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第26話


 私にはリーバと大天使が何を考えてるかなんてわからないけど。

 

 「いーんじゃないの?」

 

 リーバが謝る必要を特に感じない。

 だって誰かの手を借りたいから行動しただけで、私は何の被害も今のところ被っていないわけだし。

 そもそも助けてくれと言われて応じた末に何かの被害を受けたとしても、助けると決めたのは私自身だし被害の責任も私のものだ。

 まぁまだ助けるとも言ってないしどんな内容か聞いてすらいないわけだけど。

 

 「私はまだなんにも決めてないし、リーバだってルスダスのためを考えて悩んで決めたんでしょ?だったらちょっとくらい意に沿わないことしたっていいんじゃない?」

 

 あ、でも。

 

 「ルスダスにはちゃんと謝っておいた方がいいと思うよ。ルスダス怒らせるとたぶん星が崩壊する。星崩の大魔王だもん。こわぁ。」

 

 やばぁこわぁ。

 普段穏やかな人ほど怒ると怖いらしいし溜め込みタイプは爆発するからな。

 大天使が溜め込みタイプかはわからないけど大魔王怒らせたらいけないのは私でもわかるぞ。

 リーバは私に陛下は優しいから大丈夫だと笑ったけど、後に続くたぶんが不安しか煽らない。

 

 「話しに付き合ってくれてありがとな。そろそろ寝た方がいいぞ、見張りの時に眠くなる。」

 

 そう言ってリーバは焚き火に薪をくべた。

 私はそれに否と言うこともなく、アイテムボックスから毛布を取り出して被る。


 夜中から明け方近くまでの見張りが私の今夜の仕事だ。

 明け方近くからはロリーナが見張り役で起きる予定になっていて、お姫様とはいえ冒険者としての常識は体験してみるに越したことはない。


 私は仰向けに寝転んで星を眺めながら、夜営の度に現地と城を往復するにはどうすればいいかを見張りの時に考えることにしようと決めた。

 横になるとすぐに眠い。

 キャンプ気分の外出でもそれなりにいい運動になったのかな、と思いながら私は目を閉じた。

 

 

 

 少し高くなった太陽と、まだ朝独特の澄んだ空気が混ざる時間。

 私たちは街に戻る道を歩き出した。


 リーバが買ってきていた食材と、私のアイテムボックスに入っていた調理器具と調味料、ロリーナ2度目のお料理体験で出来上がった朝食は普通に美味しかった。

 食材やパンの固さは違えど、日本で言うところのベーコンエッグトーストを食べ、これにチーズでも乗せたらまた最高なのでは?と思った。

 あと目玉焼きは塩コショウにプラスして醤油で食べたかった。お米も欲しい。

 かなりのんき。


 そんな朝食を終えて、少ししかない荷物をみんなまとめてアイテムボックスに押し込んで、私たちは街に戻った。

 道中モンスターが飛び出してくることもなく。

 まぁ先日森の反対側で私がしこたまやっつけたばっかりだからなんていうかごめん。

 安穏と森を抜け、街道を歩く。

 

 「そういえば思い付いたんだけど、今度は夜になったら野宿しないで城に一回戻ろう。そのための手段を考えておいたから。」

 「そうなのですか?どうやって城に戻るのですか?」

 

 首を傾げるロリーナに私は新しい魔法を作ったことを伝えた。

 

 「ちょっと前に物を目印に移動の魔法を作ったんだけど、旅のポイントに戻るには不便だなって思ってね?もうこの際精霊に全自動でお任せする魔法にしてみた。」

 

 うん、ありがとう精霊様および精霊主様。

 御供物何がいいかな?やっぱり御酒とか?

 御神酒ならぬ御霊酒?ありそう。

 

 「城に戻るときは、我が身安らぐ居への門を開け、旅のポイントに戻るときは、我が軌跡の最果てへの門を開け。で、テレポート。朝方のうちに実験済みだからこれで問題なく城とポイントの往復が出来るようになったよ。」

 

 正直、城に戻るのに空白の転移陣使うのってどうなの?ってところまで考えた。

 この間真紅の転移陣使ったときは大天使に直行便だったことを考えると、どうもこの程度の距離で空白に登録してしまうのはもったいない気がして。

 旅をしてる間に遠くへ行けば登録しておくのも悪くはないのかもしれないけど、長くかかっても歩いて行ける距離である限りは魔道具に頼る必要はあんまり感じない。


 たぶん、魔道具って結構高価なんだろう。

 初めて使った水筒にしても、あの六角柱の魔石に見えたのはたぶん自然産出の魔晶石だったんだろうし。

 そう考えると転移陣に使われているあの光沢のある糸も結構な素材だろう。

 それらを人間界で惜しみ無く使うことには多少の引け目も感じる。


 どういう意図かはわからないけど魔界の技術が人間界に流出することは大天使や魔族にとってあまり良いことではないみたいだし、理由は後で聞きに行くとしてもそれが私の納得の範囲だった場合においそれと使ってきたことを後悔するかもしれない。

 大天使の恩恵を盛大に使うのは少し様子を見た方がいいと判断した。

 ゲームバランスならぬ人生バランス的にも。

 まぁ、手遅れ感は否めないけど…。

 

 「ヒノメ様は本当になんでもできてしまうのですね…。魔法を作るなんて初めて聞きました。」

 「夜営の度に布団で寝るだけでもおかしいのに城に戻るとか非常識ってレベルじゃないな!」

 

 うん、手遅れ感は否めないけど。

 大事なことなので2回言いましたよヒノメさんは。

 そんな雑談をしてる内に街に着いて、門番の兵に冒険者のギルドカードを提示して通してもらい、ギルドで依頼書をまとめて完了にしてもらった。

 

 「おめでとうございます、お二人とも。Dランクに昇格となります。」

 

 新米ちゃんがにっこり笑顔で私たちにギルドカードを返してくれた。

 そこにはEの文字の代わりにDの文字が刻まれ、木製だったものが銅板になっていた。

 ランクが上がっていくと素材も変わるらしい。


 ちなみにCランクまでが銅板でBランクが鉄、Aランクが金で出来ているらしい。

 Sランクはなんと虹色の光沢を放つ魔銀、ミスリルで出来ているそうなのでリーバのカードを盗み見た。

 

 「…ミスリルってそんなに魔力こもってるの?」

 

 疑問に思ったことを問いかける。

 古金貨よりよっぽど内包魔力が高いように見えたんだけど。

 それに虹色だけじゃなくて、なんか小さい粒を散りばめたみたいにキラキラしてた。

 カッコイイかよ。

 

 「ん?あー、えっとな。オレのは少し加工してあるんだ、セントリカオでも使いやすいように。ヒノメもSランクカードになったら陛下に頼んでみるといいぞ、古金貨より使いやすい。」

 「………へー!」

 

 なんか聞き慣れない単語が出てきたけど大天使が出てきたからたぶん今話しちゃいけないやつだな、それ。

 私は誤魔化すように語気を強めに相槌を打った。

 ロリーナと新米ちゃんが首を傾げてたけど、私の強めの押し流しに流されてくれた。

 いい子たちだ本当に。

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