第25話
明けましておめでとうございます。
お待たせいたしました、ストック分更新再開となります。
更新日は毎週土曜0時です。
パチンと焚き火に放り込まれた枯れ木が爆ぜる。
周囲は既に夜。
森の中の少し開けた野営場所で火を囲み、野宿の心得を教わった。
依頼もこなし終え、あとは明日の朝に街に戻って依頼完了を報告するだけだ。
まさか薬草の採集とウィードの討伐が一度で終わるのは予想外だった。
ウィードというモンスターは私が最初に森で出会った動く雑草みたいなモンスターで、胴体部分から生えている草がなんと薬草だった。
リーバはその部分をうさぎの耳みたいに掴んで連れてくると私たちに指差し講義し、さっくり解体した。
さすがのSランク。
基本、モンスターは討伐してしまう前に採集可能な部位を切り落としてから倒すものだと教わった。
もちろん余裕がある場合に限るし、余裕がないほどの相手の場合、無理に戦闘中に切り落とさなくても倒してから光の粒になるまでには時間がある。
採集ならその間にすればいい。
モンスターを倒してから光の粒になるまでの時間の差異は身の内に内包している魔力量に比例して余裕ができる。
倒した後に出る魔石の大きさについても同じだ。
魔力量が少なければ倒してから光の粒になるまでが速く、落とす魔石も小さいし戦ってもそれほど強くはない。
逆に、魔力量が多ければ光の粒になるまでが遅く、魔石も大きいし戦えば怪我人や死者が出るほど。
しかしその分実入りもいいため、多少の無理はする者も多い。
「まあオレやヒノメにはあんまり関係ないけどな!リーナは気を付けないとすぐ死ぬぞ!」
それは本人が起きてるときに言ってあげた方がいいと思う。
言われた当のロリーナは初めての冒険で疲れたのか、アイテムボックスから出したお布団でもう寝ている。
リーバには非常識だな、お前!と言って笑われた。
本当言うと今後はお城に帰ってあげたい。
転送陣で登録しておけば簡単に帰れるし。
ただ、冒険の途中だったポイントまでどう戻ってくるかを考えておかなくては。
前みたいに目印置いてテレポートでもいいんだけど、そうすると目印が動かないように何かしらの細工が必要になる。
いちいち地面に埋めるのもな…犬かな…?
「ところでリーバってなんでそんな強いの?髪の色もあんまり見ない色だよね?」
リーバは年の頃はまだ20代に見える。
いってても30代だろう。
その若さで国も認める功績を上げ、普通に強くてSランク冒険者。
才能だと言えばもちろんそれまでだけれど。
髪の色も、レーヴちゃんの葡萄色とリーバのゴールデンわんこカラー以外は普通の茶髪や一般的な色が多い。
例えばだけど、貴族出身とかだと髪の色が違う、とか。
それこそ魔力量の違いで髪の色まで特異になる、とか。
いろんな憶測を立てていた頭は、リーバのどストレートな回答に一旦停止した。
「それはオレが魔族だからだな!」
うん、待って。
それは言っていいやつなの?
魔族ってこんなにも普通に人間と一緒に暮らしているものなの?
いやもしかするとこの世界は人間と魔族が手を取り合って生活しているのかもしれないし、魔族と人間が仲悪いっていう固定観念は捨てるんだ。
先入観に囚われてはいけない。
「へぇ~、魔族ってこんなに身近にいるものなんだね。」
「いや?人間の国に魔族が紛れてるなんて普通は人間に公表しないし紛れてる魔族は一人残らず工作員だ。」
おーいー!
なんでそういう大事なこと普通に言っちゃうんだよこの子ー!?
「あ、でもこの国だと魔族には比較的寛容だからバレてもそんなに苦労しないぞ。昔バレたことがあるけどちょっと怖がられただけで済んだからな!」
まぁその後里長にめちゃくちゃ叱られて王都勤務にされたけどな!と続いたので能天気なだけだと思う。
「魔族が人間に紛れて工作員だなんて、何の目的で?」
なんとなく気になったので聞いてみる。
いやこれ聞いちゃダメな奴かもしれないんだけど。
でもまぁ魔族って言うんだから魔族の王である大天使の管轄だろうし、ダメな話なら箝口令くらい敷いてるだろう。
…リーバがちゃんと黙ってるかはわかんないけど。
あ!それにもしかしてリーバの言ってた陛下から聞いてるの陛下って国王様じゃなくて大天使のことか!?
だから最初からロリーナのことは置いといて私に話しかけてきたのか!?
え?てことは何?リーバは最初から魔族であることをオープンにして話しかけてきてたの?人間たちの真ん中で?
工作員の人選大丈夫…?
「工作員の主な目的は情報操作だな。人間が見つけちゃいけないものや書物になって歴史に残るとまずいものの始末をするのが俺たちの仕事だ。」
「……例えばギルドの資料とか、国立図書館の虫食いの本とか?」
「ああ。この王都だけでも何人も魔族がいるし、教会にもいる。この国だけじゃない、人間界の色んなところに俺たちは派遣されて、人間が発展しないよう監視して誘導してる。千年間ずっとな。」
「なんで?」
人間が発展しないように。
魔界はたぶん、ここよりもずっと発展している。
アイテムボックスや魔晶石なんかをホイホイくれちゃうんだから相当だ。
物が豊かで、医学も進歩してる。
それなのに、人間にはその恩恵を与えようとはしない。
そこが疑問だった。
だって大天使は私にたくさんの物や知識を与えて人間界に放った。
必然的に私は見ず知らずの土地でそれに頼って生きるし、人間たちが興味を持って研究しようとするかもしれない。
情報を操作しているのに、わざわざそんな風に風穴を開けたりするだろうか?
私が理解できずに首を傾げると、リーバは困った顔になった。
「あー、えっとな…そこまでは話しちゃいけないって言われてるんだ。陛下はヒノメを巻き込みたくないんだと思うぞ。だから気になるんなら陛下に直接聞いてくれ。オレはそんなに口が固くないから、ポロッと喋ったりしたら陛下を困らせる。ごめんな。」
口が固くない自覚があったのか。
そもそもここまで話しておいてその目的を大天使に聞かないとか無理がある。
「じゃあリーバはなんで私にその話をしたの?」
聞かれたから答えた。
なんて答えが返ってきそうだけど、それならそれでいい。
私のは普通の疑問と、ほんの少しの、なんだろうか。
疑いとまでは言いたくないけど。
「オレたちは陛下をすごく慕ってる。陛下がオレたちのために、この世界のためにどんなに苦労して体を張って、心を砕いてるか、オレたち魔族はみんなが知ってる。だから意見も別れてるけど、オレはヒノメに陛下の助けになって欲しいと思ったんだ。」
こんなの自分勝手だけどな、と言ってリーバは眉を下げて謝った。




