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第10話 何でここにドラゴンが


 俺達ドラゴン兄弟の壮絶な兄妹喧嘩の後…ドラゴがここリューノスを去って二日が経っていた。

 

 始めにドラゴの暴挙を止めようとした侍女たちは、俺の専属世話係であるエミリー以外の四人は残念ながら命を落としてしまった。

 唯一生き残った彼女も全身が包帯を巻かれ、見るからに痛々しい。

 しかしそんな状態にあっても献身的にドラゴに襲われて大怪我をしたスーの看病をしてくれている。

 そしてそのスーだが、一応意識は取り戻すも彼女も容態が安定せず予断を許さない状況だ。

 勿論スーの容態は心配だ…しかしそんな中ではあるが、俺はいくつかの疑問を解消するためティアマト母さんの元を訪れていた。


「母さん…ちょっといい?」


『リュウジ…どうしたの?』


「ドラゴが逃げる時に空けた地面の穴から空が見えた…もしかしてリューノスは空に浮かんでいるのかい?」


 俺は確かに見た…魔法であけた穴を落下していったドラゴを追う際に見た穴の底には一面の雲海があったのを…そして僅かな雲の切れ間からは青空が覗いていたのだ。

 ここリューノスが万年黄昏色の空であるだけに、その鮮やかな青さはとても眩しく感じられた。

 俺の質問を受け、母さんは長い首を上に向かってぴんと伸ばし目を瞑った…そして意を決したかのように口を開いた。


『あなた達兄弟がもっと成長してから話すつもりだったのだけれど…いいわ、リュウイチとドラミを呼んできなさい…彼等にも関係のある話だから』


「分かったよ」


 俺はリュウイチとドラミを連れて出直すことにした。


 


『私達の生きている世界はドラゴニアといって私達ドラゴンの祖先が起源となり創成された世界です…そして今の住まいであるここリューノスはその世界のはるか上空に浮かんでいるのです…』


「やっぱり…そうなんだ…」


 俺の以前からの予想通り外には別の世界があった。

 このリューノスですら端から端まで移動するとなると俺達ドラゴンが翼を使って飛行しても悠に丸一日かかる程広いのに、外の世界であるドラゴニアとはどれほど広大なのだろうか。


「それで、リューノスは何のために存在しているんだい?

そもそも俺達の祖先が創った世界ならば、俺達もドラゴニアに住めばいいんじゃないの?」


 この事について俺なりにいくつかその理由を頭の中で思い浮かべてみたが所詮想像の域を出ない訳で…ここで直接母さんに聞くのが一番手っ取り早い。


『ご免なさいね…その質問にだけは私だけの判断で具体的な回答をあなた達にする事は出来ないの…ただ強いて言うなら、遥か昔に我々ドラゴンと他の種族が表立って共存出来ない出来事があったという事…言うなればリューノスは我々ドラゴンの避難所の様なものね』


 リューノスが避難所?

 とても気になる言い方をする母さん…しかしこのものの言い方からして、この質問に答えないのは母さんの一存ではなく、何か別の、強大な力を持った存在に口止めされている可能性がある…その存在とはまさか…?


「そう、じゃあ次の質問…俺達はどんどん成長している訳だけど、成体になったら俺達はどうなるんだい?」


 ドラゴンにとって成体になると言う事は大人に成ると言う事。

 俺が生まれてこの方、リューノスで見たドラゴンは俺達兄弟五頭とティアマト母さんの合わせて六頭しかいない。

 俺の勝手なイメージとして、ドラゴンが頻繁かつ大量に繁殖するとは思わない。

 しかし母さんの産卵が俺達兄弟が初めてでは無いとしたら他に兄や姉のドラゴンが居てもいい筈だ。

 そうなると考えられる事はひとつ…先に生まれた兄弟たちはどこかに移り住んでいるのではないか。

 だがそうではなく、本当にここまで個体数が少ないとなるとドラゴンは立派な絶滅危惧種と言う事になる。

 いや待てよ…リューノスにあたる場所がここだけとは限らない…もしかしたら他のドラゴン家族が住んでいる場所があるのかもしれない。


『リュウジ…あなたには敵いませんね…これも後々に話すはずだった事ですがいいでしょう…あなた達が成体になった暁にはこのリューノスを出て外界であるドラゴニアへ旅立ってもらいます』


「ええっ!?」


 リュウイチとドラミが驚愕の声を上げた。

 俺は大体予想がついていたのでそう驚かなかった。

 しかしここでひとつの矛盾が浮かび上がる。


「それっておかしくないかい?さっき母さんはドラゴン族が多種族と共存出来ない理由があると言っていたよね?俺達がドラゴニアに行くのは問題があるんじゃないの?」


『お話しに食い違いが出てしまったのは謝るわ…

ですがこれは世界が存続する上でとても重要な事なのです…

我々ドラゴンはドラゴニアに住むことは叶いませんが、世界を維持するにはドラゴンの力が必要なのです…あなた達は各地に散って世界の安定の為に力を尽くしてもらいます』


「それは俺達が犠牲になって世界を支えろってこと? 

何故俺達を追い出した世界の為に?」


『そうではないのよ?…ご免なさいね、真実を隠したままでは上手く伝えられないみたい…

でも、これはこの世界のことわりという事で納得してもらえないかしら?』


「はぁ…分かったよ…」


 こうは言ったが、俺は全く納得していない。

 だが母さんの立場を考えると、これ以上この事を問い質すのは酷というものだろう。


「じゃあ最後の質問…前から聞きたくて仕方がなかったんだけど、俺達の世話をしてくれているエミリー達には何で足枷と鉄球が繋がれているんだい?

あれじゃあまるで奴隷じゃないか」


 これに関しては俺が生まれてからずっと抱いている違和感だ…あんな扱いを受けているのに彼女たちの幸せそうな様子は何だったのかと。

 いつか聞いてやろうと思っていたんだ。

 

『えっと…それ…どこかおかしいですか?』


「えっ?」


「どうしたんだいリュウジ…今までの質問は僕もさすがリュウジと感心して聞いてたけど、今の質問はあまりに実の無いものではないか?」


「そうだよリュウジ兄さん…そんな当たり前の事を聞いてどおするの?」


 まさか…あの異常な状態を異常と判断しているのは俺だけなのか?

 俺が人間だった前世の世界では、一部で確かに奴隷や人身売買などの人権侵害が残っていたことは否定しないが、こちらのファンタジー世界ではこれはごく普通の日常なのか…いや確かに冷静に考えれば俺達は生まれた時からこの待遇の彼女たち侍女の世話になっていた訳だしそれは頷ける。

 それにティアマト母さんは特に侍女たちに過酷な労働を強いていた訳でも無い。

 恐らくこの世界では奴隷を所有するという事は当たり前の常識の一つという認識なんだろう。

 そして、それを見て育っていれば…いや、これしか見ないで育っていれば兄弟たちはこれが異常な状態であると判断出来ないのではないか。

 なるほど、みんなと転生者である俺との間には倫理観の大きな溝があるって事なんだな。


「あ~そうだったな…聞くまでも無い事だった…今のは忘れてくれ…」


 思わず体裁を気にして誤魔化してしまった…みんなから一目置かれる存在でありたいという自尊心が咄嗟に働いてしまったか。

 少し自己嫌悪しつつもやっぱりこんな奴隷制度がまかり通っていい筈がない。

 近い将来、自分がドラゴニアへ行くことになったならその辺の状況も見て回る必要があるな。

 折角恵まれた力を持って転生したんだ…今度の人生は優しい世界を創るという我儘を通そうと思っている。

 例えどんな強力な力を持った存在と相対する事になっても…。


「お話の…ところ失礼します!!」


『どうしたのですか?そんなに慌てて…』


 侍女のエミリーが息を切らせながら俺達の所へ現れた。

 見るからにただ事ではない感じだ…まさか…。


「スー様の容態が…!!とにかくすぐに来てください!!」


 その報告にその場にいた全員の顔が瞬時に強張った。

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