表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集 冬花火

足りない部屋

作者: 春風 月葉

 私は何に怯えているのだろう。

 少し前まではこれが普通だったじゃないか。

 一人の部屋、ポツリと座る私は孤独を感じていた。

 ほんの半年前はこの部屋を狭く感じていたのに、今はとて広いように思えた。

 全部彼の所為だ。

 彼はいつの間にか私の心に居座って、だんだん大きな存在になって、ふっと幻のように消えてしまった。

 それまで彼がいた空間が抜け落ちてしまった。

 穴の空いた心を埋める術はない。

 溜め息を吐く度に、また心に穴が開き、部屋に二酸化炭素が増える。

 きっと私の孤独は癒えないのだろう。

 私は今、怯えている。

 怯える私を包み込んでくれる優しくて細いあの腕はもうない。

 私は今、泣いている。

 流れる涙を受け止めてくれる薄くて白いあの胸はもうない。

 私は今…。

 いや、彼はもういない。

 帰ってきてよと呟いた言葉も二酸化炭素に変わる。

 わかっているのに二人分の食事を用意して、二人分の布団を敷く。

 わかっているから布団に入る。

 見上げた天井には吐き出した感情の塊が見えた。

 気持ちが悪くなって窓を開け、空気を入れ替えた。

 古い空気が消え、新鮮な空気が入ってくる。

 部屋は相変わらず広いままだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ