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第11話

 

 メディに案内されたのは大きな扉の前だった。

 どうやらここが謁見の間らしい。

 中からは特に話し声は聞こえないけれど、魔力を感知すれば確かにたくさんの人がいる様子。

 まぁ勇者が出たって言えばそんなもんなのかもしれない。

 あ、この気配ロリーナっぽい。

 

 「勇者様、扉が開きましたら中へお進みください。」

 

 そう言ってメディは私を扉の正面の立ち位置に促すと私の後ろに控えた。

 本当に良く出来たメイドさんだと思う。

 思わず綺麗に纏めた薄緑色の髪を崩さないようにそっと撫でた。

 メディは心底驚いた様子で私を見上げて凝視。

 しまった、嫌だったかもしれない。

 女の子が頭を撫でられて嬉しいのは心を開いた親しい相手だけだ!

 そう思って咄嗟に謝ろうとしたけど、私より先に謁見の扉が口を開いた。

 バッドタイミング!

 

 「勇者様、どうぞ陛下の前へお進みください。」

 

 中から扉を開けた番兵の人が私に声をかけて促す。

 メディは既にいつものクールさで後ろに控えている。

 あまり待たせるのも騒ぎの種だろうから、私は仕方なく赤い絨毯の上を歩いた。

 ピッタリ15歩。

 よく目算で私の歩幅から歩数を割り出したなとラインバードの優秀さに心の中で拍手する。

 当のラインバードは遅刻したくせに澄ました顔で自分の立ち位置にたった今到着したところだった。

 目が合って少し微笑まれる。

 なんか腹立ったので知らん振りしといた。

 

 「勇者よ。」

 

 壇上から低くて威厳のある男性の声。

 しまった無視した感じになったかな。

 そう思って見上げたら、金色の髭を蓄えたまだ30代前半くらいの国王が玉座から立ち上がって私を見下ろしていた。

 ロリーナも周りの人もぎょっとしている。

 え?これなんかめっちゃ怒らせたやつ?

 国王は私たちの戸惑いも意に介さず、縁にふわふわのファーがついた赤い外套を翻して私の目の前まで降りてきた。

 え?うん。

 おう?

 

 「娘を賊から助け出してくれたこと、心より感謝申し上げる。」

 

 そう言って国王様はその場に跪き、深く頭を下げた。

 周囲がどよめいた。

 流石にこの展開は予想してなかったな!?

 えーと、えーっと!

 とりあえず私もその場に正座して頭を下げた。

 

 「いえいえこちらこそ馬車で拾っていただいて。娘さんとは仲良くさせていただいております。」

 

 いやどうもどうも。

 なんだこれサラリーマンの名刺交換か何かか?

 国王は顔を上げて私の座り方を真似してきた。

 西洋文化的にはそこ地べただけどいいんですか。

 

 「顔を上げていただきたい。私が感謝こそすれ貴方が頭を下げる必要はありますまい。」

 「えっ、いやぁこれが故郷式と言いますか。国王様に跪かれるとは思ってなかったのでせめて対等でお願いしたいと言いますか。」

 

 咄嗟のこと過ぎて物言いがふわふわする~。

 やばーい。

 いやいつものことだわ。

 

 「私と対等などと。その魔銀の様に輝く白銀の御髪を見れば、貴方がどれほど女神クレアネージュに近しい者か推し量れましょう。私など一国の王に過ぎぬ身…、我が国の者が無礼を働かなかったか心配です。」

 

 そう言って国王はチラと家臣の人たちを見て、家臣の人たちは慌ててその場に跪いた。

 いややめて何これ。

 全員石畳の床の上で跪いてとりあえず立ちません?

 膝痛い硬い。

 国王はそれを見て少しだけ眉をしかめた。

 

 「我が国は私の代で建国から1500年が経とうとしておりますが、勇者が現れたのは今から遥か1000年以上も前の事です。その間に人心からは信仰が薄れ、勇者を国益に利用しようなどと考える者もいる始末です。」

 「はぁ…大変ですねぇ。」

 「嘆かわしいことですが、これも私に求心力が足りない不明が招いたこと。誠に申し訳なく…。」

 

 国王は肩を落としながら愚痴を溢し始めた。

 それはもちろん聞いて差し上げたいんだけど家臣の前で大丈夫?

 大丈夫じゃないよね?

 

 「えー、まぁそれはほら、私もここの常識とか全然知らないのでお互い無礼講?と言うことで。ここで硬い床に座ったままというのもなんですし。国王様もほら、ふわふわ椅子に戻っていただいて。私も立ちますので。」

 

 というか立たせてくださいお願いします。

 足が痛い。

 私がさぁさぁと手を差し伸べて立たせて玉座に向かわせると国王様はなんとか戻ってくれた。

 やれやれ全く。

 思わずロリーナを見るとロリーナは事態の収拾がついて安心した様子だった。

 少し顔色良くないけど大丈夫かな?

 静養から帰ってきていきなりの公務は体に悪いのでは?

 早く終わらせてあげたい。

 

 「オホン。それで、勇者殿。貴方が我が国へ参られた理由ですが…。」

 

 理由は特にないんだけど。

 拾ってもらっただけなので。

 

 「案じられますな。仔細は女神クレアネージュに伺っております。実は先日私の夢枕に女神がお立ちになられ、当時は夢の事と誰にも言わずにいたのですが今日貴方に会って確信致しました。貴方には我々から惜しみ無い援助を…。」

 

 私はさっと手を上げて国王様の言葉にストップをかけた。

 いや、タイミングが悪いというかなんと言うか。

 女神ルートだと明らか私じゃなくてそれ…。

 

 「すみませんが、多分それ私じゃないです。」

 

 国王様が瞬きする。

 私はンンンンと唸りながら頭を抱えた。

 私がタイミング悪いって言うかあいつの間の悪さかもしれない。

 要領はいいくせにリアルラックが足りないんだよなあ!

 今すぐどこかで思いっきり躓いていい。

 私が許す。

 

 「何から話すか迷うんですが、なんやかんやあって女神は私の幼馴染みを代表に選びまして。」

 「なんやかんやとは…?」

 「大分複雑怪奇なので省きますすみません。ともかく女神が国王様に身柄を預けたのは恐らく黒髪黒目のツクヤという名の男の事でしょう。」

 「では勇者殿は偶然通りかかり我が娘を助けてくださったと?」

 「ええ、まぁそうなりますね。私には既に保護者がおりますので。」

 

 チート大天使という名の大魔王が居ますので。

 っていうか女神もあいつをこの国付近に落としたの?

 あいつ大丈夫?賊にやられたりしないだろうな?

 まぁ一応剣道はやってたから平気とは思うけど大丈夫かよ…。

 女神からの祝福どの程度貰ってんのかなぁ。

 そんなことを考えていたら国王様は青ざめて顔を覆っていた。

 両手で。

 王様にしては結構メンタル細やかだね。

 これが求心力の無さってやつか…!

 ルスダスって優しく見えて意外とそういう肝は座ってるんだな。

 器の大きさを感じるぜ。

 

 「まぁ、あの、えーと、娘さんがご無事でよかったですね!国王様泣き出さないで貰っていいですかね!?」

 「ロリーナぁ!病より早くこの不出来な父を置いていなくならないでくれぇ!!」

 「お、お父様…!」

 

 ほらぁロリーナが困ってるでしょお!?

 お父さんやめてあげて!!

 恥ずかしそうに顔覆って赤くなるロリーナは360点満点ですけど!!!

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