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黄泉の花  作者: cheee
第1章 戦う理由
1/3

プロローグ 『蔵』


「でっかい木…」


「木じゃないよ?お花だよ?」


世界には想像出来ない事が起こったりする事がある。


それは誰しもが身をもって体験出来る事ではない


そして今、少年の置かれている状況も誰も想像できることではない


◇◇


少年の名前はカザマ ヨシト。

四ツ谷中学校へ通う普通の中学二年生である。


その日ヨシトはいつも通り朝9時に起き、深く息を吸い、いつも通り大声をあげる。


「遅刻だぁー!!!」


時計の針が9時を指している事にヨシトは大慌てで制服に着替え、学校へ向かおうと外に出る。


「今日は日曜日じゃよ?学校があるんかえ?」


玄関を出ると目の前に驚いた表情をする婆ちゃんがいた。


そして今日が学校へ行く日ではない事をヨシトに告げるが寝起きの頭は回らない。


婆ちゃんついにボケてしまったか!!

70近くなら仕方ないがまだまだ生きてもらわないと俺が生きていけなくるぜ!!


トントンと婆ちゃんの肩を叩き長生きしてくれよと心の中で涙ぐむヨシトに「気をつけていくんだよ」と婆ちゃんは送り出し家の中へ入っていく。


そんな婆ちゃんの後ろ姿がまた小さくなったなと感じながらも学校へと足を向けた。


だが、また学校へ行くのを阻止するものが現れた。


「あーら、ヨッちゃん日曜なのに学校かい?偉いわねー」


フッ、貴方もか近所のおばちゃん、その歳でもうボケてしまうなんて!まったく最近の若い子はー


「やれやれ」っと携帯で日付と曜日を確認する。


『6月×日 日曜日 (晴れ) 』


「ははっ…」


ヨシトは来た道を戻り玄関を開け「あら、おかえり」とニッコリと笑う婆ちゃんの姿に照れ笑いを返し、また自分の布団の中でグッスリ眠りについた。


昼過ぎごろだろうか。


「ちょいとヨシトや。倉庫からアレを持ってきてくれんか?最近重い物が持てんでなぁ。頼んだよ。」


そんな時間まで寝ているヨシトに婆ちゃんからアレを持ってきてくれと起された。ヨシトは大あくびをかまし、寝ぼけた思考の中、外にある倉庫のアレを探しにいく。


「無いなぁ…… おっ、あった!いや、全然違うか?」


倉庫の中をガサガサと探すがアレは見つからない。


ここじゃないのかなぁ。


この倉庫にない事を確認したヨシトは今度は家の裏に足を向けた。


だけど、そこはヨシトが産まれてから一度も踏み入れた事のない、婆ちゃん曰く幽霊様の巣窟だと言わしめた蔵である。


見るからに古く、壁のあちらこちらにヒビが入り、今にも崩れそうな蔵はこの場所にある事を望んでいないような異様な空気を作りだしている。


おそらくそれが幽霊様を呼び起こしているんだろうとヨシトの心中は悟っていた。


だが寝ぼけ眼のヨシトに恐怖心はない。蔵へは躊躇なく足を踏み入れたのだ。


蔵の中を見渡しアレの所存を捜索するが一目でここにはない事が分かった。


ヨシトは特に変わった様子のない蔵を


いや!? おかしい!!


蔵と言ったら大量な荷物やら家宝やらが一つや二つはあってもいいはずだ。

だがこの蔵はどうゆう事か……


「何にもない……」


役目を果たす事を忘れてしまったかのような蔵の中には、物一つ、塵一つ落ちていないのだ。


さすがに寝ボケたヨシトの思考もその一変した様子に覚めていく。


「何もないと逆に怖いなっ。婆ちゃんが言うように幽霊が出てきそうだ。」


鳥肌まで立ってくる始末だ。


ブルブルと身体震わせこの蔵の冷えた空気に肩をすぼめ、自分を抱きしめるように両手を抱える。


この空気はヤバい……


ヨシトはこの蔵から漂う異様なものを感じ外に出ようと扉の方へ振り返る。

でも恐怖からか歩く足はおぼつかない。


そして、見事に自分の足に引っ掛かり無様にコケたのだ!!が、壁が目の前にあり手を付いて何とか惨めな姿を晒すこと無く阻止をする。


あっぶねぇー。

誰も見てなくて良かったー。


安堵のため息をつくヨシトだったが、

自分が手を付いている壁に違和感がする事に気づく。


「っうわぁ!? なっ…なんだ!?」


驚きの声をあげるヨシトは、パッと壁から手を離し自分の手に異常がない事を確認するが。


なんともない…

でも、今…俺の手が光ったように見えたけど…


それともまさか……幽霊……!?


いや、何かの気のせいだろ……

気のせい……気のせい……


自分の恐怖が起こした目の錯覚と判断したヨシトは自分の意志に反しながらも確認のためともう一度壁に手をあてる。


「!?」


気のせいではなかった。


手をあてた壁は徐々に青白く光だしたのだ。


その事に少し顔を強ばるヨシトだが、さきほどの驚きはみせないでいた。


なぜなら、その青白い光はキレイと絶賛できるほどの美しさを放っているからである。


ただ、光は徐々に強さを増し、それに共鳴するかのように壁一面、いや、部屋中にあるものを浮かび上がらせたのだ。


不思議な光景だった。


壁に当ててた手も無意識に離れヨシトの口を抑えている。喉元を鳴らし驚きながらもそれが何かをヨシトは知っているように呟いた。


『魔法陣』

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