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第13話


 ロリーナを部屋のベッドに座らせ、国王様と二人でイスを持ってきて座る。

 そのドレスのままお布団入ったらシワになってしまうもんね。

 お気に入りだったらかわいそうなので。

 部屋の前で護衛騎士のティカロが番をしてくれているので侵入者対策は万全。

 ラインバードは早速仕事振られてたからがんばって。

 

 「それでロリーナの病気の事なんだけど、大天使に聞いてきた。」

 「大天使様、というのは…ヒノメ様を御導きくださっている方ですよね?」

 

 あ、そういえば全然説明せずに大天使大天使言ってたな。

 お父さんを気遣って改めて大天使の紹介を求めるロリーナが大天使。

 むしろ聖女。

 

 「そうそう、私に色々くれたり肩入れしてくれてる大魔…エフン、大天使。その人に聞いてきたらね、ロリーナの病気は過小魔力腺凝固症って言うんだって。」

 

 主に魔力の多い人がなる病気で魔力腺と呼ばれる器官が固まってしまうことで体内に魔力だまりができるという病気。

 そう教えるとロリーナは自分の体を見下ろして手を見たり腕をもみもみしている。

 はい可愛い。

 対称的に国王様は勢いよく私の両肩を掴んできた。

 近いな!

 

 「娘は治るのか!?治療法もあるのだろう!?」

 「もちろんそこも抜かりなく聞いてきましたけどちょっと離れてもらっていいですかね?」

 「お父様、ヒノメ様が困ってらっしゃいます。」

 

 離れて、離れて。

 おじさまは好みだけどあんまりキャラの濃い人はちょっと。

 あと今ロリーナに夢中なのでお父様はご遠慮かな。

 父娘の修羅場とか勘弁。

 ロリーナと2人で国王様を席に押し戻す。

 どうどう。

 

 「というわけでこれが治療鍵になります。」

 

 懐から包みを取り出しロリーナに差し出す。

 なんでアイテムボックスに入れなかったかって?

 大天使の懐から取り出す所作が格好よかったからだよ!

 やってみたかったんだよ!!

 内ポケットは憧れ。

 

 「なんか大天使が言うには新薬で即効性があるから使うときは私が立ち会って使いなさいって。昔の民間療法的なやり方も聞いてきたけどどうする?私としては新薬がおすすめ。」

 

 民間療法はだって私が毎回施術してあげられるかわかんないし。

 他の人に伝えると伝聞効果で正しく治療されないかもだし。

 あと大天使はこの治療について私にあっさり情報くれたけど人間の皆さんに渡していい情報かどうか謎。

 だから私には常識的な情報が少なすぎだっつーの。

 図書室にこもりたい。

 

 「……あの、私、治るのでしょうか…?」

 「え?うん。」

 

 呆然としたロリーナの言葉に反射的に返す。

 それでも現実味の無さそうな表情をするロリーナを見て、私の理解が少し追いついた。

 あと少ししか生きられませんよ!って言われ続けてきた病気が今この場でいきなり治っちゃうぜ!って言われてるんだもんなぁ。

 そりゃあ実感わかないよなぁ。

 

 「ロリーナ、あのね。」

 

 私はロリーナの手を優しく握る。

 ロリーナの手は小さくて柔らかくて細かった。

 華奢な体でよく頑張ってきたと思う。

 

 「私、ロリーナがここで死んじゃうのはすごくもったいないと思った。たぶん女神もそう思ったんじゃないかな?」

 「…ヒノメ様…。」

 「ロリーナはすごく可愛くて優しくて、まだまだ経験して欲しいことがたくさんあるんだ。たくさん本を読んで頭良くなったり、魔法思いっきり使って気持ち良くなったり、恋愛結婚もして欲しいし、大人になったロリーナも見てみたい。」

 

 ロリーナの目からポタポタと涙が溢れた。

 ほとんどが今までのロリーナには出来なかったことだ。

 野盗に襲われたとき、魔法を思いっきり使ってみんなを助けたい気持ちだってあっただろう。

 恋愛結婚なんて王女であり病気を持つロリーナには憧れたって出来ないことで、残された時間じゃあ大人になんてなることもできない。

 あれもこれも諦めて、諦めきれなくて苦しんで。

 青い空色の瞳から溢れる涙は透明で綺麗だった。

 好きだなぁと思ったけど、きっと本人は泣いちゃって恥ずかしいと思うから私の手で拭い取る。

 

 「私、ロリーナがすごく好きになったよ。だからロリーナ、私からの幸運の押し売りを受け取ってくれる?そしてたくさん夢を叶えて、幸せな気持ちで笑って見せて欲しい。」

 

 これは私のわがままだ。

 好きになった大切な友達を見捨てられない。

 生きて幸せになって私に見せて欲しい。

 だから死なせない。

 人を助ける理由なんてそんなもんでいい。

 彼女には権利がある。

 アンラッキーでラッキーな勇者(わたし)の手を握ったんだから。

 ロリーナは何度も頷いて、私に言う。

 

 「わたし、生きたいです…っ!」

 「うん。」

 

 私は包みを開いて、透明な虹色の治療鍵を手に取った。

 これが純粋な魔力の塊だというのはすぐにわかった。

 ふんわりと暖かい。

 私の体質と同じように、その物周りに魔力を湛えているんだろう。

 私はロリーナに一声かけて、その胸にそっと鍵を差し込んだ。

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