表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/32

第22話


 ギルド長のウインさんに通されたのは2階の会議室だった。

 食堂の女将さんから料理が届けられ、私たちは昼食を取りながら話を聞く。

 ウインさんはもうお昼食べたらしい。

 ナポリタンうまい。

 

 「お前さんらのことは城から聞いてる。お姫さんのことは特によく見ておいてくれと言われてるからな、あまり騒ぎは起こさないでくれると有り難いんだが…。」

 

 そう言いながらギルド長は私をじとっとした目で見る。

 無理だろうなって顔か?

 わかる。

 

 「んっく、そもそも髪が勇者な時点でなんか色々巻き込まれそうだし頼まれそうじゃん?あと私楽しいこと好きだから楽しそうなことあったらすぐやりそう。」

 

 騒ぎにならないとかどう足掻いても無理だよね。

 ギルド長は長く盛大な溜め息を吐いた。

 これに関しては諦めてくれると嬉しい。

 私も諦めてる。

 だって大天使の御加護で既になんか色々騒がれてるし諦めるよね。

 宝石龍の鱗といい魔晶石の杖といい古金貨といい。

 まぁ宝石龍の鱗は私のうっかりもあるけど。

 

 「冒険者ギルドなんて荒くれ者の集まりによくお姫さんまで引っ張ってきたな。勇者ギルドに登録した方がまだ礼儀は弁えてるだろうよ。あっちはお貴族様も登録してるからな。」

 「お貴族様なのに冒険すんの?」

 

 予想してなかったことを言われて目を瞬く。

 だってお貴族様にはお貴族様の仕事があるでしょ?ないの?

 

 「貴族にとっても勇者ギルドに登録出来るってのはステータスなんだろうよ。なんせ向こうはギルド長が国王陛下だからな。」

 

 その伝でお前さんらも勇者ギルドに登録するもんだと思ってたんだが…。なんて言いながら私たちを呆れた目で見てくるギルド長に、ロリーナは僅かに申し訳なさそうに眉を下げた。

 おいこらやめてうちのアイドルを苛めないで下さい。

 

 「本物の勇者であるヒノメ様にその様な身分保証などあってもなくても同じではないかと思ったのです。ヒノメ様が勇者であることはこのお美しい見目ですぐにわかりますから。でしたらヒノメ様には御好きなように活躍していただきたいと思いまして……選ばれたギルドの負担についてはヒノメ様への援助の一環としてきちんとお支払いをとお父様はお考えです。」

 

 えっ、あの国王様にそんな頭が?

 いやそれは流石に言い過ぎか?

 ごめん。

 

 「いやいやいや、私が勝手に選んだんだしお世話になるんだから迷惑料なら私が払うべきだよね?ロリーナの実家の援助とかいくらお金持ちでも他人である私のために出していいお金じゃないよね?民の血税だよ!」

 「ですが、ヒノメ様を全面的に支援することは王族の総意で…。」

 「王族の総意!?突然現れたどこの馬の骨とも知らない輩だよ!?もうちょっと考えて!」

 「私を盗賊から救い、私の不治の病を治してくださったのです。我が国のためにあのような貴重な宝まで納めてくださいました。父も母も伯母様もお祖父様も是非ヒノメ様を支援すべきだと申しておりました。」

 

 なるほど、ロリーナが愛されてることは大変よくわかった。

 でもそれとこれとは別です!

 

 「ロリーナ、心配しなくても私には大天使の援助があるし、それでなくてもこの国の常識さえあれば故郷ではそろそろ自立する歳だからそんな国を挙げての援助なんてむしろ困るよ。民の税で援助される以上私にはこの国の民のために働く義務が発生する。でも私は正直全く知らない誰かのために動くほど正義感も強くないし、完全な悪ばかりじゃない状況で多数の意見に沿えるような行動が必ず取れるとは思わない。私には私の倫理があるからね。だから私が不評を買い、連鎖的に国王様や王族の支持率が低下しても責任を取れない。だから援助はロリーナに関することだけ、がんばっても個人的な範囲でのみにして欲しい。」

 

 って大事な話をしたけどロリーナの向こうの壁の装飾品の鉄材に映った自分を見て台無しだなって思った。

 やべー口の周りナポリタンソースまみれだよ。

 子供か?

 私はアイテムボックスからティッシュを取り出して口の周りを拭いた。

 ごちそうさまでした!!

 

 「ヒノメ様が遠慮だけでなくそこまで考えていらっしゃるのなら、私からも父や祖父に言ってみます。私は一番にヒノメ様のお役に立ちたいですから。」

 

 そう言ってロリーナは私にニッコリと微笑んだ。

 相変わらず天使。

 私はロリーナの頭を撫でておいた。

 この手触りよ。

 

 「というわけでギルドへの迷惑料は私が払います。とりま古金貨1枚で足りる?もっといる?」

 

 アイテムボックスならぬお財布ボックスから古金貨を2枚ほどギルド長の前に置いたらギルド長はまた頭が痛そうに眉間を押さえた。

 

 「……言いたいことは色々とあるが、迷惑料はこんなに要らん。2人分で金貨2枚を後で釣りから引いておく。」

 「金貨でいいの?」

 「あのな、普通は白金貨ですら個人で何枚も持ち歩くわけがねぇんだ。お前さんの金銭感覚がどうなってるのか知らんが国の天辺が雁首揃えたって古金貨の取引なんかやらねぇだろうよ。大体古金貨ってのは国の研究機関や国庫に納められて一般人の目に触れることはほとんどねぇんだぞ。そもそも平民の平均月収はだな……!」

 

 滔々とお説教が始まった。

 要約?するとこうだ。

 この国の平民の平均月収はおよそ銀貨8枚ほど。

 手練れの冒険者や腕利きの職人、その道の一流でも金貨1枚。

 農村などの田舎に行けば銀貨4,5枚にすらなるという。

 消費税や固定資産税などはない代わりに住民税が多額であり、年間で1人当たり金貨3枚。

 年収約金貨10枚の内の3分の1が税で取られるって正に血税じゃん?

 従って平民の家庭は共働きは当たり前、子供も7歳の正式な住民登録と共に学校へ通い始め、13歳で卒業後将来の職を選び見習いとして修行に入り、15歳の成人で課税の対象になる。

 そのため普段子供たちが目にするのは鉄銭。見習いになってようやく銅貨と銀貨を目にするようになり大人になってやっと自分で扱うようになるらしい。

 大店の商人や役人、工房長などの上位職であれば金貨を扱うことも増えてくるとか。

 また貴族にとっても白金貨というものはその家の財産の一部として扱われ、余程の取引でなければ使うことはないという。

 ロリーナの補足によると上位貴族でも日常的に使うのは金貨20枚前後であり、白金貨1枚の使いどころとしては家を買い家具を揃え使用人を雇って生活必需品を揃える辺りまでしてやっと白金貨に相当するという。

 それだと日本の貨幣価値として白金貨って1,000万円とかその辺になってくると思うんだけど私もう考えることやめたい。

 つまりだ。

 日本人の貨幣価値と物価に沿って考えるならば。

 鉄銭が1枚で10円、鉄銭100枚が銅貨1枚で1,000円、銅貨10枚が銀貨1枚で1万円、銀貨10枚が金貨1枚で10万円、金貨100枚が白金貨1枚で1,000万円、白金貨100枚が古金貨1枚で10億円となる。

 ん゛んんんんんん!!!

 よし、考えるのやめよう。

 私は金貨までしか使わないと心に決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ