第10話
朝、メディのモーニングコールで起床した私は身支度を整え、朝食を食べて、ラインバードに今日の予定を聞かされた。
国王との謁見、1件。
いやそれしか予定ないんだけど。
感想、なんか礼儀がどうのマナーがどうのめんどくさい。
「それではもう一度確認しよう。扉が開いたら?」
「2拍置いて階段の下まで15歩で歩く。」
「そして右足を前に出しその場で膝を着き、頭を垂れる。」
「国王の合図があったら立ち上がり気をつけ。お礼の言葉とかあると思うからそしたら右手を前に左手を後ろに回し左足を少し後ろに下げて礼をしてありがたきお言葉です…だっけか。」
「ああ、完璧だ。陛下に無礼があってはならないからな。」
卒業式の練習か何かか。
うーん。
そもそもそれって私がする必要あるのか?
騎士の段取りじゃないそれ?
私この国の国民じゃないしそこまで畏まる必要。
もっと楽にやりたいよー堅苦しいよー。
国一番のお偉いさんだしわかるけどー、でもー。
ロリーナのお父さんってことは友達のお父さんみたいなあれじゃダメなの?
どうも勇者を支配下に置きたいお偉方の暗躍が見えている気がする。
それってわりと勇者バカにしてない?
いや私個人ならともかく一応女神ボディだしこれまでの勇者の功績とかあるわけで。
顔立ててくれって大天使にも言われてるしなぁ。
女神に連なる者って結構な地位じゃない?
しかし国王がどのくらい偉い感じ出してくるかによっては私が国を追われることになるのでは?
そしたらロリーナの病気も治せないし無理矢理結婚させられて可哀想だしううーん。
「…あのさぁ、ラインバード。」
「どうした?何か質問か?」
「いやー、この謁見の仕方なかったことにしていいかなって。」
そう言ったら流石にラインバードも目を丸くしてたのでどうにか言い訳する。
自分の安いプライドも少しはない訳じゃない。
他国の大統領に無礼を働くわけにはとは思う。
それはわかる。
でも私は日本国民であってそこまでかしずくのはどうなの?
向こうもこっちを知っててお互い尊重し合った関係作りましょうねって約束できるならともかく。
向こうはこの国代表でこっちは昨今の勇者代表になっちゃうわけでしょ?
一方的にかしずくのは少し違うかなって。
今後の勇者にも影響あると思うし。
「ほら、私ロリーナのお父さんとはフランクな関係を築きたいかなって。」
ただし口から出るのは穏便な方である。
こっちも本音だからね?
だってこの国の護衛騎士隊長に国王にかしずきたくありませんとか言えないじゃん?
「私の出身地にもそれなりの礼儀作法はあるし、文化の違いはともかく無礼を働く気は毛頭ないし、言ってしまえば私この国だけじゃなくてあちこち冒険したいからフリーランスでいたいな、みたいな?」
まぁ他に国があるのかわからんけど。
多分あるはず。
人類が1つの国家にまとまるなんて何処のカリスマ魔王だよ。
ははは。
大天使ならやってそうだわ。
ラインバードは驚いていた顔を苦笑に変えて私の提案に頷いた。
「わかった。それなら変えよう。」
「マジ?あっさり~。」
「気付いたんだろう?陛下の忠実な臣下の思惑に。」
あ、ビンゴだった?
わかる~。
うちの国の王女を救った勇者とか取り込んで国内外に広く宣伝したい気持ちあるよね~。
勇者の謁見の様子とか絶対記者みたいな人来て様子を新聞にするじゃん?
偉い人大変ね。
私はこの国の政治の道具にされるつもりはないけども。
知らない間にされたら気づいた時点で引っ掻き回してトンズラするぜ!
生憎そのくらいの道具や逃げ場はあるので!
大天使さまさまかよ。
早く自立せねば…。
「陛下の前まで歩いて行くのは同じだ。走って行けば取り押さえざるを得ないからな。」
「なるほど不審者。」
「その後はお前なりの礼儀で対応してくれ。私もできる限りのフォローはするが、あまり奇行に走らないでくれると助かる。」
「私そんなとんでもイメージなの?」
「綺麗な顔をして非常識の塊だとは思っている。」
きゃっ、綺麗な顔だなんてっ。
ど正論だし反論無理だわ。
アイアム非常識。
今度ロリーナに教えてもらおう。
ラインバードはふと口許を押さえると扉の方を見ながら立ち上がった。
「さて、そろそろ時間だな。」
ラインバードがそう言うと直後に扉がノックされる音がして、人の気配に敏感な護衛騎士隊長ヤバイな。
魔力を感じれば私にも出来るのでは?
じっと扉の向こうを真剣に見つめると、なんとなく自分と違う小さい魔力の塊がそこにあるような。
出来たのでは!?
ボディが優秀ですごい助かる~。
「勇者様?入りますよ。」
「あ、はい。」
扉を開けてメディが入ってくる。
あ、すごい、メディっぽかったさっきの魔力の塊。
なるほどなぁ。
「勇者様、いらっしゃるならお返事いただかなければ困ります。」
「すいません気配感知の練習してました。」
「……謁見のお時間です。こちらへ。」
メディはちょっぴり驚いた顔をしたけどすぐ無表情に戻って華麗にスルー。
お姉さんはちょっと寂しいぞ!
気持ちしょげながらメディの側へ行くと、メディはラインバードに視線をくれた。
その視線は鋭い。
あや?珍しく…。
「ラインバード様もお早く謁見室へ。皆様お待ちでいらっしゃいます。」
「ああ、すぐ行く。」
「それでは私共はお先に失礼致します。」
メディは私を部屋の外に促すとラインバードに頭を下げて扉を閉め、私の先を歩いた。
えーと。
「メディ、ラインバード嫌い?」
「そういうわけではございません。」
やっぱり怒ってない?
言葉が刺々しいような。
「うーん、何かされた?」
そんな粗暴なタイプではないと思うけどなぁ。
でも普段冷静でクールなメディが少しやな顔するのはちょっと気になる。
女の子は笑顔になるべき。
「…勇者様、ラインバード様にはお気をつけて。」
「うん?」
そんな警戒するような相手には見えないけど。
普通に笑って普通に喋るし。
まぁでも詐欺師っていうのはみんな人当たりがいいとも聞くしな。
信用しすぎるのも問題か。
なんて言ってたら疑いしか持てないんですけどぉ!!
とりあえず大事なとこは自分で考えよう。
そうしよう。




