第2話
新しいファンタジー世界リーンヴェルで2回目の人生を謳歌する。
その支援は惜しまないと言ってくれた大魔王ルスダス。
その言葉の通り、私には様々なものが与えられた。
まず第一に、体。
「その体は女神がこの世に顕現するためにあつらえたものだ。前線に出ることも想定されている。滅多なことでは傷すら付かんだろう。また魔力適応も全属性に対して無制限だ。魔法は使いたいだけ使うがいい。しかしあまり悪徳に走る行為は遠慮してくれ。その銀の髪が女神と勇者に連なる者の証だと言うのは世界中の人間たちが知っている。これまでの勇者たちの遺した功績も在るのでな。顔を立ててやってくれ。」
銀色の髪は女神譲りの勇者の証らしい。
私は新しい体の長い髪を目の前に持ってくる。
なんだこのさら艶ヘアーは。
鏡も見せてもらったけど中性的でなんていうか、モテそう。
いや身体特徴的には女の子だし胸だって普通にあるけれども!
スレンダーで着痩せするタイプだし肌は白くて黙ってればミステリアスなイケメン勇者じゃないかな?
中身が残念な私ですけどねー!!
これは可愛い女の子男の子ハントが捗るのでは!?
そんなこと考えてたらルスダスに凄い顔だぞって優しくたしなめられたから大天使。
次。
聖剣ヴィドフニル。
「それは私が勇者であった時代に使っていたものだ。古い物だが女神の力と精霊主の力が宿っている、性能は悪くないはずだ。それはお前の意思の力で切れ味が変化する。岩をも切り裂きたいと思えば抵抗もなく斬れるだろう。反対に人を斬りたくないと思えば峰打ち等の殴打で済ませることができる。そしてその剣はお前自身の魔力と同化する。呼び出すのも仕舞うのもお前の意思だ。その手を離れてもな。」
淡く光を纏った白銀の両刃剣。
正に聖剣という見た目。
その剣は私が手に取ると一瞬強く光輝き、光の粒になって手の中から消えた。
それから現れろと念じてみると手の中に光の柱が。
…カッコイイにも程がない?
しかも手を動かすとついてくる!
ヤバイこれ楽しい!!
一通りテンション上がっていい加減剣の柄らしきものを掴み取ると光の柱は消え、そこには例の聖剣があった。
マジかー魔法もありの世界ってすごい。
夢が広がる。
そして最後に、アイテムボックス。
「これは容量を拡張してある。好きなものを好きなだけ入れるといい。それと僅かばかりだが私からの餞別も入っている、有効に使うがいい。お前ならば心配は要らんだろうが。」
さっきのテンション爆上げを微笑ましげに見守っていた大魔王様が完全に保護者なんですけど?
しゃべり方めっちゃ魔王なのに中身完全に大天使で保護者なんだけど威厳が伴ってない!
いや威厳はあるけど威圧感が仕事しない!
「色々ありがとう、大魔王様。」
「ルスダスで構わん。ああ、それと幾つか言っておくことがあったな。」
「言っておくこと?」
「うむ。人間の世界ではヒノメと名乗るがいい。人間たちは真名と呼ばれる己だけの名を家族以外に呼ばれると魂が交わると思っている。ナナミという名は伏せておけ。」
ほーん?
わかんないけどみんな苗字で呼び合うみたいな感じか。
「はーい。」
「それともう1つだ。アイテムボックスの中に私と連絡を取るための道具を入れておいた。何かあればいつでも使うがいい。」
圧倒的保護者。
アフターケアも万全か。
「では健闘を祈るぞ、ナナミ。実り多く生きよ。」
「うぃっす!」
がってん!
そう返事をしてガッツポーズして見せたらルスダスは笑って送り出してくれた。
やっぱり大天使って呼んでおこう。