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第9話


 「ほほーう?」

 

 湯船に駆け寄ったフェズ君を追いかけて私も服を脱ぎ、湯船に近づく。

 するとここのお風呂はどうやら中世ヨーロッパだかなんかそんな感じで、まず装飾だらけの白い1人か2人用くらいの浴槽。

 シャワーというものはついていない。

 お湯はお湯だが少し熱い。

 多分鍋で沸かしたのぶちこんでるとかそんなだ。

 浴室は広めに作ってあって、湯気で室内が暖まらないから冬は寒そう。

 王城でこれだとお風呂文化はあんまり望めなさそう。

 よし決めた。

 絶対お金貯めて拠点買ってお風呂つけよう。

 魔法駆使すれば自動湯沸かしくらいできるはず。

 絶対だ。

 

 「勇者さま、髪の毛ぬれちゃうよ?」

 

 髪を洗う文化も怪しいだと…?

 

 「髪はみんな普段どうやって汚れ落としてるの?」

 「生活魔法があるよ。おふろ入る前にするの。勇者さまにもしてあげようか?」

 「うん、お願いしようかな。」

 

 そう答えるとフェズ君は嬉しそうにはにかんで私に向かって魔法を唱えた。

 可愛いかー。

 

 「せいなるじょうかのひかりよ、わがみをきよめたまえ、パージ。」

 

 おや?

 その詠唱だと…。

 そう思って首を傾げると聖なる浄化の光はフェズ君に降り注いだ。

 フェズ君は驚いた顔をして、慌て、泣きそうになった。

 空かさずその頭を撫でる。

 泣かないでフェズ君、君はきっと悪くない!

 どれ、ちょっとやってみよう。

 

 「聖なる浄化の湯水と泡で我等に清めと守りを与えよ、パージ。」

 

 私がそう唱えると温水と泡が出てきて私たちの体を頭から足先まで洗っていった。

 感覚的には撫でられただけな気がするけど。

 なんとなくさっぱりした感じあるから多分大丈夫だろう。

 私の魔法にビックリしたフェズ君は驚きながらも興奮した様子でキラキラと私を見上げる。

 もっと憧れてくれてもいいんですよ!!

 

 「勇者さま、すごい!!今の魔法なに?どうやったの?」

 「ありがとう、フェズ君。君のお陰で使えるようになったんだよ。」

 「そうなの?でもボク、えいしょう失敗しちゃったよ?それに勇者さまみたいに見たことないすごい魔法じゃない…。」

 

 ん?詠唱は失敗してなかったけどな。

 ただ対象に自分を指定して唱えてただけで。

 もしかしてフェズ君は内容を理解してるわけじゃなくて暗記なのかもしれないな。

 まぁ小さい子が聖なる~とか我が身を~とか理解してるわけもないか。

 それでもこの歳で間違わずに呪文が言えて魔法もちゃんと使えてめっちゃ偉いんじゃない?

 才能の塊じゃない???

 さすが王族でロリーナの血縁だと思うわ。

 血は争えないね。

 

 「フェズ君はちゃんと出来てたよ。私が少し違う詠唱にしただけで。それにフェズ君はこんなに小さいのに難しい呪文が唱えられてすごいと思うなぁ。」

 「ホント?えへへへ。」

 

 照れ笑うショタの可愛さが天地を創造する勢いなのでは?

 この世界の人類は安泰だ。

 女神と大天使と美少女と美少年がいる。

 世はまさにラブ&ピース。

 うん、ちょっと意味わかんないな。

 

 「それじゃご褒美に私がフェズ君を抱っこしてお風呂に入れてあげよう。」

 「わーい!」

 

 そうかそうか、喜んでくれるなんて素直ないい子だ。

 私と満琴が小さいときなんか子供じゃないって反発して走って滑って盛大に転んで怒られたもんだ。

 ああ、盛大に転んだのは私だけか。

 あいつ要領いいからなこんちくしょう今すぐどこかで何かにぶつかれ。

 まぁその話はいい。

 私は長い髪を結い紐で纏め直して可愛い天使を後ろから抱き上げ、湯船に浸かった。

 温度は魔法で水足して調節した。

 魔法めっちゃ便利。

 2人分の体積に溜めてあったお湯が湯船から溢れる。

 

 「はぁ~、最っ高。」

 

 やっぱ風呂だよなぁ日本人は。

 

 「勇者さま、おふろ好き?」

 「大好きなんだよー。フェズ君はお風呂好き?」

 「うーん、今日は勇者さまといっしょだから好き!」

 

 マジか愛の告白か。

 お姉さんは君の将来が心配だよ。

 女たらしにはなっちゃダメだぞ。

 

 「勇者さまといっしょに入るの楽しいよ!いつもはメイドさんが入れてくれるけど、1人で入れるようになりなさいって母さまが…。つまんないんだ。」

 「そっかー、一緒に入る人がいると楽しいもんねー。」

 

 子供の時っていうのはそんなもんだ。

 お風呂は遊び場だ。

 何かおもちゃでもポンと作って渡せればいいけどそんな技術はない。

 魔法でできるのかもしれないけどうーんゴム性のアヒルとか何属性の精霊さんに頼めばいいんだ?

 わからん…。

 浮くならなんでもいいのか?

 でも木は濡れるとカビ生えたりして衛生面が心配だしなぁ。

 アイテムボックスに都合良くなんか入ってないか?

 お願い大天使!

 

 「『アイテムボックス』を我が手に、アポーツ。」

 

 浴槽から手だけ出して軽く水を切り、アポーツでアイテムボックスを引き寄せる。

 フェズ君はそれだけでもすごいとはしゃいでくれたので頭を撫でておいた。

 フェズ君にも見えるようにメニューを開いて上から下へざっくり見ていく。

 

 「フェズ君、水に浮く素材って何か知らない?」

 

 物さえあれば成型はなんとか出来そうなんだよなー。

 まぁどんな素材かにもよるけど。

 するとフェズ君はうんうん唸りながら一緒に考えてくれた。

 

 「水の魔物はどうやって浮いてるのかなぁ?」

 

 それは多分浮き袋があるからだよ。

 魔物も生き物と同じ構造ならだけど。

 血が出るくらいだし同じなのかなぁ。

 そういえば宝石龍って生き物?魔物?

 森で遭遇した雑草は光の粒になったけど宝石龍は鱗が残るんだなぁ。

 他に残る魔物素材とかないかしら。

 

 『レヴィアタンの歯』

 『レヴィアタンの鱗』

 『レヴィアタンの爪』

 『レヴィアタンの浮き袋』

 

 …あったわー。

 ご都合春菊~。

 若い子はわからんか。

 もしかして宝石龍シリーズとかあるかもしれないな。

 さっきはレア度高い順で探したから鱗しか見つけなかったけど。

 これは如何程のレア度なのか知らないけどまぁいいやあるから使っておこう。

 必要になったら取りに行ける限り取りに行く方向で。

 またはどうにか偽造しよう。

 唸れ私の錬金術。

 ど素人ですけど?

 

 「レヴィアタンの浮き袋~。」

 「勇者さま、レヴィアタン倒したの!?すごい!」

 

 いやこれは貰い物なんだけどしかしてキラキラ勇者に憧れる無垢な少年の夢を潰すような発言は私には無理だった。

 いつか本当に倒すから許して。

 栄光の前借り。

 ともかくこれをどうやって成型しよう…。

 まさか魔物の肝みたいな素材だとは予想外。

 えー…。

 

 「………アヒルに成型、したいなー…?」

 

 …うふ。

 なんて控え目に口に出しながら魔力放出したら精霊さん方がやってくださいました!!

 あざーっす!!!

 魔力伴って願望口に出すだけで精霊さんがやってくれちゃうとか愛されボディ過ぎるだろ!!

 女神ボディだから仕方ねーな!?

 いつかどうにかして精霊たちに供物を捧げて感謝して今後ともよろしくお願いしなければ罰当たりそう。

 中身私だぞこのやろう。

 

 「パンパカパーン!!アヒルのおもちゃー!!」

 「すごーい!勇者さまなんでもできるね!」

 「………フェズ君、魔法を使うときは精霊さんたちにきちんと感謝するんだよ。お姉さんとの約束だ。」

 「? はーい。」

 「フェズ君はいい子だからご褒美にアヒルさんあげちゃう。お風呂に浮かべて遊んでね。」

 「いいの!?やったあ!ありがとう、勇者さま!」

 

 拝啓、大天使。

 私は今日たくさん嘘と見栄を張りました。

 夜寝る前に精霊さんたちにお祈りをして寝ようと思います。

 精霊主様によろしくお伝えください。

 敬具。

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