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プロローグ 親方、植木鉢から女の子が!!

作者、今回が初めての男主人公σ(´ω`*)

完全に見切り発車ですが、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。


それではどうかのんびりお付き合い下さいませ♪


 定休日の昼前になってようやく兄弟子に先日もらい受けた古いフラスコと調剤器具一式を作業机に設置し終えた。お下がりとは言えさすがは大通りに面した一号店の兄弟子が使っていた器具達だ。


 使い込まれてはいても、今まで自分が使っていたものとは比べ物にならないくらい立派で使い勝手も良さそうな器具達を前に、明日からの作業効率の向上を考えれば自然と笑みがこぼれる。


 上機嫌でそれらを眺めていた僕は、今日まで机の上にあった自分が使っていた器具を不要品の木箱に納めようとして、やっぱりもう一度だけこの狭い工房兼店舗の中を見回した。


 というのも、さすがに今日まで自分の食い扶持を稼いでくれていた器具をそう易々と捨ててしまう気になれなかったからなのだが。


 けれどやっぱりどこを見回してもこの大きな木箱を押し込む隙間は無さそうだ。それにまぁ、昨日散々探して見つからなかった隙間が今朝になって勝手に出現する訳もないか……。


 諦めて勝手口から木箱を運び出そうと抱え上げた姿勢のまま背中で裏口のドアを押そうとした時だ。


 木箱の中身が偏って派手にバランスを崩した僕の肘が光取りように設けられた出窓の前に作り付けてある、薬剤用に採取して育てていた植物の植木鉢の一つにぶつかってしまった。


「え、うわ、拙い――あぁぁ!? パウラ!!」


 悲鳴に近い声を上げたものの両手が塞がっているのではどうすることも出来ず、ただただ植木鉢が工房の床に吸い込まれるように落下していくのを絶望的な気持ちで見ていた。


 腕の悪い僕はこと採取してきた植物の手入れだけは見習い時代から得意で、自分のようなヘボい腕の職人に採取されてしまった、気の毒な植物達に名前を付けて育てている。


 だから今落ちていくパウラもその中の大切な一鉢で……何もそれでなくても、と言いたくなるような特級指定を受けた危険植物だった。


 大変に貴重で薬効も高く、下手をすれば使用する職人の命をも奪い去る。それ故に極めて取り扱いに注意しなければならないその植物名は――地面から引き抜いた瞬間、自分の命を奪おうとする敵もろとも死のうと凄まじい悲鳴を上げる【マンドラゴラ】。またの名を【マンドレーク】という。


 即死を覚悟した僕がギュッと目をつぶるのとほぼ同時にテラコッタの鉢が粉々に砕け散る音が工房内に響き渡った。


 ――が。


 ……いくら待っても肝心の悲鳴が聞こえて来ない。


 それとも、もうパウラの悲鳴はすでに僕の鼓膜を破ってこの命を奪い去ってしまった後なのだろうか? 知るのも怖いが、自分の死を知らないでいるのも怖い。


 意を決して恐る恐る目蓋を持ち上げると、そこには見知らぬ小麦色の肌と黒に近い深緑の髪をした少女が座り込んでいた。しかも――何故か全裸で。


 思わず息を飲んで凍り付いた僕と目が合うと、驚いたようにこちらを見つめていた金色の瞳が嬉しそうに笑みの形に細められる。そうしてヨロヨロと生まれたての子鹿のように不器用に立ち上がった彼女の一糸纏わぬ姿をもろに見てしまった僕は、情けないことに手にしていた木箱と共に意識を手放してしまった……。


 派手な音を立てて木箱が床に落ちた音を聞きながら、ただこれで古い器具の置き場に困ることはないだろうと全く現状にそぐわない感想を抱く。


 完全に意識が闇に飲み込まれてしまう直前に、彼女が『マスター!?』と控え目な悲鳴を上げるのを聞いた気がする―――。

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