあったブルードラゴンと人間の間に生まれた竜人(ドラゴンハーフ)ですか…なるほど、こいつはいい!!お前たち、ついでにこの娘も捕まえてしまいなさい…高値で売れる筈ですよ!!」


『ダフラ貴様…自分自身も娘を誘拐された事がある癖によくそんな事が言えるな…!!』

 

「私の娘はもう死んでしまっているんです!!これは復讐の一環なんですよ!!」


『そうかよ!!ちょっとは同情した俺が馬鹿だったぜ!!貴様はもう可哀想な被害者ではない…立派な犯罪者よ!!』


 俺は身体を奮い立たせた…身体を地面に縫い付けていた竜縛抗ドラゴンバインドパイルが一本、また一本と抜けていく。


「なっ…そんな馬鹿な!!動けるはずが…!!」


『舐めるなよ…娘には絶対に手を出させない…!!』 


 怒りで身体の中から力が漲って来たのだろうか…いやそれだけではないな、今気付いたがあの不快な竜諌草(りゅうかんそう)の匂いが随分薄らいでいるではないか…理由は分からないが…。

 でもこれなら戦える…俺の懺悔の時間は後回しだ、今は何としてもミコトを守り切らなくてはならない…それまでは絶対に死ねない。


「フ…フン、そんな身体で何が出来るというんです!?我々の優位は依然変わらないのですよ!?」


 声が震えているぞダフラ…俺の勘だが竜滅隊(こいつら)はまともに動くドラゴンと正面から戦った事が無いと見た。

 確かに奴らが持つ対ドラゴン用の装備は脅威だが、喰らわなければどうと言う事は無い。

 ただミコトを庇いながらとなると油断する事は許されないが…。


 そういう事で俺と竜滅隊の暫しの睨み合いが続く…どちらも攻めあぐねているのだ。


 そんな時地面が突然猛烈に揺れた…これはまるで直下型地震だ、震度5くらいはあるだろうか…。

 竜滅隊の連中は地面にへたり込んで動けなくなっている。


「パパ…何、この揺れは?」


『分からない…一体何が…?』


 俺とミコトは咄嗟に空へと飛び立ち地面を見下ろしている。


『臭え、臭え…こんな臭いを撒き散らしやがってよーーー!!鼻が曲がっちまうぜーーー!!』


 地面が割れ、そこから顔を出したのはモスグリーンの体表をした巨大なドラゴンであった。

 あの隻眼は…ドラゴだ。


『ドラゴ!!お前、何しに来やがった!?』


『随分みすぼらしい格好になったなリュウジ…生きていてくれて嬉しいぜ~~~』


 ニヤッと口角を上げるドラゴ。

 心にもない事を…本当に俺の無事を喜んでいるものではないのは一目瞭然だ。

 だが今は正直なところ助かった…ドラゴがこの場を荒してくれなかったらまだ膠着状態が続いていたかも知れないのだ。


『お前を倒すのはこの俺様だ…こんなクズみたいな人間にやられるなんざこの俺様が許さん!!』


 いや、前言撤回…更に面倒くさい事になりそうだ…。


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