第24話
口々にやっぱり第1王女のリーナ姫じゃねーかとか病気じゃなかったか?とか怖ぇ…とか悪魔かよ…とかおいコラ後半私のことか?
そんな囁き声が聞こえる中、レトリーバは相変わらず笑ったまま悪びれもせず謝ってきた。
「あ、これ言っちゃダメなんだったな。ははは、すまん!」
一体何処のウフフ、オッケー☆だ。
全然オッケーじゃない。
これはギルド長が顔覆いたいのもわかる。
「ところで真名を名乗られた私はどうしたらいいの?」
「お前さんが構わねぇなら呼んでやりゃあいい……と、言いたいところだが…。」
横からロリーナが小さく頬を膨らませて、それでも文句は言うまいと我慢した様子で私の腕をぎゅっと抱き締める。
ギルド長もそれを見て言葉を濁したようだった。
うーん、ロリーナを真名で呼んでおいて他の人も真名で呼ぶってどうなの?
重婚とかそういうのになっちゃう感じなの?
わからん…。
まぁいいや、リーバの方が短くて呼びやすい。
「それじゃあこれから先達をよろしくね、リーバ。」
「ああ!よろしくな!」
私が差し出した手をリーバは何の躊躇いもなく握り返してにっかり笑った。
色々なことをあんまり深く考えてなさそう。
いいね、私と同類だ!
それから私たちは受付に行って、出来立てのギルドカードとお釣りを受け取った。
レーヴちゃんはもう事務所に引っ込んでて、新米ちゃんが対応してくれた。
お釣りは少しだけポケットに入れて、残りはアイテムボックスにまとめてしまう。
ギルドカードは表に大きくEと書かれ、冒険者ギルドのエンブレム、私の名前。
裏には討伐数と依頼を受けた数、ギルドポイント。
今のところは全てゼロだ。
討伐数はギルドで魔石を納品したり売ったりすると加算されていくらしい。
ちなみにギルドポイントは討伐モンスターの魔石の大きさと依頼達成数で算出される。
小さい魔石なら2ポイント、中くらいで5ポイント、大きいので10ポイント。
依頼達成1件につき20ポイント。
依頼達成の方がポイントが高いのは無闇に魔物を狩るより順当に依頼をこなした方がお得だと思わせるためだ。
何故そういう制度になったのか、ギルドの方では昔の資料がないので詳しくはわからないそうだが、魔物を狩りすぎると生態系が崩れ、スタンピードといって魔物が群れて農村や町を襲うという口伝に基づいているとかなんとか。
そんな大事なことなんで資料残ってないのか謎。
王立図書館にも教会の資料室にも昔の資料は虫食いが多いのだとはロリーナの言。
図書館や資料室まであるなら歴史的な資料についてぞんざいに扱ってるわけではないだろうに。
もしかして紙喰い虫とか文字喰い虫とか多いのかもしれないなぁと思いながらリーバが持ってきた依頼書をまとめて受注した。
Eランクから受けられるギルドの常駐依頼、手紙の配達。
同じくEランクからの常駐依頼、薬草の採集。
続いてEランクからの常駐依頼、ウィードを5体、討伐。
Eランク限定依頼、鍛冶屋や道具屋などの商店を巡る町内スタンプラリー。
………チュートリアルか。
冒険者の生存率を上げるためとはいえかなりご親切にありがとうございます!
そういうわけで私たちは早速街へ繰り出した。
「どの依頼からこなしましょうか?」
「うーん、とりあえず普通なら装備を整えるためにも街中の依頼からこなしていくのが順当だと思うけど。」
「ではスタンプラリーから始めますか?」
「効率を考えたら手紙の配達も一緒にやった方がいい。ほとんどがギルドからの依頼完了の報せだから行くところは似たり寄ったりだしな!」
リーバの助言を受けて、私がスタンプラリーの依頼書、ロリーナが手紙配達の依頼書をそれぞれ広げ、付き合わせながら街を回ることになった。
と言っても私は字が読めないので、主にマークを頼りに地図から探すのが仕事だ。
それに合わせてロリーナが訪れた地域周辺の配達先を洗い出す。
こうなると依頼書も読めない私は早く文字を覚えたいね。
そうして私たちは依頼をこなし始めた。
――ヴァリエント王国、王都イグリル。
その昔、王都は今の教会本山のある場所にあった。
しかし千年前、時の賢王イグリル=ロワ=ヴァリエントがこの地に遷都したという。
理由は不明。
そして当時の宗教を元に教会本山を作り上げ、その初代法王はイグリル王の愛娘であるカトリオーナが務めた。
以来、法王という大役は代々の王の娘に受け継がれてきた。
「私の妹も今は教会で法王になる修行をして居るんですよ。」
ロリーナの妹はまだ12歳だそうだけれど、7歳から婚約したり社交界に出席するようになるこの世界では普通のことらしい。
妹はロリーナ想いで、いつも教会から写本を送ってくれるのだそうだ。
私は一人っ子なので大変微笑ましい。
そんな王都は現在、大まかに3つの地域に別れている。
王城、貴族街、平民街の3つだ。
上から地図などで見ると本来、王都全体は大体三角形のような形をしていて、頂点に王城があり上半分が貴族街、下半分が平民街のようになっている。
本来、と言ったのは今は建物の増設などが進み三角形を維持できなくなって来ているからだ。
貴族街は貴族たちの別宅地の様相であるため増設が行われることはほとんどないが、平民街は違う。
人が増え、減り、失業によるスラムの拡大、工房や商家の隆盛による増築、新築。
千年前の城壁を取り壊し、広がる街に合わせて新しく作り直したことも歴史上少なくない。
今回の依頼で回るのは平民街のみ。
貴族街の人たちへの依頼完了報告などの手紙配達は指名依頼を受けた冒険者が直接行くのだそう。
まぁ、平民の冒険者をおいそれと貴族街に入れたくはないだろう。
信用できる馴染みの面子というのは大切だ。
平民街にはいくつかの地区があり、商業区、工業区、居住区、その他雑区。
大通りに商業区、工業区、雑区が面していて、居住区は雑区の奥にあり、奥へ行くほどスラムになっていく。
道の幅は広めに取られていて、大通りなら馬車2台に加え危なくない距離を置いて人が通れるほど。
普通の通りなら人が3人までなら余裕で通れる広さ。
そして綺麗に敷き詰められた石畳。
しかしそれも途中まで。
千年の間に増築された辺りからは入り組んだ路地や、それを無くそうとしたのか詰めるように建てられた建物で狭苦しく、当時の区画整理技術は継承されていない。
千年前の方が技術的に上ってどういうことなんだろうね?
資料はほとんど残っていないために検証も難しいのだそうだ。
どこに行ってもこんな話があるもんだなぁ。
毎度閲覧ありがとうございます。
ストックがなくなったので今回の投稿でしばらく更新が停滞します。
再開まで気長にお待ちいただければ幸いです。




