X 確からしいこと
X 確からしいこと
――朝食を何とか平らげて一休みしていると、ヤヨイがサーラと一緒に白馬に跨ってやってきた。ニッシとサーラは、ニッシの部屋で何やら歓談していて、俺とヤヨイは、ダイニングでホットミルクを飲みながら話している。
「えっ。それじゃあ、やっぱり、シワス叔父さんは、この世界にいるのね」
キサラギの話を聞いたヤヨイは、驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げた。
――シワスおじさんこと湊川シワスは、ヤヨイの母親の弟にあたる。昔からバックパック一つでフラフラとノープランの旅行に出かけてしまうところがあって、十年ほど前に三蔵法師よろしく西へ旅立ったまま、消息を絶っている。失踪当時は、大学生だったはずだ。
「どうも、そうらしい。そのフィアって人が、それらしき人物を見たって言うんだろう」
語尾を上げながらキサラギが言うと、ヤヨイは心許ない様子で応じる。
「うん。サーラへの手紙によると、そうなのよ。でも、直接会ってみなきゃ、確かなことは言えないわ」
「そうだよな。一つ、引っかかるところがあるもんな」
――目下の懸念材料というのは、他でもない。もう三十路になっているはずのおじさんが、手紙では二十歳そこそこのお兄さんと書かれていたことだ。
「私に面影が似てて、誠実で、人懐っこくて、話が面白い点は、間違い無いんだけどなぁ」
ヤヨイは、そう言いながら、マグカップに入れられたシナモンスティックを指でつまんでかき回す。
――このまま、こうして議論してても、推論が増えるだけで埒が明かない。ここはひとつ、何らかの行動を起こさなければ、現状は打開されないだろう。
*
――そのあと、サーラとニッシも交えて四人で話し合った結果、俺とヤヨイは、シワスと名乗る謎の人物のあとを追ってみることにしようと心を決めた。
「フゥム、なるほどな。すぐに、旅に必要なものを用意しよう。その目で、その心で、広い世界を見聞きしてきなさい」
「ありがとうございます」
キサラギが晴れやかな笑顔を浮かべながら深々と頭を下げると、男は嬉しそうに言う。
「護るものがある人間は、誰にも負けない。彼女のことを、ちゃんと支えてやれよ」
「はい」
キサラギは顔を上げると、男の目を真っ直ぐに見ながら、元気よく返事をした。
――何が待ってるか知らないけど、無性にワクワクしてきた。




